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まいどぉ おぉきにぃ、
 参加者全員が、いや宿泊者全員が新年を迎えてからではあるが、年越しそばを食べた。夏樹やトオルたちの周りにいるほとんどの人たちは、今日が初対面なのに、いつの間にか旧知の友のように会話が交わされるようになっている。
 そんな人たちの中から一人の男が、誰かに問いかけるというわけではなく、話し始めた。
「明日の朝は天気がいいのかな、初日の出が綺麗に水平線から出てくれるといいね」
「明日は二日だよ、今日の天気じゃないの」
「そうだよ、もう年が明けたんだから、今日の朝だろ」
 和やかな笑いが夏樹たちの周りで湧き上がった。
「あれ、トオルは」
「智史さん、あそこ、またマッチ箱を出したはるは、凝りひんなあトオルさんも。分からんように後ろに廻って、こっそりと種明かしをしてこようか」
 夏樹たちとは別のグループにいるトオルを指差して言った。
「ほっとけよ、それよりこっちの女性たちと一緒にトランプでもしようぜ」

 タナカと岡本、その友達二人、智史とケイコ、そしてニュー、イヤー、イヴ、コンサートの時に隣にいた三人組みの女性も含めて、夏樹はトランプゲームを始めた。ここでもトランプといえば大貧民ゲームだった。それぞれにルールが少しずつ違うのだけれど、今回はケイコの意見を取り入れて、ジョーカーは入れずに「2」が一番強いカードと言うことで進めた。彼女が今回のメンバーの中で最年長と言うわけではないのだが、ケイコが自らのルールを説明すると、自分たちのやり方と少し違うけれど、今日はケイコのルールでやろうと、なぜか同調するのだった。
「十人もいると一人分のカードが五,六枚しかないんやなあ。はじめの配ったカードで勝つか負けるか決まってしうやんか。「2」が二枚も配られたけど、この二枚とも大富豪に渡さなあかんのやろ、貧民はいつまでたっても貧民やなあ、まるでこの世の縮図みたいやなあ」
 夏樹は大貧民を五回続けている。ついついぼやいてしまったようだ。
「ごちゃごちゃ言ってないで、早くその「2」を二枚、私によこしなはれ」
「ケイコさんまで変な関西弁を使わんといて下さいよ」




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2009.11.04 Wed l 旅(小説のような)七章 l COM(2) TB(0) l top ▲
 誰一人として部屋に戻った人はいないようだ、次から次へとリクエストの声が続き、大合唱が終わりそうになかった。始まってから何曲目だろうか、バンドの人たちがリクエストを受けたのだけれど、演奏が始まらなかった。突然ラジオかテレビのアナウンサーのような声が聞こえてきた。
「ゴーーン。今、新しい年を迎えました」
「ハッピー、ニュー、イヤー」
 バンドのリーダーがマイクを通じて大きな声で言った。その時はじめて新年を迎えたことに気が付いた。その言葉とほぼ同時にあらかじめ渡されていたクラッカーのヒモを参加者が次々と引いた。
「パン、パン、パンパン」
「おめでとう」
「あけまして、おめでとう」
「ハッピー、ニュー、イヤー」
 あちらこちらから新年を祝う言葉が飛び交った。

「じゃ、ひとまず次の曲で一旦、休憩に入ります」
 バンドのリーダーが言った。年が明ける前の最後のリクエストをみんなで歌い、休憩に入り、年が明けたけれど年越しそばをいただいた。
「みんなパワフルやなあ、誰も部屋に戻って寝てる人はいてへんみたいやなあ」
「夏樹君、だからさっき部屋で言っただろう、・・・」
「はあ、何を喋ってのんかよう分からんのやけど」
 トオルが口いっぱいにそばを頬張りながら話した。何を喋ったのか良く分からず、夏樹はトオルに何回も聞き直した。
「だから、寝床の準備なんかしなくて言いよって言っただろう」
「はあ、なんですか」
 トオルの口のなかにはもう、そばは入っていなかったが、夏樹が態とらしく聞き直した。
「てめえ、この野郎、何言うてまんねん」
 またトオルが夏樹を羽交い絞めにした。




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2009.11.02 Mon l 旅(小説のような)七章 l COM(0) TB(0) l top ▲
「ええぇ、トオルさんってこれだったんですか」
 夏樹も右手の甲を左手の頬に軽く当てて言った。
「違うよ、こいつはね超が付くぐらいに女が好きな、助平やろうだよ。さっきだって美人がいるぜって言っただけで、きょろきょろと探していたじゃないか」
 智史が言った。
「その通り。だからあなたたちも気をつけなよ、絶対に電話番号なんか教えちゃ駄目だよ」
 ケイコがタナカと岡本、その友達に言った。
「はあい」
「なんか俺が変人みたいじゃないか」
「トオルさん、みたいやのうて、見るからにそのものやんか」
「夏樹君、なんと言うこと、言うてくれまんねん・・・」
 トオルは夏樹をまた、羽交い絞めにした。

 そんな馬鹿なやり取りをしていると、次の歌が始まった。ワイルドワンズの『思い出の渚』だった。四人の男が前に出て、決してうまい歌ではないが、楽しく笑顔でハーモニーを奏でていた。
「じゃあ、次は私たちで歌おうよ」
 ケイコがタナカたち四人を誘った。
「めだかの兄弟を歌います、五人で」
「ええ、私は下手だからパスします」
 タナカとその友達はどうしても前に出るのは嫌だと言いはった。仕方なくケイコと岡本、そのもう一人の友達と智史が前に出て歌うことにした。テレビで見た振り付けをなんとなく覚えていたケイコが中心になって、即興でアレンジし、踊りながら歌った。
 歌い終わってからは拍手と笑い声が湧き上がった。
コンサート

 なんとなく視界に入って来たホールの大きな掛時計は十一時を過ぎていた。コンサートが始まってから三時間が過ぎていた。


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2009.10.30 Fri l 旅(小説のような)七章 l COM(0) TB(0) l top ▲