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「けど、このうどんはどっちかて言うと、関西風やで、美味しくないかあ」
「ヒゲさんの言うとおり。関西風なんだよなあ、美味しいは」
「でも、少し味が濃いみたいやなあ、東西の中間の西より見たいな感じやろか」
「ヒゲさんの話は良くわからないけど、美味しいね」
 ヨッチが丼に残った全部のつゆを飲み干し、テーブルに置いて言った。
「じゃあ俺はこのうどんを食べたら行きますは、残念やけど」
 夏樹は壁に掛けてある時計の針の動きが気になりだした。
「まだ、大丈夫。金沢ユースホステルの夕食に間に合えばいいんだろ、三時の列車に乗ればいいから、ゆっくりしていきなよ」
 ヨッコが微笑みながら言った。せっかく来たのだからもう一日泊まっていけばいいじゃないかと、皆が言ってくれる。とてもありがたく、うれしいことだが、金沢ユースホステルのイマさんともう一度ゆっくりと話しがしたい。後ろ髪を引かれる思いを堪えて、ギリギリ三時の列車に乗ることにした。

 朝食と昼食の兼用としていただいたうどんを食べ終え、再びストーヴの前に皆が集まり、相変わらす他愛のない話で盛り上がっていた。外は午前中と変わりなく、どんよりとした曇り空が広がり、緩やかな風に乗って雪が降っていた。
 いつものことながら、楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。壁に掛けてある時計は二時三十分を過ぎていた。駅までは歩いて二十分はかかる、まとめてある荷物を部屋に取りに行った。そのまま彦さんに挨拶をして玄関に向かった。
「ヒゲさん、まだ三時にならないよ」
「だって歩いて駅までいくのに二十分はかかるさかいに、行きますは」
「大丈夫、五分もあれば駅に着くから」
「そんなことないやろ、これに乗り遅れたら次は四時過ぎまでないから」
「三時だからさ、コーヒーを飲んでからにしたら」
「えっ」






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2010.03.31 / Top↑
「バカなことを言ってんじゃねえよ、なんでテンちゃんごときに、やきもちを妬かなきゃいけないんだよ」
「イトウさん、随分と失礼なことを言うやないですか、ごときとはなんですか」
 テンちゃんのほっぺがぷっと膨れた。
「すまん、ヒゲさんがおかしなことを言うもんだから、つい。悪いことを言ちゃったな、ごめん」
「朝と昼の兼用でうどんができたから、みんな運んで食べようよ」
 厨房の方からシンちゃんが叫んだ。みんなで厨房の方へ向かい、ストーヴの近くのテーブルに運んで、全員でうどんを食べた。
「やっぱり冬はあったかいうどんが一番やなあ」
 テンちゃんが熱々のうどんを箸で摘まみ上げ、大きく息を吹きかけながら言った。
「いやあ、冬はあったかいそばの方が美味いよ」
 タケさんもうどんを箸で摘まみ上げ、大きく息を吹きかけながら言った。
「関東人はそばが好きな人が多いし、関西人はやっぱりうどんが好きやなあ」
「ヒゲさんの言うとおりや、関西はやっぱり、うどんやねえ」
 テンちゃんが言った。
「わたしも、うどんが好きだよ。でも関西のうどんのつゆって味が薄いからさあ、ちょっと物足りないのよねえ」
 ヨッコが口の中に少し残っているうどんを噛みながら言った。
「関東のつゆが濃すぎるんやて、丼の底が見えへんぐらい濃いさかいに、すごくしょっぱいもん」
「テンちゃんは関東のうどんも食べたことがあるんや。俺は東京に行ったことがないさかい、わからへんなあ」
 口いっぱいに入ったうどんを噛みながら夏樹が言った。
「いやあ、関西のうどんの方が味が薄くて、美味しくないよ」
 両手で丼を持ち、つゆを少し啜り、その丼を口からはなしながら言った。




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2010.03.29 / Top↑
 タケさんは夏樹と二人でいた時よりも口数が減った。ヨッコとヨッチの先輩で、ユカリさんという、すごい美人さんが来ると言う話しに動揺していたようだ。夏樹はそのことには触れないことにした。
「ヨッコさんたちってここへは何回目なんですか」
 夏樹が話しを変えた。タケさんは大きく吸い込んだ煙草の煙を、吸った時以上に大きく、長く吐いた。
「私は三回目だけど、ヨッチは五回目だっけ」
「大学の時のユースホステルクラブで始めて来て、二回目は一人で着たし、三回目からはヨッコと一緒だね」
「ほな、もう常連さんやなあ。夏に来てヨットに乗ったこともあるの」
「一回だけ乗せてもらったことがあるわよねえ」
 ヨッチがヨッコに問いかけた。
「面白かったよねえ。ヨッチなんか途中で酔っちゃてさあ、ゲエゲエだったもんねえ」
「ヨッコだって港に戻って来てヨットから降りたらフラフラで、そのまま海に落ちちゃったじゃん」
「なんかとても面白そうやね、おれも夏に来たいなあ。船は苦手やけど、海はええよなあ」
 その後もヨッコとヨッチはかつら崎の良い思い出を語り続けてくれた。タケさんもようやく夏樹と二人でいた時のように、思い出話を聞かせてくれた。

 十一時に近くなったころに、他の人たちも起きてきた。みんなでストーヴを囲みかつら崎の話を中心に語り、笑いが絶えなかった。
「ヒゲさんは何時の汽車に乗るの」
 テンちゃんが言った。
「一時ごろかな、そしたら金沢ユースホステルに六時までには着くと思うんやけど」
「ほな、今度は京都に遊びに行った時に案内して下さいね」
「かまへんよ」
「やっぱり、なんかあるんじゃないのテンちゃん」
「イトウさんもしかして、やきもちを妬いてんはんのとちゃいますか」
 夏樹はイトウの顔を覗き込んだ。他のみんなの視線もイトウに集中した。





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2010.03.26 / Top↑
 タケさんは少し照れくさそうな顔つきになった。
「思いきって三回目の道筋を作ってみるよ。ヒゲさんに勇気をもらったからねえ」
「そんなあ、勇気なんかあげてませんよ」
「いただきました、おうきに、って言うんだろ、こういう時は」
 二人は顔を見合わせて大きな声で笑った。そこへヨッコとヨッチが目を擦りながら食堂にやってきた。すでに十時三十分を過ぎていた。
「おはようございます」
 ヨッコとヨッチが同時に言った。弱々しい声だ。
「おはよう」
「おはようございます」
 タケさんと夏樹が続けて言った。
「なんかいま、大きな笑い声がしてましたけど、こんなに早くから元気ですねえ」
 ヨッコの右目は半分しか開いていないようだ」
「早くはないですよ、もう十時半でっせ」
「もうそんな時間なんですか。静かだし外は雪空でどんよりと暗いから、まだ八時にもなっていないと思っちゃった」
 両方が半分しか開いていなかったヨッチの目が、パッチリと開いた。
「でもここにいる四人以外は誰も起きてきませんねえ」
「正月ですから。ヒゲさん、きょうは泊まらないで金沢に行っちゃうんですか」
「金沢ユースホステルの予約をとってるし、あさってからは仕事やしねえ」
「残念よねえ、きょうねえ、ユカリさんたちが来るのに。いつも三人でここへ来る人たちなんですけどね、わたしたちの大学の先輩なんです」
「その三人ともすごい美人さんなんですよ、ねえタケさん」
「あっあぁぁ、そうだっけ、ヨッコたちの先輩なんだ」
「タケさん、もしかしてさっきの三回目の道筋って・・・」
 タケさんの顔が少し赤くなったように見えた。
「ヒゲさん、その話は後でゆっくりとね」
「なんですかその話しって」
 ヨッコが夏樹に詰め寄った。
「いやあ、何でもありまへんがな」
「なんか怪しいなあ」
 ヨッチがタケさんに詰め寄った。


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2010.03.24 / Top↑
 他に誰も起きてこない少し遅めの朝に、二人だけが朝食も食べずに、かつら崎の話を夏樹は聞いた。そして、タケさんと夏樹とは十歳の年の差があることをタケさんから確認した。
 タケさんは三十歳を過ぎていたが独身だった。タケさんより一歳年上のジュンさんに見習って、かつら崎でいい人とめぐり合えることを期待し、年間に数回はここへ来るのだが、運命の出会いは、まだ叶っていない。
「じゃあ、いままでにいい人やなあって思った人はいたんですか」
「いたんだけど、なぜかここへは一回だけ来て、リピーターとしてまた来る人がいないんだよ。二回目に合ったらアタックしてみようと思うんだけどね。その二回目が運命的だと思うんだよ」
「そんなにうまいこと、いきまっかいなあ。一回だけって、二回目のときにたまたま、タケさんが来てへんかっただけとちゃいますのん。俺みたいな恋愛経験なんかほとんどない若造が言うのも変やけど、一回目の時にええ子やなあと思ったら、二回目への道筋を作っとかなあきまへんがな」
「道筋を作ったら運命的じゃないじゃないか」
「めったにあることや、ないさかいに、運命的なんとちゃいますか。それにその運命的な出逢いが、ほんまにいい恋愛を作ってくれるとは、かぎらへんしねえ」
「それは、そうなんだけどね」
 そう言ってスキー帽を右手で持ち、左手で大きく頭を掻いた。
「いま、ここに泊まっている人の中には、いいなあと思う人はいてないんですか」
「いないよ。でも・・・・・・」
 タケさんは途中まで言いかけて話すのを止め、煙草に火を点けた。
「昨日から泊まっている人の中にはいないんだけど、今日、ここへ来ることになっているんだ」
「ほんまですか」




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2010.03.23 / Top↑

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