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 名田庄村を過ぎると府県境の堀越トンネルまではスノーシェルターなどがある急坂、急カーブの連続で左側は断崖で、斜面に延びた様々な樹が視界を遮るために、渓谷の底を見ることはできない。
 堀越トンネルを越えると京都府に入る。美山町(合併により南丹市)京北町(合併により京都市)を抜けて笠トンネルを抜けると京都市に入る。北山杉が有名な地域で国道の両側には杉並木が続き、ところどころに伐採した杉を加工する工場がある。ほとんどが手作業で美しい光沢を出していくようだ。
 三泊四日のバイクの旅は無事に終了した。三日目のロングツーリングは少し疲れたが、四日間の天気は良く、よい旅になった。

 中部縦断ツーリングから戻って最初の週末に、何の前触れもなく飛沢が遊びに来た。飲めもしないのに缶ビールを六本と、簡単なつまみを持って笑顔で現れた。
「明日は休みやろ、俺も休みやから、泊まっていってもかまへんやろ」
「みやげを持って来てんのに、あかんって言われへんやろ。バイト、休みなんか」
「時々、休んでもええって店長が言うてくれるんや。バイクで旅行に行ってきたんやろ、その話を聞きたくてな」
「そうかあ」
 飛沢は缶ビールを夏樹に手渡した。二人がほとんど同時に缶の栓を開け、軽く乾杯をした。そして夏樹は少しずつ旅の話を始め、飛沢は夏樹の話を笑顔で頷き、ビールを飲んだ。
 旅の話しが一段落したころには、飛沢の顔は真っ赤になっていた。二本目の缶ビールを開けたばかりだった。
「今度は一緒に行こう、お前の車で行くのもええかもなあ」
「そやなあ、行きたいなあ」
 飛沢の目は開いているのか、閉じているのか、おそらく缶ビールを持った状態で寝ているようだ。

小説のような、旅のはじまり 八章《完》



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2010.08.28 / Top↑
 敦賀からは国道27号線に入る。この道は少し前に有名になった、小浜市(オバマシ)を経由して、京都府にはいり舞鶴から内陸の国道9号線へと続く。舞鶴は敦賀と同じように古代から天然の良港として栄え、昭和の戦時中は軍港として発展した。今も海上自衛隊の駐屯地があり、自衛艦が港に入っている。
 二葉百合子が歌った「岸壁の母」はここがモデルの地になっている。この歌が流行ったころによく聞こえてきたことは
「舞鶴って京都なんだって」
「京都に海があったんだ」
 そうです京都にも海がある。修学旅行で行く京都市は、三方が山に囲まれた盆地だが、京都府という範囲で見ると海もあるし、北国にも匹敵するほどの豪雪地帯、丹後半島も京都だ。京都市から南の大阪、奈良方面以外のほとんどの京都府は山間部で、比較的低い山が多いために、山あいを縫うように細い道を進み、少し視界が広がると集落があり、田んぼがあった。
 京都というと寺や神社が有名だが、京都府には海もあるし、ほとんどが山なのだ。

 国道27号線を50キロほど走り、国道162号線を左に入る。この道は京都と福井を結ぶ重要な国道で、京都から日本海に出る最短の道路だ。京都市民が車で海水浴に行く時は、この道を利用することが多く、日曜日の午後は京都へ帰る車で大渋滞が発生する。
 京都との県境に「名田庄村」と言う村があった。過去形である。平成の大合併で隣町と合併をし、名田庄村という名前がなくなったからだ。
 夏樹と同年代、またはもう少し年上の先輩方には懐かしい名前でしょう、高石ともやがここに住んでいたことから、のちのフォークグループ「ナターシャー7」の語源の由来地なのだ。七人のグループだと思っていたら、グループ名の「7」は語呂合わせなのだそうだ。



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2010.08.25 / Top↑
「あっ、しもうた、住所と名前を聞くのを忘れてた、写真を送れへんやんか」
 二人の京大生の姿はもう見えなかった。追いかけていっても、いつ追いつくかわからないし、夏樹とは反対の方向である、それに明日からは仕事がはじまる。
「まあ、ええか、しゃあないわなあ」

 地図で見ても海にへばりつくように、日本海沿いを国道305号線は走る。この国道は今回を含めて三回ほど通っているが、最後に通ってから四年ほど後に大事故があった。
 呼鳥門からすぐの所の越前岬の先で大規模な落石事故があり、落石防止の覆道(トンネルのようなコンクリート製の覆い)を突き破り、その下を走っていたマイクロバスを押し潰したのだ。そのバスに乗っていた人たち全員が亡くなられた。バスの後方を走っていた乗用車が事故の瞬間を偶然、撮影していたビデオには、轟音とともにバスが一瞬で押しつぶされる様子が映っていた。そのビデオをニュースで放映されたのを見た。
 長い時間、海を目の前に見ながらドライブが楽しめる道路で、とても良い印象が残っている所だったのに、こんな大惨事になったことを知り、とても残念である。今でも青く綺麗な海の風景と、ニュースビデオの両方の映像がハッキリと思いだされる。
 事故の数年後に事故現場を迂回するトンネルが造られ、崩落現場は通行禁止になっているようだ。

    越前岬2
          越前岬3
                越前岬4

(上記の写真は事故現場とは関係ないと思われる)

 越前岬から40キロほどで敦賀に着く。敦賀は古代から天然の良港として栄え、江戸時代の北前船も立ち寄ったようだ。太平洋戦争末期にはリトアニアのユダヤ人難民がここへ上陸し、アメリカなどへ亡命したことでも知られている。今は北海道へ行くフェリーもここから出ている。のちに、この港から新たな旅がはじまるのだが、その話はもう少し先になる。






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2010.08.22 / Top↑
「金沢に泊まるならどこがいいですか、安いところがいいのですが」
「ユースホステルなら金沢ユースホステルでしょう、他のホテルとか民宿とかには泊まったことがないから、分かりまへんなあ」
「関西の人ですね、それも京都じゃないですか」
「そこまでわかるんですか、その通り、正解」
「学校が京都の大学なので、少しだけ大阪や京都の人の話し方の違いがわかるんですよ」
「もしかして京大ですか」
「はあ、一応ですが」
「やっぱり、頭が良さそうやもん。俺もね京大に行ったことがあるんです」
「ええ、何年の卒業ですか」
「あっ、ああ、文化祭に一回、行っただけやけどね」
「はあ、なるほど」
 三人はまた微笑んだ。
「ほな、今日は金沢まで行くんですか」
「そうですね。そして新潟から国道17号線で、実家のある前橋へ、明日かあさってには着きたいのですが」
「群馬の人ですか、もしかしたら初めてかも、群馬県の人と会うのは。けどゴールデン、ウイークは今日で終わりですよ、学校はどうもないの」
「ちょと研究していたことが教授の都合で遅くなってしまって、今日から休みをとって、実家に帰ろうかと思いまして」
「研究ですか、まあその内容を聞いてもわからんやろうから」
「遺伝子の研究なんです、まあそれ以上は、おそらく説明してもわかっていただけないと思います」
「だよねえ」
 また三人は微笑んだ。
「せっかくやから呼鳥門をバックに写真を撮りましょう」
 そう言うと夏樹はバイクに括りつけたバッグから、カメラと三脚を取り出した。
「いいですよ、この辺りでいいですか」
 ピントを合わせてセルフタイマーをセットして、シャッターを押した。
「じゃあ、気をつけて、良い旅を続けてください」
 京大生二人が先に金沢方面へ出発し、夏樹は二人を見送った。

             呼鳥門






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2010.08.19 / Top↑
 今回の旅も最終日を迎えた。今日も快晴だが、気温は昨日ほど高くないようだ。
 東尋坊は海面からの高さが25メートルもあり、切り立った岸壁が海水の浸食による柱状の岩が連なっている。これだけの規模のものは世界に三箇所しかなく、とても珍しいようだ。(ガイドブックの受け売り)
 また、ここで有名人の自殺などがあり、自殺の名所としても有名なところだ。あちらこちらに自殺を思いとどまらせるためのメッセージを書いた看板や、命の電話ボックスだったかな、公衆電話が少し不自然な場所にあったように思う。
 岸壁の端の方に立ち、海面を見下ろすと吸い込まれそうな感覚に襲われた。間違って落ちる前にこの場からはなれ、帰路に向かった。

           東尋坊
                         東尋坊2


 国道305号線を海岸沿いに進むと、道路の右側はすぐに海だ。文字通りの海岸道路で、海はとても穏やかである。海からの潮風が心地よく、昨日のような暑さを感じることはなかった。
 東尋坊から40キロほどで呼鳥門(コチョウモン)が見えてきた。山から海に突き出た岩が、長い年月を波風にさらされてトンネルになり、当時はその下を国道が通り、天然のトンネルとして観光名称になっている。今ではさらに風化が進み、小石などの崩落が多く、山側に新しいトンネルが作られた。呼鳥門の下は立ち入り禁止になっているようだ。
「こんにちは、金沢方面からいらしたんですか」
 大学生風の二人組みのライダーが声をかけてきた。
「あっ、どうもこんにちは。金沢方面?そうですねえ、東尋坊に泊まって昨日は金沢を素通りして来ました」
「金沢のことを教えてもらいたかったのですが」
「今年の正月に行ってきましたけど、兼六園に行っただけかな」
「えっ、冬の金沢へバイクで行ったの」
「いえいえ、電車ですよ。雪道をバイクではよう走らんしねえ」
 三人は微笑んだ。



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2010.08.17 / Top↑

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