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   あけまして
    おめでとう 
     ございます


 皆さん良い年をお迎えですか
 大晦日から正月の三が日は少しブログを休憩しております
 皆さんのところへも訪問できないと思いますが
 何卒、ご容赦ください
 四日から更新再開したいと思います

 本年も宜しくお引き立てくださいますよう
 宜しくお願い申し上げます

              夏樹涼風
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2010.01.01 / Top↑
 夏樹は女の人の言葉に、手胡坐を組んで感心した。
「職場の関西出身の人がね、あなたに良く似ているのよ、喋り方がねえ」
「へえ、大阪の人ですか」
「一人は大阪で、もう一人は兵庫県の出身。ところで名前を聞いていなかったわね。私はコバヤシです」
「夏樹です。春夏のなつ(・・)に大樹のじゅ(・・)、です」
「じゃあ夏樹さんは京都でしょ、似ているって言ったけど、会社の二人とは少し違うのよね」
「関西弁と一括りにはできまへんなあ、京都、大阪、神戸、奈良、和歌山、滋賀。ちょっとずつ違いますなあ」
「東北弁も県によって、訛りや、方言は違いますなあ」
 コバヤシの話し方に少し関西弁のようなイントネーションが含まれた。
「いまのわざとですか、それとも俺の喋りがうつりました」
「わざと、・・・少しうつったかな」
 また、二人は微笑んだ。

「同じ関西、近畿地方でも日本海側に行くと、いわゆる関西弁とはだいぶ違ってきますよ、三重とか、和歌山の南部の方とかも違うと思うは。行ったことないさかいにようは分からんけど」
「行ったことがないんやったら、わからんしまへんやろが」
「コバヤシさん、いまのは、あきまへんは。だいぶ無理がありましたよ、気持ちは伝わってきたけど」
 ほんの少しの間だが、会話が止まってしまった。

「夏樹さんは東京弁がキザに聞こえるって行ったけど、私にとっての東京の言葉は憧れだった。反対に関西弁は恐かった、会社の関西出身の人にいつも怒られているような感じがしていた。でも、怒られているのに顔は笑顔で、他の先輩たちも笑顔だったから、不思議な気持ちだった。あの人の話し方はあれが普通で、すごく良い人なんだ、とても親切にいろいろと教えてくれているんだってことが分かるのに、三ヵ月かかりました」
「ちょっと、かかりすぎと、ちゃいますかあ」

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2010.01.04 / Top↑
「でもねえ、本当にはじめのころはあの人の話し方が恐くって、関西弁ってヤクザ映画のイメージが強かったのよねえ、健さんとか文ちゃんとか」
「随分と昔の映画とちゃいますか、僕はあんまり見たことがないけど」
「・・・あっああ、お兄ちゃん、ううん兄がよく見ていたからね、耳に残っているのよ」
「映画ファンなんですね。京都には撮影所がいっぱいあるんやけど、僕の家の近くでも、いろんなロケをやっているところを見たは。それこそピストルを持った男が、バスタオルだけを巻いた女の人を追いかけるところとか」
「わあ、すごいねえ、見てみたいなあ。ううん兄に教えたら見てみたいだろうなあって」
「まあ、いいじゃないですか、趣味は人それぞれですから。俺なんか電車や汽車に乗るのが大好きで、高校へ通うのに遠い駅までわざわざ行って、国鉄に乗ってたこともあったからねえ、バス停の方がずっと近いのに。変わってるでしょ」
「・・・、私はね、文ちゃんが大好きなの、だからあの人の出ている映画での話し方が、関西弁のイメージだったのよ」
「そら恐いはなあ。けどあれって広島とちゃうかいなあ」
「そうかも」
「そしたら今度、吉本のお笑いを見てくださいよ、おもろいでえ、関西弁のイメージも少しは変わるんとちゃいますか」
「もちろん、いまではぜんぜん平気よ、だって毎日のように近くで聞いているからね」
「あれっ、もしかして、さっきの話に出てきた大阪か兵庫の人ととても仲良くなったとかですか」
 コバヤシは少しうつむいて、冷めきっているだろうお茶の入った湯飲みを口元にはこんだ。
「兵庫県の神戸なんだけどね、京都で待ち合わせをして、彼の実家へ行くところなんです」
「なるほどね、では近い時期におめでたいことになりますな。それはそれは、おめでとうございます」
「いやあ、まだはっきりと決まったわけじゃねぇがら、いや、ないから」




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2010.01.06 / Top↑
 コバヤシは思わずお国訛りが出てしまった。夏樹には何を言ったのか良く分からないようだ。
「じゃあ、京都に行ったら時間を見つけて、たぬきうどんを是非、食べてみて下さい。京都にしかないうどんなんで、けっこうおいしいですよ。
 夏樹は京都に行かないと食べられない、隠れ名物だと思っている。何処へ行ってもたぬきうどんを進めている。
「はい、忘れないようにしますね」

 旅に出かけると、人口密度の多い関東の人が圧倒的に多い。なぜか西日本のユースホステルでも関東の人の方が多い。関西人にはユースホステルが合ないのだろうか。関西からの宿泊者がどこへ行っても少ないので、関西弁の夏樹は目だってしまう。京都の中学、高校時代や職場では特別目立つ存在ではないのだけれど。
「でも夏樹さんはユースホステルがお気に入りなのね」
「とりあえず安いし、こうやっていろんな人と話しができる。狭い日本やけど言葉や習慣、食べ物が地方によって様々でしょ、そんなことを話しして情報交換するのが好きなんですは」
「そうやねえ、こんなに狭い日本だけれど、言葉も違えば、習慣も違う、食べ物もその土地で様々なものがあるし、そんな話をするのはおもしろいよねえ」

「あのう、お話し中に申し訳ないのですが、食器をサッサと片付けたいのですが」
 受付にいた男のスタッフさんが声をかけてきた。食堂で食事をしていてたのは、夏樹とコバヤシだけだった。
「すいません、つい話しに夢中になってしまって」
 コバヤシと夏樹は慌てて席を立ち、食器をトレーに載せて食器の返却場所へ向かった。
「それと、風呂も早めにすませてくださいね」
「あっ、はい、すぐに入ります。コバヤシさん、では後ほどまたゆっくりと」
「はい、じゃあ」







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2010.01.08 / Top↑
 金沢ユースホステルの定員は百二十名だが、この日の宿泊者は十人ほどのようだ。夏樹がコバヤシと食事をしていたときに、なんとなく廻りを見渡してみると、六人の宿泊者しか確認できなかった。正月は北陸への旅人が少ないようだ。
 百二十人の旅人を受け入れられる大きなユースホステルの風呂は、銭湯のように大きな浴槽と、十数人分のシャワーが備え付けてある。そんな大きな浴槽に夏樹は一人だけでゆっくりと浸かった。
「ああぁぁ、ちょうどの湯加減やなあ、他の人はもう入ったんやろなあ。八時からミーティングをやるって言うてはったなあ、あんまりゆっくと入ってられへんなあ」
 夏樹は急いで頭と体を洗い、風呂を出た。

「こんばんは、あけましておめでとうございます」
 受付にいた男のスタッフの人が挨拶をした。
「本日のミーティングを始めます。今日のホステラーはちょうど十人ですので、皆さんとコーヒーなどを飲みながら、語らいたいと思います。それで、普段は禁酒のユースホステルですが、今日は正月です、特別にお一人に一杯だけですが水割りを用意しています。ご希望の方は言って下さい。一杯、二百円です」
「ええ、金を取るんですか、正月なんですからサービスしてくださいよ」
 夏樹と同い年ぐらいの少し太めの男が言った。
「すいません、実はこのウイスキーは私の私物なのです、ご協力ください。その代わりにコーヒーと、少しですがお菓子は無料です。あっちのカウンターの方へ集まってください」
 宿泊者十人のうち女が三人、男は夏樹を含めて七人だ。大学生風の人から明らかに社会人まで、いずれも二十代の人たちだ。スタッフの男の人も二十代後半ぐらいに見える。
 水割りを頼んだのは男四人だけだった。特に理由はなかったが、夏樹はコーヒーをカップに入れてカウンターの端の方に座った。




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2010.01.12 / Top↑
 コーヒーカップを片手に持ち、六人ほどが座れるカウンター席の端っこに夏樹は座った。その隣の席を一つ空けて、水割りのグラスを持った男が座った。
「こんばんは。大きなユースホステルなのに人が少ないですね。あれっ、彼女はこちらに座らないの」
「はっ、彼女って誰のことですか、俺は一人で旅をしてるんやけど」
「だってあそこに座っている人は、あなたの彼女じゃないの」
「違いますよ、なんでそんな話しになってるんですか。そんなことを言うたらあの人に怒られますやん」
「さっき、お二人で仲良く語らいながら夕食を食べていらしたから、なんか近寄りがたい感じだったので」
「たまたま二人とも同じバスで少し遅くにここへ来て、夕食を食べてなかったのはあの人と俺だっただけですよ。それでなんとなく話しが弾んでました」
「違うんだ、てっきり仲良く二人で旅行中かと思いましたよ。とても羨ましくて、悔しくて、他の人たちと見ていたんです」
「ちゃうちゃう、ぜんぜん関係おまへんがな」
「係長、違うんだって、関西弁の人と美人さんは恋人じゃないって」
 椅子席に座って水割りを少しづつ飲んでいる男たち三人の方を見て言った。
「係長?会社の新年会の旅行でっか」
「いや、さっき知り合ったんだけど、従業員が十人の会社の係長なんだって。そういう風に自己紹介していたから、名前を改めて聞くより『係長』って呼ぶことにしたんですよ。そしてその隣にいるメガネを掛けたひょろっと大きな男が青学、青山学院の四年生。その隣のちょっと太いのが薬屋、薬メーカーの営業マン」
「へえぇ、じゃあ、あんたはなんて呼ばれることになったんですか」
「俺はサトウです。甘いサトウと違うよ。にんべんに左と藤で佐藤です」
「なかなかおもろい人やねえ、俺もその話の仲間に入れてぇな」





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2010.01.15 / Top↑
 佐藤と一緒に夏樹は係長たちのいる椅子席の方へ向かった。その輪の中にはコバヤシと女性の二人連れもいた。神奈川の会社に勤めるOLで、正月休みを利用して旅行をしているのだと言う。
「こんばんは、俺も仲間に入れてくださいよ、たのしそうやないですか」
「どうぞ、空いている所へお座りください」
 青学が言った。
「コバヤシさん聞きました、俺たちが恋人やと思われてたんやて」
「ええ、違うんですか。ものすごく仲よく話しをしていたから、てっきり。お似合いだしねえ」
 神奈川の背の大きい方のOL嬢が、背の低いOL嬢に同意を求めるように言った。
「そやから違うって」
 夏樹が少し強い調子で言った。
「あら、私では不満ですか」
 コバヤシが不服そうに言った。
「不満やなんて、俺にはもったいないぐらいや。そうやのうて、自分にはちゃんとした、エエ人がいたはるやないですか」
 夏樹がそこまで言うと、コバヤシは右手の人差し指を立てて口に当てた。
「しいぃ」
「別にかましませんやん、悪いことをしてるわけやないんやから」
「あのう、大体の話はわかりました。とりあえず、お二人は何の関係もないんですね」
 背の高い方のOL嬢が言った。
「はい」
 コバヤシと夏樹がほぼ同時に返事をした。
「ヒゲさんの話に少し分からないところがあるのですが」
 OL嬢が続けた。
「自分にはちゃんとした、エエ人がいたはるって言いませんでした」
「言いました」
「自分とは自分自身のことやから、ヒゲさんのことですよねえ」
「いいや。そうか関東の人には、これを説明しとかんと、ややこしいことになるんやったねえ。関西で言う自分は、お前とか君、あなたと言うことなんですよ。そやからさっきの自分はこちらのコバヤシさんのことです。そやからコバヤシさんにエエ人がいたはるっちゅう話です」
 背の高いOL嬢と他の六人は不思議そうな顔をした。





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2010.01.18 / Top↑
「お国が変われば、言葉もいろいろ。私なんかすんっごく訛ってっがらねぇ」
 コバヤシが言った。
「俺はそういうの好きやなあ、いろんな土地のそれぞれの歴史があって方言がある。その言葉、意味を知るにはその土地に行かんとわからん。けど旅に出て、俺の住んでいるところとは違うところから来ている人と出会うと、少しやけど知ることができる。こうやって話しをすると、いままでとは違う世界が見えてくる。ものすごく興味があって、いろんな人と話しがしたいなあ」
「そうなのだよ、俺も旅先でいろんな土地から来ている人と話しをするのが好きだから、出張の時はいつもユースホステルを利用するんだ」
 係長がそう言って、水割りをひとくち飲んだ。
「君が出張の時にユースホステルを利用するのは、出張費を浮かせて、遊びに使うためじゃないの」
 佐藤が言った。
「そんなことはないよ。確かにビジネスホテルに泊まるより、半分の経費ですむからねえ。でも掛かった分しか清算しないよ、従業員が十人しかいない小さな会社だから、少しでも経費を節約しなきゃいけないしねえ」
「俺も月に半分ぐらいは出張をするんだけど、その時はビジネスホテルの方がいいよ。だってユースホステルは酒が飲めないしね」
 ちょっと太めの薬屋が、はじめて言葉を発した。
 
 いまこの場に集まっている女三人男五人は、人と話をして、様々な情報を集めることのできるユースホステルが好きだ、と口々に言った。



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2010.01.20 / Top↑
「係長さんは今日も出張で来ているのですか」
 背の低い方のOL嬢が、小さな声で聞いた。
「いやあ、今日はプライベート。でも金沢への出張時はいつもここに泊まっているんだ。だからカウンターの中にいるイマさんとは顔馴染みさ」
 金沢ユースホステルのスタッフで、一般のホテルで言うところの支配人のような立場の今井。通称イマさん。
「係長、また俺の悪口言ってる」
 こちらの会話が少し聞こえたのか、イマさんがニッコリ微笑んで言った。
「別に悪口は言ってないよ、俺がここの常連でイマさんとは顔馴染みだって話していたんだよ」
「係長は月に一度はここへ泊まりに来るねえ」
 イマさんが自分のコーヒーカップを持ってカウンターの中から、夏樹たちがいる椅子席の方へ歩いて来た。
「係長にはねえ、一人も部下がいないんだよ。社長以外はみんな係長なんだって。社長以外に十人の社員がいて、五人が営業で年の順に第一営業係長で、この人は第五営業係長なんだって」
「なぜそんな話しをするんですか、ばらさなくても、いいじゃないですか」
「第五って言うことは、営業マンの中で一番の年下で、つまりは・・・」
 薬屋が笑いをこらえながら、係長を意識して見ないようにして言った。その薬屋の言葉を途中で制して、係長が話しはじめた。
「皆も言わずとも、他の方たちも周知のご様子ですから、この辺でご勘弁くだされ代官様」
 係長は深々と頭を下げた。
「けど面白いねえ、名刺には第五営業係長って書いてあるの?初めて会った人は少しは驚くやろねえ、この若さで第五営業係りの係長なんやから、第何係りまであるんやろなあ、って」
 夏樹も少しおどけて言った。
「ヒゲさんまでそんなことを言って、勘弁してくださいよ」
「じゃあ、他の五人は何係長なのかしら」
 コバヤシが真面目に聞いた。




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2010.01.22 / Top↑
2010/01/21
「ええ、経理係長に、第一出荷係長、第二出荷係長、第三出荷係長、仕入れ係長兼庶務係長の五人。全員女性です。経理係長は社長夫人なんですけどね」
「社長婦人だったら、副社長とか専務とかじゃないんですか」
 背の大きい方のOL嬢が言った。
「小さな会社なんだから、係長で充分って言う人なんですよ。ちなみに社員全員を係長にしたのは、社長婦人の案で、まあ事実上の社長みたいなもので、大きい支持はこの人がするんだよ。で、本当の社長は名前だけで、実は営業課長みたいなものなんだよねえ」
「アットホームな会社ですねえ。面白そうじゃないですか」
 青学が興味津々である。
「でも、給料は安いよ」
「じゃあ、他の会社にいきます。俺は給料が高い会社に行きたいんですよ」
「ほな、大企業に行くしかないなあ、かなり競争が激しいし、入ってからも色々と大変なんとちゃうかあ」
 夏樹が言った。
「あまり大変なところも嫌だなあ」
「青学、そんな都合のいい会社はないよ、そんな所があったら俺が行きたいよ」
 薬屋が少し不機嫌な顔で言った。

 係長と薬屋、青学、佐藤は水割りを飲み干し、少し顔が赤くなっていた。
「イマさん、これのお代わりはないですか」
 佐藤が言った。
「ここはユースホステルです。今日は正月の特別サービスですから、コーヒーならまだありますよ」
「今日の宿泊者は八人だけなんですか。なんか少ないねえ」
 夏樹が食堂の隅から隅までを見渡して、イマさんに聞いた。
「そうですねえ、もう二人いるはずなんだけど、もう寝たかな」
「ほな、明後日も少ないですか、空いていたら泊まりたいんですけど」
「残念ながら明後日も、いっぱい空いているんだ、お待ちしております」
「そしたら予約入れといて下さい」
「ヒゲさんは明日、どこへ行くんですか」
 係長が言った。
「明日は能登のかつら崎ユースホステルに泊まります。さっき予約を入れといたから、ちょっと有名な所なんでしょ」





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2010.01.25 / Top↑
 居心地の良い楽しいときは、時間の過ぎて行くのが早い。もう少しこのままの、ときが続けばよいと思うもの。でもその名残惜しいぐらいが、ちょうど良いのかも知れない。のちの思い出としてよみがえった心に、もう一度あの場所で、あの人たちと過ごしたいなあ、と思う気持ちが強くなるのではないだろうか。


「皆さん、十時半を過ぎました。十一時には消灯をお願いします」
 イマさんが笑顔で皆に聞こえるように、少し大きな声で言った。
「ええ、もうそんな時間なの。今日は人も少ないし、正月だから、もう少し、いいじゃないですか」
 係長がイマさんの背後から両肩を揉み解す仕草をして言った。
「だめですよ、皆さんが消灯するまでは私が寝るわけにはいきません。でも、正月とは言っても、あしたの朝食の準備は、いつもの時間に始まります。その時間に私も起きなければならいのですから、あまり夜更かしはできませんからねえ」
「そう言うこっちゃな、係長はん、寝よ。それがユースホステルなんやから、明日の朝、早うに出かける人もいたはるかも、しれへんしなあ」
 夏樹はコーヒーカップを持って席を立った。
「しゃあないなあ。では皆さん寝ましょうか」
 係長がおどけて言った。
「ちょっと、今のってどこの方言なの」
 薬屋が立ち上がりながら言った。
「係長はんは俺の真似をして、関西弁を喋ったつもりなんやろ。けどなあ、あまりにもお粗末な関西弁やったなあ」
「ばれちゃったら、仕方があるめえ。皆の衆、寝るとしようかあ」
 右手を大きく、ゆっくりと回し、おまけに首も回して歌舞伎の見得を切るような仕草をした。
「いまのも、大変におかしな言葉ですねえ。歌舞伎の真似のつもりでしょうが、完全に酔っ払いのおやじギャグですね。それに面白くないし、へたくそだし」
 そう言いながら青学が、カウンターへ小走りに向かった。
「てめえ、言いたいこと言いやがって。待ちやがれえ」
 係長は青学を追いかけた。





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2010.01.28 / Top↑
「それでは皆さん、お休みなさい」
 夏樹は係長と、青学の二人の鬼ごっこを横目にし、他の皆に挨拶をして、部屋に向かった。
 部屋には誰もいなかった。と言うことは今まで一緒に話をしていた人たちの二人が、この部屋の宿泊者と言うことになる。
「誰なんやろ」
 歯磨きを済ませ、部屋に戻ると係長と青学がいた。
「あんたらここで何をしてんの」
 二人ともここの部屋に寝るのだと言う。そして、全く面識はなく、どちらも一人で金沢へ旅行に来ていた。
「なんや、あんたらと同じ部屋かいなあ」
 わざとらしく、少し嫌な顔をした。
「ちょっと、なんですか今のリアクションは、俺たちって嫌われているんですか」
 係長が夏樹に詰め寄ってきた。
「いやいや、鬼ごっこは終わったんか。あんたらと同じ部屋やったとは、光栄です。楽しいひと時を、おぉきにぃ」

「ところで、明日の予定はどうなってますの」
「明日?俺はねえ、まず兼六園に行って、あとは観光ガイドブックを片手にうろうろして、ここに泊まって、明後日には東京に帰る。その次の日から仕事なんだよねえ」
 係長が俯き加減に言った。
「俺はねえ、兼六園は今日、行って来ました。だから高山線に乗って高山に行きます。そして、高山に泊まる予定なんだけど、泊まるところあるかなあ」
 青学が言った。
「ほな、俺と逆のコースを行くわけやねえ、俺は昨日は名古屋のビジネスホテルに泊まって、高山線で金沢まで来たんや。明日は能登半島の兜って言うところにある、かつら崎ユースホステルまで行きます。さっきも言うたなあ」
「なんで名古屋のビジネスホテルに泊まったの、ユースホステルもあるはずだなあ」
 係長が不思議そうな顔つきて言った。
「そうなんよ、確かにあるんやけど、正月は休みなんやて。しゃあないから駅の観光案内所で聞いたビジネスホテルに泊まったんや」
「ええ、正月に休むユースホステルがあるんですかあ」
 青学が困った顔で言った。



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2010.01.30 / Top↑

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