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 日御碕には石積みとしては東洋一といわれている灯台がある。観光としては出雲大社の次に訪れるところはここだろう。
 出雲大社の近くからバスに乗りしばらくすると、左手に海が見えてくる。相変わらず天気は快晴、青い海と空、その境目の水平線しか見えない。バスの半分ほどの座席が埋まるぐらいの乗客が、全員座っている。決して混んでいるわけではない。ところどころの窓が開け放たれ、少し冷たいが心地よい風が、バスの中を駆け回っている。

 日御碕に行くバスに乗っている。なぜか夏樹の頭の中は「岬めぐり」の歌詞がぐるぐると駆け回っている。
『岬めぐりのバスは走る、窓に広がる青い海よ・・・』
 どんな理由で彼女と別れたのか、その傷心を癒すために出てきた旅。彼女が教えてくれた岬めぐりのバスに乗って、車窓に広がる海や仲の良いカップルを見ていると、ますます傷心が深くなってしまった。だからもう帰ろう。
 勝手な解釈をしてしまったが、夏樹が失恋したのは四年も前のこと、単純に岬へ向かうバスに乗っていて、窓の外には青い海が見えるだけのだが、今でもこの歌を聞くと日御碕のことを思い出すようだ
 後々に分かったことだが、この歌のモデルとなった岬めぐりのバスは、神奈川県の三浦半島走るバスだそうだ。

                      日御碕
    


「飛沢、着いたで、起きや」
 飛沢は日御碕のバス停に着いてもまだ、居眠りをしている。夏樹が飛沢の体を大きく揺すって声をかけた。

 海に突き出た岬部分の周辺は、山の斜面からも遠く、暴風林の松が少し植えられているだけで、灯台以外には大きな建物もない。広々とした牧草地のような風景が広がる。そこに大きく白い灯台が長年の風雪に耐えて、誇らしげにそびえている。


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2009.06.02 / Top↑
「海からの風が、気持ちええなあ」
 夏樹が言った。
「ほんまやなあ、なんか気持ちええなあ」
 飛沢もようやく居眠りから目が覚めたようだ。
 三人は海の近くまで歩き、大きく両手を広げて空を仰ぎ、寝転んだ。少し頭を後ろに反らすと日御碕灯台の天地が反対になって見える。灯台の先の上空には薄い雲が、ゆっくりと流れて行く。

「ここの灯台には人は住んでへんのやなあ」
 石田が突然、灯台を見上げて言った。
 昔は、どこの灯台にも「灯台守」と言って、灯台を管理、運営している人がいた。人里離れた岬の灯台に、夫婦二人だけで灯台の灯りを絶やすことなく、点し続けた話しが映画にあるのだと、石田が得意げに話した。
「その映画って、随分と昔のとちゃうかいなあ、歌も聴いたことがある、最初のとこだけな」
 夏樹も多少は映画に興味があるようだ。
「おいら岬の、灯台守は・・・って言うのとちゃうかいなあ」
「へええ、夏樹も随分と古い歌を知ってるやんか、俺もそこだけは聞いた記憶があるなあって、俺も知ってんのかい」
 飛沢が一人万才をはじめてしまった。
 
 天気が良く、心地よい海風が体全体を駆け抜け、大きな灯台を目の前に仰ぎ見ていると、なんだか眠くなってきた。体中の筋肉からゆっくりと力が抜け、無意識の力がまぶたに襲いかかり、ゆっくりと目を閉じさせらてしまった。

 どれぐらいの時間を眠ってしまったのか、ただただ心地よい時間をすごした。
「さあ、そろそろ行こか、今日の宿へ」
 夏樹が目を覚まし、起き上がった。その言葉に飛沢が起きた。
「おい石田のやつ、いびきを掻いてるで、よっぽど気持ちよう寝てるで」
「夏樹もいびきを掻いてたで、石田よりも大きないびきを」
 飛沢が夏樹に言った。
「うっそう、ほんまいかなあ、自分のいびきは聞こえへんさかいなあ」
 その時石田が飛び上がるように起き上がった。



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2009.06.03 / Top↑
 この日の宿泊は出雲大社の近くにある「えびすやユースホステル」
 民営のユースホステルで、歌舞伎の始祖「出雲のお國」の”お國座”跡地を譲り受けて開設されたようだ。ここには昨年の春に安達と一緒に夏樹は泊まっている。
 もともと宿泊定員は少ないのだが、今回もほぼ満室のようだ。どこのユースホステルも宿泊者の大半は大学生のようだ。今日のえびすやユースホステルもほとんどが大学生のようで、高校生(正確には高校を卒業したばかり)の夏樹たち三人が少し子供っぽく感じるのはなぜだろう。

「おかえりい」
 ユースホステルの玄関を入って、大きく明るい声が聞こえてきた。
「男三人だから、夏樹君たちかな」
「はい、そうです。ええっと、ただいま、でええのかな」
 夏樹が少し恥ずかしそうに言った。
「いいよ」
 大学生風の男は、にっこりと笑顔で答えた。
「ただいまあ」
 夏樹の声よりもっと小さな声で、飛沢と石田が言った。
「なんか元気ないねえ、どうしたのかな。若者よ、もっと元気に挨拶をしようね」

 にっこりと笑って、大きな声で出迎えてくれたのは、このユースホステルで住み込みのアルバイトをしている大学生だ。ヘルパーと言う。
 アルバイトと言っても住み込みで、三食付だからアルバイト料は大した金額ではないようだ。

 ユースホステルの経営者、運営者のことを「ペアレント」と言う。まさにこのえびすやユースホステルのペアレントさんは、お母さんのような方で、今でも旅をしていた頃のことを思い出す時には、必ず思いだされるペアレントさんの一人である。
 ほとんどのヘルパーをやっている人は、ユースホステルが好きで、そのユースホステルのペアレントさんに惹かれてヘルパーとして働いているようだ。

 たまたま泊まりに来て、長期休みのほとんどをそのユースホステルでヘルパーとして過ごす人もいるようだ。そんなユースホステルやペアレントさんの噂は口コミで旅人たちの間に広がり、多くの人が集まってくるのである。
 旅館やホテルなどは、その建物や料理と言ったサービスを求めて人が泊まりに来る。名物料理や豪華な温泉、景色の綺麗な部屋などに人気が出ると、多くの人が集まるのだけれど、ユースホステルの建物はホテルのように豪華でわないし、食事はたいていの場合、日替わり定食のような料理が多い。海沿いのユースホステルだからと言って、刺身の盛り合わせなどは出てはこない。宿泊料金も全国ほぼ同一料金である。




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2009.06.08 / Top↑
 ではユースホステルには何を求めて人が集まるのか、集客の多い人気のユースホステルは、ペアレントさんに会いに泊まりに来ると言っても過言ではない。また、そのユースホステルに行けばいつものメンバーが集まって来る、ペアレントさんを慕って泊まりに来る常連ホステラー達と逢える。多くのホステラーは、ユースホステルに集まる人たちに会いに行くのが目的で泊まりに行くのである。

 ユースホステルの中には協会直営の大きな建物のところや、ホテルや旅館の一部をユースホステルとして契約しているところ、宿坊のユースホステル、一般の民家をユースホステルとして運営しているところなど、さまざまだ。
 協会直営のユースホステルなどは、有名な観光地に多いから、それだけで人が集まる。ペアレントさんも協会職員や、地方公共団体の経営だと、市の職員さんだったりする。対応が事務的だから、常連ホステラーなどは少なく、観光に来て安く泊まれる宿。それだけの所が多いようだ。(もちろんお父さんのような、兄貴のようなペアレントさんもいらっしゃいます)
 ホテルや旅館の一部がユースホステルになっているところも、昔の本館の海とは反対側の部屋で、一般の宿泊客の食事の一、二品を減らした料理だったりする。そして、ユースホステルとしての宿泊料金で泊めてくれる、と言うだけで、それ以上のものを求めることはできないであろう。
 
 常連のホステラーが集まるユースホステルは民営のユースホステルが多いようだ。えびすやユースホステルのように、お母さんのようなペアレントさんが運営されているところに人気があるようだ。
 当時、人気全国一位ではないかと言われていたユースホステルが、九州は福岡の「ルノワルユースホステル」だ。常連ホステラーの会があり、お母さんと呼ばれ、慕われているペアレントさんを招き、東京や大阪などで集まることがあったようだ。
 能登のかつら崎ユースホステルも慕われたお父さんがいた。いろんな意味で有名なユースホステルの一つだ。





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2009.06.10 / Top↑
「あら、お帰り、先に風呂に入らない」
 顔なじみの隣の家のおばさんが、にっこりと話しかけるように、声をかけてきた。このユースホステルのペアレントさんだ。
「あっ、はい。じゃあ、とりあえず荷物を部屋に置いてきます」
 夏樹が大きな荷物を持って部屋に向かおうとした。
「夏樹君、部屋へ行く前に受付をしてくれないかなあ」
 大学生風のヘルパーさんが夏樹に言った。
「お前どうしたんや、受付もしてへんのに」
 飛沢が大きな声で笑いながら言った。
「おっ、そうやなあ、去年の春にもここに泊まったさかいに、その時と同じ部屋やと勝手に思い込んでいたんや。ええと、これが予約した時の往復葉書の返信です、ほんで会員証です」
「あっ、思い出した、見たような気がしたのよ、そうか去年の今ごろでしょ、泊まったの、あの時も満室だったよねえ」
 夏樹が去年の春にここへ泊まったことを、ペアレントさんが覚えていてくれたのだ。
「あの時も、みんなで大蛇(オロチ)ゲームやったんだよね」
 ペアレントさんがにっこり微笑んで言った。
「あれって、オロチゲームって言うんですか」
 夕食後のミーティングの時間に、宿泊者全員で行うゲームの一つである。四組に分かれての団体戦で戦うじゃんけんのようなゲームで、大蛇は大国主命(おおくにぬしのみこと)の剣に切られてしまうので弱く、大国主命は姫に弱い、姫は大蛇に襲われるので弱い、と言った具合だ。
「大国主命は「ええい」と剣を振りかざす、大蛇は「がおう」と両手を上下に広げる、姫はどうするんやったかいなあ」
 夏樹が大蛇の格好をしたままペアレントさんの方を見て言った。
「姫はねえ、両足を揃えて少し斜(はす)に構えて、右手の甲で左のほっぺを軽く触るのよ、こんな風にね」
 ペアレントさんが姫のスタイルを真似た。ウインクのおまけ付だ。
「そうそう、姫をやるのが照れくさくって、なんか、ぎこちなかったのを思い出しましたは。ほんで何回かこれをやって、一番負けたチームが罰ゲームと言うことで、一人ずつ自己紹介をしたんとちゃうかいなあ」
「そうだったかも知れんねえ」



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2009.06.12 / Top↑
 夕食のミーティングに「オロチゲームを」をやった。
 夏樹たち三人は別々のチームで「エエイ、ガオー」と団体じゃんけんゲームを楽しんだ。やはり姫のスタイルは少しやりにくかったようだが、目の前の大学生たちは、なんのためらいもなく姫をやるので、その人たちにつられるように、後半はウインク付の姫を連発していた。
 ゲームの勝ち負けなど、どうでも良くなり、この日たまたま同じ場所に泊まった知らないもの同士、さっきまで何処の誰なのか知らないし、もちろん明日からも二度と逢うことはないであろう。そんな人たちとグループを作り、単純なゲームを楽しむ。普段の生活では絶対にやらないであろう仕草を、恥じらいもなく「ガオー」と思いっきり両手を広げたり、斜に構えて右手の甲を左手の頬に付けてウインクしたりして、大笑いした。
 とても楽しく、愉快で、不思議な時間を過ごすことができた。

 翌朝、洗面所に顔を洗いに行くとオロチゲームで夏樹と同じグループだった大学生が「ガオー」と両手を広げて向かってきたので、「エエイ」と剣を振りかざした。「やられたあ」
「後出しやけど、俺の勝ちやね」
「おはよう、夏樹君だったよね」
 昨日のゲームで夏樹たちのチームは大敗をしてしまい、罰ゲームとして自己紹介をしたのだ。
「高山さん、おはようございます。今日は何処へ行くんですか」
「今日はねえ、萩まで行くねん」
「へんな関西弁を使わんといて下さいよ」
「へんかあ、君と話しをしていると関西弁がうつってしまっちゃたよ」
「うん、かなりへんな関西弁ですよ」
「夏樹君たちは今日、何処まで行くんだい」
「ええとねえ一畑電鉄に乗って、松江まで行こうかなと思っています」
「周遊券では一畑電鉄の電車には乗れないんじゃないの」
「そうなんですけどね、鉄道ファンとしましては是非に乗ってみたい電車なんでね」
「そうなんだ、じゃ良い旅を続けてくださいね」
「はい、ありがとうございます。高山さんたちも良い旅を」





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2009.06.15 / Top↑
「では、お母さん、行って来ます」
「はい、行ってらっしゃい、気をつけてね」
 ペアレントさんに挨拶をしてユースホステルを後にした。
 
「いやあ、面白かったなあ、オロチゲーム。はじめはなんか、あほらしくて、こんなことやってられへんは、と思ったけど、お母さんのちょっと強引な誘いこみと周りの雰囲気がすごくて、いつの間にか恥ずかしがっている自分がカッコ悪く思えてきたもんなあ」
「飛沢もそう思ったか」
「夏樹のチームの、北海道出身で東京の大学に行ってるって言うたはった人」
「高山さんやろ」
「そうそう、やたら面白い人で、あの人のやる姫のスタイルは最高におもろかったは、お腹が攣りそうになったで」
「あの人が俺のチームのリーダーをやってたやろ、はじめは大蛇も大国主命もやってたんやけど、あんまりにも姫がうけるもんやさかいに、姫しかやらんようになってしもうて、相手にまで分かったから、大負けしてしもうた」
「俺んとこのリーダーは、その高山さんと一緒に旅をしている友達で、大蛇のサインしか出さへんようになったは」
 石田も昨夜はそれなりに面白く、楽しんだようだ。
「石田の姫は遠慮がちで少し変やったけどなあ」
 飛沢が石田の姫スタイルを真似て言った。
「確かにちょっと変やったけど、石田も今回のたびで少し変わったな、あんなに知らん人との会話を怖がっていたのに」
 夏樹が石田の首を抱え込むように腕を回して言った。
「そうやったかいなあ」

「ところで夏樹、今日はどこまで行くんやったかいなあ」
 飛沢が言った。
「きのうの夜に聞いたやろ、出雲大社の拝殿の大注連縄に五円玉が刺さったら、恋が叶うって、お母さんが言てはった」
「そうそう、もう一回参拝に行って、五円玉をさしてこんと、あかんなあ」
 夏樹たち三人はいつものように、大きな荷物を肩に担ぎ、再び出雲大社へと向かった。




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2009.06.19 / Top↑

                  出雲大社鳥居


 飛沢が大注連縄に向かって、五円玉を投げ続け、やっとの思いで刺さったのは三十分後だった。
「飛沢、こんなに何回もやって、やっと刺さったと言うことは、お前の恋は当分の間、叶いそうにもないなあ」
「なんやて夏樹、お前はどうやったんや」
「十回目で刺さったで」
「俺は一回で刺さったなあ」
 遠慮気味に石田が言った。
 飛沢は百二十五円の御賽銭を入れて、長い間、両手を合わせ頭を下げていた。

 一畑電気鉄道(現一畑電車)に乗り、松江まで移動した。出雲大社駅から乗り、一度乗り換えて松江市内の松江温泉(現松江しんじ湖温泉)駅まで行く。一畑薬師のある一畑口駅のあたりからは右手に宍道湖が広がり、松江までの間、湖畔を走る電車である。
「なんや飛沢はまた居眠りかいなあ」
 夏樹が右隣に座っている飛沢を見て,ひとごとのように行った。
「なあ石田、飛沢がまた居眠りしてるで」
 左隣に座っている石田に同意を求めようと左を見ると、石田も居眠りをしていた。
 夏樹はひとり黙って目の前に広がる宍道湖を眺めていた。

                宍道湖


 一時間ほどで松江には着く。まだ昼だ、ゆっくりと市内観光をすることにした。
 時間的には松江より、もう少し東にあるユースホステルに泊まればよかったのだけれど、米子のユースホステルは定員が少ないためか満室で予約が取れず、そこより東には鳥取まで行かないとない。出雲から、鳥取は少しハードな旅程になるために松江のユースホステルに泊まることにした。
 今回の旅は、西本州一周を前提とし、前半はハードだが少しでも早く最大の目的地である出雲大社へ向かう、後半は少しゆとりの旅程で一日の移動距離は少なめにした。
 まずは松江城を目指した。いつものように重い荷物を肩に担ぎ、三人は歩いた。

 京都を出て六日目だが、天気には恵まれた。一日も雨は降らず、曇りの日もなかった。今日も快晴とまではいかないが、天気予報的には「晴れ時々曇り」である。防寒用に羽織っているジージャンが、すこし暑苦しいぐらいの陽気だ。




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2009.06.22 / Top↑
「飛沢、出雲大社で真剣に一生懸命な顔つきで拝んでたけど、そんなに彼女がほしいのんかあ」
 夏樹が重い荷物を担いでいるために、少し前かがみの姿勢で言った。
「またその話かいなあ、前にも早よう彼女を作りたいって言うたやんか」
 出雲大社へ向かう時よりは、確実に元気のない歩き方になっている。話し方にも覇気があまりない。十八歳と言う若き者ではあるが、さすがに六日目ともなると疲れも出てくるようである。
「焦ったかて彼女なんか、早々できるもんやないやろ、それに誰でもええわけやないやろ」
「そんなもん当たり前ないか、好きな子がいて、その子と付き合うことができるように、いろいろと努力をするんやないか、男として」
「そこやねん」
「どこやねん」
「好きな子はいるんか」
「いいひん」
「ほな、彼女ができますようにって、神さんにお願いしたかて、あかんやんか」
 飛沢はますます元気がなくなり、夏樹が言ったことに何も言って返さなかった。
「まずは好きな子があらわれることを、願わんとあかんやんか」
「そうなんやけどな、今まではその機会があまりにも少なかった、男子校やったさかいなあ」
「と言うことはやな、女の子と知り合う機会を増やすことや、今日からは泊まったユースホステルでは、積極的に女の子に声をかけて、きっかけを作ろうやないか」
「ユースホステルだけやのうて、観光地でもええのとちゃうか」
 石田が突然、会話に参加してきた。
「お前も大胆やなあ、それってナンパとちゃうんかい」
 夏樹が驚きの表情で言った。
「何ぼなんでも、旅先でナンパはできひんやろ」
「旅先やなかったらナンパすんのんか、したことあんのか」
 夏樹が微笑んで言った。
「いいや、ない、ナンパなんか恥ずかしいて、ようせんは」
「俺もしたことないし、そんなもんできひんは」
「なんや、二人とも意外と根性なしやなあ」
 石田が言った。
「偉そうに言いやがって、お前はできんのかいな」
 飛沢が半分は真面目になって怒っているようだ。
「俺かてしたことないし、そんなもん、ようせんは」
「なんや、ほな偉そうなことを言うなよ」
「すんまんせん」
 三人は重い荷物を肩に担ぎ、少し前かがみの姿勢で笑った。




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2009.06.26 / Top↑
 一畑電鉄の駅から一キロほどで松江城に着く。松江城天守閣は関が原の合戦後に建てられ、現存する全国の城の中で六番目に古く、山陰地方で唯一現存する城だそうだ。
「立派な城やなあ」
 夏樹が言った。

松江城

「お前に城のことがわかるんかいな」
 目の前の大きな城を見上げて飛沢が言った。
「復元やのうて、何百年も前からここにあった本物の城なんやろ、なんかすごくないか」
 夏樹は重い荷物を足元に置き、松江城を見上げて、大いに感動していた。
「天守閣に登ろう」
 今までの疲れはどこへ行ったのか、夏樹は他の二人の意見を聞くことなく、天守閣の入り口へと向かった。最上階からは松江の市内が一望でき、宍道湖も見える。

宍道湖2

 最上階からの眺望を楽しんだ後は、城の周辺を観光案内図も持たずに、なんのあてもなく、気の向くまま城下街の雰囲気を散策することにした。しかし、三人とも言葉数は少なく、石田は他の二人とは一緒に行動しなかった。
「俺、ここのベンチで座ってるは、どうせさっきの電車に乗って今日のユースホステルのある駅まで行くんやろ」
「石田、どないしたんや、そんなに草臥れたんか」
「うん、ちょっとな」
「ここでずっと座ってるか。荷物を置いて行ってもかまへんか」
「ええよ」
 夏樹と飛沢は石田を城の入り口付近のベンチに一人置き、散策に出かけた。

松江市内


「松江って小泉八雲が居たとことちゃうかいなあ」
「夏樹、それってアイルランド人の作家でラフカディオ・ハーンって言う人のことやろ」
「おまえ、随分と詳しいなあ」
「一応は受験勉強をしたからなあ、ちょっと頭に残ってたんや。代表的な作品が「耳なし芳一」って言う怪談話しなんや」
「その怪談話しは知ってるは、小泉さんが創ったんか。毎晩のように現れる妖怪に悩まされた芳一さんが、お坊さんに頼んで体中にお経を書いてもらって、妖怪退治をしようとしたんやろ」
「そうそう、ところが耳だけ書き忘れてしもうたさかいに、妖怪は耳だけを切り取っていったと言う話しやったなあ」
「小泉八雲って日本人やと思ってた」
 二人でそんな話しをして歩いていた時、目の前に小泉八雲旧居が表れた。



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2009.06.29 / Top↑

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