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 イクサンダー大沼ユースホステルは、大沼湖畔にある。地図で確認しただけで、なぜかこのユースホステルに関する記録、記憶が全く無い。ただユースホステルへ向かう中山峠から長万部あたりまでは霧雨、泊まった翌朝も天気は曇りだったと記録にはある。
 函館のフェリーターミナルまでは四十分ほどで行ける。いよいよ北海道を離れる日が来た。一ヶ月と三日間の北海道滞在中はほとんど天気には恵まれず、曇りか霧雨の日が多く、バイクで走っている時は寒さとの戦いだった。
 またいつの日か、できれば雪の北海道に訪れてみたいと思いながら、憧れの地を後にした。
 北海道へ来るときは青森から青函フェリーに乗ったが、戻りは本州最北端の地、大間へ向かう船に乗った。それの方が時間も料金も半分で行ける。
 フェリーを降りると「なにわ」ナンバーのバイク二台を見つけた。女性ライダーだ。彼女たちも一ヶ月のあいだ北海道を回り、これから一ヶ月かけて大阪に帰るらしい。ほんの少しだけ会話をし、彼女たちはむつ市から南下すると言っていた。

                 本州最北端

 夏樹は本州最北端の碑で写真を撮り、どこかのユースホステルで聞いた「仏ヶ浦」へ行くため陸奥湾側へ向かった。国道の標識はあるが途中からは未舗装のダート道となり、とても走りにくい。大間から一時間ほど行くと「仏ヶ浦」の標識を見つけた。駐車場にバイクを停め、ここからは徒歩で向かう。遊歩道を二十分ほど歩くと高くそびえる奇岩が現れる。
 仏ヶ浦の字のごとく、まるで大きな仏像のような岩が連なっていた。どこかの国営テレビの特集で見た中央アジアの仏像群のような光景だった。海岸のはずなのだが、なかなか海が見えず波の音も聞こえない無音に近い状況。人影も全くなく、立ち止まって眺めていると、良いものか悪いものか判らないが、何かが出て来そうな雰囲気だった。曇り空も手伝ってか要するに薄気味悪いのだ。

  仏ヶ浦

         仏ヶ浦2

                  仏ヶ浦3
                         
 早々にこの場を引き上げ駐車場へと戻った。次に向かったのはさらに薄気味悪いのではないかと思われる「恐山」へと、未舗装のダート国道にバイクを走らせた。

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2015.10.11 / Top↑
 数人の宿泊者たちを見送り夏樹も出発の準備を始めたが、天気が悪く今にも雨が降り出しそうな空模様に気が乗らなかった。それでも明日か明後日には、函館からフェリーに乗り北海道を離れなければならない。結局、ユースホステルを出たのは十時になってしまった。
「じゃ、皆さん、ありがとうございました。また、どこかで会える日まで」
「髭さんも気をつけてね」
 ヘルパーの二人が笑顔で手を振ってくれた。
「夏樹君、筏作り、ご苦労さん。ありがとう。機会があったらまた来年もおいでよ」
 ペアレントさんが言った。
「はい、おぉきにぃ、面白かったです。あっ、たばことライターを忘れた」
 慌てて部屋に取りに戻り、別れのあいさつのやり直しとなった。
禁煙、禁煙しなさい!」
 ペアレントさんに少しきつめに言われた。

 浜頓別のAコープで二キロ入りの米を見つけたのを思い出し、キャンプ用に買った。それから日本海側の豊頃へまっすぐに向かう。日本海沿岸を走る羽幌線(現在は廃線となっている)天塩大沢駅に寄った。なぜ寄ったのか今ではわからないが、車両一両分の長さの単線ホームに物置のような待合室で、Aコープでコメと一緒に買ったミニクリームパンと紅茶をいれて昼飯にした。
 羽幌、留萌とさらに南下し、北上する時に寄った浜益の海産物店のことを思い出し、寄り道することにした。しかし、残念ながらこの日は休業日なのか開いていなかった。
 空模様は相変わらず今にも雨が降ってきそうなのだが、今のところ降られていない。たまたま立ち寄った店のテレビで明日の天気予報を見た。今夜かあら明朝にかけては雨のようだ。函館からのフェリーには明日に乗る予定で、大沼のユースホステルに泊まることにした。イクサンダー大沼ユースホステル(現在は閉館されているようだ)に電話をして地図を確認した。
(このユースホステルに泊まった記録はあるのだが、それ以外の記録と記憶が皆無なため、次回は明朝からの記事にします)

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2015.09.23 / Top↑
 翌朝、北海道に入ってちょうど一ヶ月、どんよりと曇り空が広がっていた。朝食を終えた宿泊者たちが旅立つ前にユースホステルの前に集まり、それぞれのカメラで記念撮影をし、つぎつぎと旅立っていった。学生や一般社会人は時間に制約があり、予定通りに行動をしないと目的地に辿り着けない。だからそそくさと旅立っていく人が多い。夏樹や森山のように時間に制約がない放浪旅をしている者は、昨日の疲れが残る朝はゆっくりと過ごし、一夜の友を見送ってから自分の旅立ちの準備ができる。もちろん、今日もどこまで行くか考えていなかった。

          浜頓別ユースホステル


「ほな、うちもそろそろ準備をしょうか」
「土本さんはどこへ行かはるの」
「今日から牧場の手伝いに行くねん。一週間ぐらいかな。ヒゲさんは」
「おれは・・・七月の二十日ごろから岩手のペンションで居候バイトをすることにしてるから、明日か明後日には本州に戻ろうかなって思てる」
「えっ、上田はんはもう北海道から離れるんですか」
「上田やない・・・、ほんまは北海道のペンションか牧場で働いてみったかったんやけどな、ペンションはどこも決まってたし、テニスができる人って言われても、やったことないし」
「この辺の牧場なら、どこも忙しいから使ってくれますやん」
「来る前にいろいろと問い合わせたんやけどな、牧場で短期のアルバイト情報がなかったから・・・」
「うちもここへ来たら、なんかそう言う話があるんとちゃうかと聞いていたから、とりあえず来てみたんよ」
「ペンションのアルバイト情報誌を見ていたら、北海道の次にあったのが岩手県の情報で、一軒目に電話したら即答でOK貰って・・・。一応、履歴書はおくったけどね」
「七月二十日に来いって言われたんですか」
「いいや、そのころになったら夏休み入るから忙しくなるのかなと思って、そのころに行きますって言うただけや」
「そのペンションの住所を教えてくださいよ、大阪へ帰るときに寄りますから」
 土本がメモ帳とペンを取り出し、夏樹に渡した。
「森山君はどうすんの」
「とりあえず、昨日の疲れが残ってるんで、今日はもう一泊して、明日になったら。考えます。盆前までは北海道にいますけどね。盆が過ぎると北海道は寒くなるから、自転車には厳しくなるし」


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2015.09.06 / Top↑
 折り返し地点からは美大生の美山を筏の上に乗せ、札幌の大学生と森山が筏から降り、筏を引っ張ってゴールまで戻って来た。

            ゴールへ
         
「お疲れさん」
「疲れたあ、前には進まへんし、水は冷たいし、寒いし。けど、おもろかったあ」
「なんだか知らないけど、すごく面白かった。三人で寒いなあと言いながら、みんなで笑っていたもの」
「こんなにも水深がないなんて、計算外でしたが。ほんま、おもろかったあ」
 札幌の大学生は突然、関西弁で喜びを表した。森山の影響だろうか。
 結果はもちろん最下位、あれだけ子供たちに人気があったのに美術点もゼロだった。ユースホステルチーム全員の力が急に抜けてしまった。
 入賞者の表彰式が行われていることなど気にせず、参加者全員で筏を持ちユースホステルに向かった。その誰の顔にも笑顔が広がっていた。
「けど、美術点がゼロって、どう言うことやねん」
 夏樹が言ったが笑顔だった。
「そうだよねえ、一番早かったチームなんか、丸太みたいな木に少しバイクのような絵を貼ってヘルメット被って手で漕いだだけだったよねえ」
 少しだけ作ることを手伝った男が笑いながら言った。
「そうよねえ、あれって筏なのかなあ」
 少しだけ作ることを手伝った女が笑いながら言った。
 たまたま泊まった宿の近くで行われたお祭りに、たまたま泊まり合わせた初対面の人たちと筏を作り、レースに参加した。それだけのことなのだけれど、とても面白く、楽しく、感動をすることができた。これが一期一会と言うことなのだろうか。
 ユースホステルでは手作りケーキと、参加賞として貰った焼酎で作った特製ジュース(?)で乾杯した。筏づくりの中心的なメンバー五人が一番の笑顔を見せていた。
 その日の夜はクッチャロ湖畔で花火が打ち上げられた。夏樹は今までに何度か打ち上げ花火を見てきたが、こんなに目の前で見たのは初めてだった。頭の真上に上がり、光とほぼ同時に音がなる。それも地響きのように体中に響いてくる花火に感動した。少しの時間だったが、ユースホステルの宿泊者たちと、おおいに楽しんだ。


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2015.08.30 / Top↑
 札幌の大学生は自分の提案した発泡スチロールを付けた筏が、彼の計算通りに湖に浮くのか、身をもって体感したいから乗りたいと言った。
「体重は確実に森山さんより重いですが、計算上は大丈夫、浮くはずです」
「ほな、これで筏に乗る人は決まりということで、あしたはみんなでこれを湖まで運ぶのを手伝ってくださいね」
 ここでちょうど夕飯の時間になり、夕食はこのユースホステルに泊まって一番の宿泊人数だった。今日来て少しだけ手伝った人も、初めから準備に加わった人も、一緒に明日の本番に向けて思い思いに語り合った。

 クッチャロ湖水祭りの当日は曇り空で今にも雨が降ってきそうだった。筏に乗る三人はそれぞれが被る張りぼての仮面を持ち、他の宿泊者たちは筏を担いで湖に向かった。ほとんどが二十歳を過ぎた大人たちが、完全に童心に戻り筏レースが始まる前から楽しんでいた。
「美山さんと学生さん、この辺から被って行った方がええのとちゃうか、少しでも子供たちの視線をこっちに向けて、点数稼ぎしましょうや」
 森山がイノキの張りぼてを被りながら、他の二人に言った。すると湖の入り口付近で数人の子供たちがそれを見つけ、直ぐに寄ってきた。森山の言う通り子供たちには人気を博した。

             人気者
 
     イノキ キン肉マン

 湖に着くとますます子どもたちが集まって来た。他の参加者も集まって来た。十チームほどだった。湖畔から直ぐのところから一斉にスタートし、五十メートルほど沖に出て戻って来るだけのレースだ。
「ほな三人とも頑張って、結果はもう見えたようなもんや、あれだけ子供に人気があるんやから、ペアレントさんが言ったはったように美術点が重視されるんやったら、ぶっちぎりやろ・・・」
「そうだよね、他はまあ普通かな・・・」

           スタート

 美山も自信があるようだった。ところが一つだけ問題が出てきた。湖が予想以上に浅く、筏に三人が乗ると発泡スチロールが湖底に着いてしまったのだ。三人はそんなトラブルを解決する間などあるはずもなく、スタートの合図がなった。どんなに竿を湖底に付刺し前に進もうとしても全く動く気配はなく、仕方なくキン肉マンを被った大学生が筏から降りて押し始めた。少し前に出すと浮いているようだったが、大学生が乗るとまた湖底に着いてしまうようだった。男二人が筏から降りたり、乗ったりを繰り返し前に進み、ようやく折り返し地点に着いたころには、大半の筏はゴールしていた。

            折り返し地点

 筏に三人も乗ったのが一番の敗因のようだった。他は一人か二人、優勝チームは一人乗りだった。


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2015.08.16 / Top↑