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 敦賀へのフェリーには往きの便の時よりも乗客が多いようだ。盆休みの最終日はどこの会社も同じなのだろうか。
 フェリーに乗るのは二回目となれば、多くの戸惑いもなく時間を過ごすことが出来た。もちろんビールの販売機は一番左のボタンを押した。三回買ったが三回ともよく冷えたビールを飲むことが出来た。そして帰りの便は少し陸に近いところを航行するので、進行方向左側に陸地が見えるし、船内のテレビも日本の放送局の番組が、比較的鮮明に映っていた。
「ヒッチハイクの人はどこから来た人なんや」
「ええと、東京かな。関西弁やなかったように思うけどなあ」
「一時間の間に、どこから来たか聞かへんかったんや」
「そう言うことやねえ」
 二日間の航海中は晴天が続き、甲板上に吹く風は心地良かったが、夏の日差しは暑かった。三十時間後の八月十六日、午後五時過ぎに敦賀港に着いた。午後五時過ぎの日差しは、盛夏のころの同じ時間のそれよりも色が黄色い感じがした。ほんの少しだけ陽の傾きが早くなったからだろうか。
 フェリーを降りそのまま野田の車の後ろについて国道を南へ走った。国道百六十二号線を福井県から京都府へ入るころには、周りの山々に日差しが遮られるようになり、美山町まで来たころにはすっかり暗くなっていた。
 国道沿いのラーメン屋で夕食をすませ、寮へと向かった。明日からは仕事が始まる。旅での楽しかった思いが少しづつ薄れてきて、少しづつ現実に戻っていく自分が寂しくなってきた。「もう一度、北の大地へ、必ず行こう」と心に言い聞かせながら、野田の車のテールライトを見つめながらバイクを走らせた。

小説のような、旅のはじまり 九章-完-


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2011.04.03 / Top↑
 よく冷えた缶コーヒーを飲みながら、五十三時間ほどの北海道に滞在した行動記録をお互いに語った。
「最悪の時は車に寝たらええわと思ってたさかい、俺は宿を決めずに来たんで、宿探しにひと苦労したわ。宗谷に着いて、空いてる宿が見つかった時にはもう八時やった」
「それは大変やったなあ。やっぱり今の時季はどこも人が多いんやなあ。俺は二日とも予約をして来たけど、どっちも満室やったなあ」
「小樽から宗谷までの道程はそんなに苦にはならんかったけどね。昨日も小樽まで来たら、観光地やから、どこも満室かも知れへんと思って、手前の国道沿いあった民宿に空室有りって看板があったから、そこに泊まったんですわ」
 野田にもいろいろな出逢いがあり、様々のドラマがあったようだ。
「どの辺やったかな海沿いを走っている時に、ヒッチハイクをしてる人を見つけて乗せてあげたんや」
「へええ、」
「俺よりも十歳ぐらい年上とちゃうかな、歩きとヒッチハイクだけで全国を周ってるって言うてはった」
「ほうう」
「はじめは女一人でヒッチハイクなんかして大丈夫かいなあって思ったんやけど」「女の人が一人でヒッチハイク!ほうほう」
「私ねえ空手三段なんですって言うから、全然そんな風には見えへんかったけどね」
「ほな、その先にロマンは生まれんかったんか」
「女の人、と言う感じやのうて、一人の旅人同士って言うか、なんていうか。礼文島に行くフェリー乗り場の近くで降ろして、一時間ほどやったけど楽しかったなあ」
「なかなか、いい経験をしたんやなあ。その一時間ほどの間に今までの一人旅の話を聞いたりしたんや」
「女一人で旅をしていると、いろんなことがあるって、その話も面白かったなあ」


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2011.03.10 / Top↑
 野田から乗船券を貰いバイクの列に並んだ。すでに数台のバイクはフェリーに乗り込んでいた。待っているバイクもエンジンを掛け、跨った状態で待機していた。フェリーに乗り込むと、来る時と同じように係員の案内に従い、外側の壁際に少し斜めにして順に並べて停め、サイドスタンドを出してエンジンを止めた。メインキーを抜き、ヘルメットホルダーにヘルメットを掛け、荷物を降ろした。すぐに係員が固定するためのロープをシートに架けていった。八月お盆のころ、窓などはなく北海道とはいえ、ここは甲板の底の方になる、かなり暑い。安物の合皮ジャンパーを脱ぎ、上階の船室へと向かった。
 フロントで受付を済ませ、自分のベッド番号の書いたローカーの鍵を貰った。帰りのフェリーは二段ベッドがずらりと並んだ二等寝台。その一つが自分専用のスペースで、ベッドとベッドの間に鍵の付いたロッカーがある。
 ベッドの中でTシャツと短パンに着替え、財布以外の荷物はバッグにまとめてロッカーに入れた。そこへ野田が現れた。
「俺のベッド番号は下なんやけど、お前は上でかまへんか」
「いいですよ、どうせ寝るだけなんやから」
 野田もそうそうに着替えてオープンスペースへと向かった。すでに数人が陣取りをしてくつろいでいた。空いている椅子に座り何かを飲みたいのだが、午前中からビールはちょっと早いような気がした。
「とりあえず缶コーヒーでも飲まへんか」
「そうですね、俺、買ってきますよ」
「俺はあんまり甘くないやつな」
 そう言って二人分の小銭を野田に渡した。
「先輩、おぉきにぃ、次の時は俺が出しますから」
 野田は自動販売機へと向かった。

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2011.03.08 / Top↑
「夏樹さん、ここ」
 どこからか夏樹を呼ぶ声が聞こえてきた。
「先輩!どこ見てるんですか、こっちやて」
 フェリーへの乗船待ちをしている車の列の岸壁に近い方に、野田の車が見えた。その車の向こう側で大きく手を振る野田をようやく発見できた。
「おおう、もう並んでたんや、無事に戻って来たか。予定どうおりに宗谷岬にたどり着いたんか」
「もちろん。北の端っこまで行けて良かったです。けど、遠かったわ。先輩も戻って来いひんなんて言うてはったけど、ちゃんと来たやないですか」
「まあな、けど何回か、このまま北海道に居ようかなって思うたこともあるんやけどな、まあとりあえずは帰って出直すことにしようかと」
「ええ、出直す?」
 この埠頭で別れて別々の目的地に向けて出発したのは、昨日の朝だった。まだ一日と半日ほどの時間しか過ぎていないのに、随分と久しぶりに会ったような気がしていた。
「もしかして、とりあえず京都に帰って、また北海道へ来るっちゅうことですか」
「まあ、そう言うことやけど」
「また来年の盆休みにフェリーに乗って小樽まで来て?」
「いやあ、それではちょっと時間が足らんわ。もうちょっとゆっくりと居たいんやけどなあ」
「ゆっくりって、仕事もあるし、そんな簡単に来ることができひん所やしなあ、どうするんですか」
「その辺のことは、まだ、何にも考えてへんけどな」
 そんな会話をしていると、野田の並んでいる車の列の前の方が動きはじめた。乗船ができるようになったようだ。夏樹もバイクの列の方へ向かおうとした。
「先輩、切符、切符」
 なんのために野田を探していたのか、乗船券を貰うためだった。


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2011.03.06 / Top↑
 北海道鉄道記念館を後にして、小樽運河の横を通り抜けると、まもなく埠頭に止められた海上保安艦が見えてきた。その隣の埠頭には貨物船も停泊している。この先に敦賀行きのフェリーがつながれた埠頭があるはずだ。
 北一硝子の洋風の建物が見えた。明治のころから小樽が栄えをはじめたが、電気のない時代にここで造られたランプは必需品だったようだ。小樽の繁栄を創りあげた企業の一つだろう。
 小樽は明治維新後に北海道開拓の玄関港として発展していったために、和と洋の文化が同時期に入り、独特の和洋折衷文化が築かれた。北一硝子も誰もが知る小樽の名店だろう。しかし、その時は前を通って写真を写しただけで、店の中に入って商品を見る時間もなかったし、ガラス製品は落とせば、われてしまう。バイクに積んで帰るのは危険が多かった。

                  北一硝子

 敦賀行きのフェリー埠頭にはすでに船が接岸され、乗船を待つ車とバイクが列を作っていた。夏樹はバイクの列に並ぶ前に小樽までは一緒にフェリーに乗って来た野田の車を探した。船に乗る前に、どうしても彼に会わなければならなかった。彼に会ってフェリーの乗船券を貰わないと、フェリーには乗れないからだ。車のダッシュボードに入れておけば無くすことがないだろう、と言うことで彼が二人分の券をもっている。
「もしかしたら、北海道が気に入ってしもうて帰らへんかも知れへんから、帰りの切符はお前がもっててな」
 夏樹は野田に出発する前に言っていたことだ。
「まさか、そんな帰らへんなんてことは、ないでしょ」
「いや、わからんで」
 とりあえず、帰りのフェリーが接岸された埠頭には来たようだ。


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2011.03.04 / Top↑

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