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     ~新たな旅への序章~

 五月の連休後の休日は、雨が降らないかぎり何処かへバイクを走らせていた。いつも一人である。飛沢も石田も会社で同期の小田君もそして、高校の同級生たちも、みんな車に乗っているが、原付より大きい排気量のバイクに乗っている奴はいなかった。だから、いつも一台でツーリングに出かけていた。ごく稀に二人で出かけることはあった。後ろに人を乗せて日帰りのツーリングに行くのだ。飛沢を乗せて数回のツーリングに行ったり、当時の彼女を乗せて走ったりもした。
 一度だけ会社の後輩の女の子を乗せた時は、少し危ない思いをした。どうしてもバイクに乗ってみたいという彼女は、小柄で華奢な少し性格もおとなし方だった。彼女にヘルメットをそのまま被せると、前が見えなくなるから、ニットの帽子を被り、その上からヘルメット被らせた。
「ええかあ、右手は俺の腰に回して、左手は後ろの荷台のところにある、その棒を持つんやで」
「はい」
「ほんで、右に曲がる時は右に体を傾けて、左は左にな」
「はい」
「はじめは、ゆっくりと走るさかいな。ちゃんと前が見えてるか」
「なんとか見えてます」
 後輩の目線は夏樹の肩のあたりにあった。
「ほな行くでえ」
 ローギヤーでゆっくりと発進して、すぐにセコンドにギヤーアップしようとしてクラッチを切った、その反動で彼女が被っているヘルメットが夏樹のヘルメットに激突した。それに驚いた彼女は荷台を持っていた左手を、夏樹の腰に回した。そのままバイクを止めた。
「左手でしっかりと荷台を持ってたら俺に当たらへんから」
「はい」
 彼女はそう言って夏樹の腰に廻っていた左手を荷台に戻した。
「ええかあ、行くでえ」
 再びゆっくりとバイクを発進させた。



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2010.09.04 / Top↑
 ギヤーチェンジの反動をできるだけ少なくするために、ゆっくりと加速してアクセルスロットルを戻す前にクラッチを切りギヤーアップをし、ゆっくりとクラッチを繋いだ。彼女の左手は荷台から離れることなくしっかりと握り、前後の反動を吸収しているようだった。一人で走るときなら守ることのない法定速度を守り、時速40キロで進み、順調に走行していたのだが、青信号の十字路をあまり減速することなく右折した時に事件が起きた。右折するためにバイクとともに身体を右に倒した、それに驚いた後輩の彼女は(追記、付き合っていた彼女ではない)左手を夏樹の腰に回すと同時に、身体を左方向へ力を入れ上体を地面に対して垂直にしようとした。夏樹は右へ後ろの彼女は左へ、バイクはバランスを崩し転倒しそうになりながらも、かろうじて停車した。
「すいません、急に右へ倒れそうになったんで、恐くなっちゃて」
「大丈夫、倒れへんから、自転車に乗るときかて、右に曲がる時は、右に少し倒れるやろ、それと一緒やからな」
 その後もスピードは控えめ、カーブや右左折の時もあまりバイクを倒さないように、会社の寮の周辺を時計回りに回り、十分ほどで戻ってきた。
「ありがとうございました。今度はもうちょっと遠くまで乗せてくださいね」
「・・・。うっうん、今度、そのうちな」
 言うまでもなく、二度と乗せることはなかった。

「夏樹、ちょっと頼みがあるんやけど」
 二年先輩の青田が声をかけてきた。青田は今年の春に寮を出てアパートで一人暮らしをはじめた。
「俺のアパートの隣の女の子と、たまたま一緒に酒を飲んだときに、バイクの話になってな、免許は持ってないのやけど、バイクが大好きなんやて」
「へええ」
「ほんで、お前の話をしたら、乗せてもらえへんやろかって、頼みこまれたんや」
「乗せてもらえへんやろかって、その人、免許ないんやろ」
「そやから、お前の後ろに乗せてほしいんやて」
 夏樹の脳裏に先日の後輩の女の子のことが思い出せれた。



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2010.09.07 / Top↑
 先輩の言うことだからと言うわけでもないが、青田の申し出を断る特別な理由はなく、少し気のない返事をして、二週間後の日曜日にツーリングの約束をした。
 当日はまず青田のアパートの部屋を訪ねた。すでに隣室の女性が部屋で待っていた。
「こんにちは。千葉といいます、我が侭なお願いを聞いていただいて、申し訳ないです」
「あっ、どうもこんにちは、夏樹です」
 千葉喜美子。夏樹よりは少し年下のようだ、小柄で少しポッチャリ系の女性だ。もしかして、青田が彼女にしたいと思っているのかも知れないと、ふと感じた。
「まあ、そんな堅苦しい挨拶は抜きにして、夏樹もとりあえずあがって、千葉ちゃんがコーヒーを入れて来てくれたから、一緒に飲もう」
 夏樹は玄関先に二つのヘルメットを置き、バイク用のブーツを脱ぎ、青田の部屋に上がりこんだ。
「夏樹さんは何のバイクに乗ってはるんですか」
「ホンダのXL125。内緒なんやけどエンジンは200ccを積んでるから、馬力は見た目よりあるよ」
「私もバイクの免許が欲しいのやけど、暇がなくて。今ままでも何人かのバイクの後ろに乗せてもらって、ツーリングに出かけたんやけど、みんなバイクは引退、とか何とか言って、車に乗り換えたんや」
「そうなんよ、俺の周りでもバイクに乗ってる奴は、いてないなあ」
「たまたま、隣の青田さんの話を聞いたら、会社の人でバイクに乗ってる人がいるって聞いたから、頼みこんでお願いしたわけです」
「かなり、強引やったけどな」
 青田がコーヒーを入れたカップを夏樹の前に置いた。
「ほな、バイクに乗るのは今日が初めてやないんやね」
「ええ、何回も乗せてもらった」
「じゃあ、乗り方を教えなくてもええんやね」
「任せて、私、乗せてもらうのは自信があるから」
 千葉はそう言うと、にっこりと微笑んだ。



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2010.09.09 / Top↑
 コーヒーを飲み終え、さっそくツーリングに出かけた。
「青田さん行ってきます」
「先輩、ほな行ってきます」
「ところで、どこへ行きますか」
「お任せします。お昼頃にどこかで食事をして、できれば、行きの道を戻ってこない感じで、ぐるっと廻ってくるコースがええなあ」
「車の多いところより、山の方がええかな」
「はい、いいですねえ」
 夏樹の頭の中には京都周辺の地図が浮かんでいた。その地図に一本のコースを描いていた。高校のころに自転車でも何回か走ったコースを走ることにした。バイクで半日ツーリングするにはちょうど良い道のりだろう。
 まずは市街地北部、鞍馬寺を目指す。寺近くに観光客相手の和風の店があった。ここでラーメンを頼み、少し早めの昼を済ませた。この先には昼を食べられるような店が、あまりなかったように思う。
 ラーメンを食べながらふと思った、ここまで来るのに、まるで一人でバイクに乗っているかのような錯覚をする時があった。信号などで停車した時に「あっ、後ろに千葉さんが乗ってはったんや」と気が付くほどに、走行中は後ろに人が乗っていることを忘れるほどにバイクと一体になってくれていた。
『任せて、私は乗せてもらうのは自身があるから』
 この言葉は本当だったのだ。
 鞍馬寺の脇を通り、花背峠を越える。自転車での峠超えは、自転車を降り、押して歩いて登る急勾配の坂道が続く。かなり山深い地ではあるが、峠を越えても京都市である。(統合する前からだ)
 大布施の三叉路を西へ左折し、しばらくすると京北町(現京都市右京区)に入る。山間ではあるが田畑が広がり、勾配もほとんどない道を進む。



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2010.09.12 / Top↑
 信号はほとんどなく、対向車もあまり見かけない、いわゆる田舎の道なのだが、鳥居町の常照皇寺という寺には天然記念物の、九重桜がある。とても大きな枝垂れ桜だ。数年前にNHKの桜を特集した番組で見たように思う。初めてこの満開の桜を見たのは三十年ほど前のこと、現在はどうなっているのだろうか。
 田園風景の緩やかな道路を走り、やがて周山に着く。福井と京都をつなぐ国道162号、通称周山街道を左へ曲がる。ここからはカーブが連続の山道に入り、二つの峠を越えて、京都市内に入る。(現在は統合して、周山も京都市右京区になっている)
 時々急カーブがあり、そのたびに右へ左へとバイクが大きく傾くが、後ろに千葉が乗っていることを忘れてしまいそうになり、つい一人で乗っている時のようにスピードを出しまま、カーブを曲がってしまう。
「あっ、そうか」
 一つ目の峠の頂(いただき)付近に、車が三台ほど止められる空き地があり、そこにバイクを止めて小休止とした。
「ほんまに、乗せてもらうのは上手やねえ、乗せているのを忘れてしまうわ」
「だって、せっかく乗せてもらうんやから、運転する人の負担にならんようにせんとね」
「いやあ、恐れ入りました」
「また、乗せてくださいね。ちょっと厚かましいけど」
「かまへんけど、青田さんはええのんか」
「青田さん?別に何でもないけど、ただのお隣さんやけど」
「あっ、そうなんや」
「・・・ええ。いや、かなんなあ、関係ないから」
「先輩、残念でした」夏樹は心の中でつぶやいた。
 小休止を終え再びバイクを走らせ、そのまま千葉のアパートまで行った。その三ヶ月後に突然、千葉は福井の実家へ帰ったと、青田から聞かされた。


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2010.09.15 / Top↑
 夏樹より二年先輩の青田は少し元気がなかった。彼のアパートの隣人だった千葉が当然、実家へ帰ってしまったのが原因らしい。。父親の具合が良くなく、一人娘の彼女は半ば強引に戻されたようだと、青田に聞かされた。
「先輩、元気を出して、今日の帰りにいつものお好み焼きやで、飲んで行かへんか、先輩のおごりで」
「何で俺が、お前におごるらなあかんねん」
「そやかて、先輩に頼まれたさかいに、千葉さんをバイクに乗せて、ツーリングに行ったんやで」
「彼女のことは言うな」
 青田は大きくため息をついた。やはり青田は千葉に好意を持っていたようだ。
「ごめん、まあ、とにかく行きましょ」
「よし、わかった」
 青田が突然大きな声で言った。
「行こ、俺のおごりや」
「ええ、どこに行くんですか、青田さんのおごりやったら、俺も連れって下さい」
 二人の会話の後ろから、夏樹より二年後輩の野川が割り込んできた。
「お前、人の話を盗み聞きしてたんか」
 青田が行った。
「聞こうと思わんでも聞こえますよ、あんな大きな声で『行こ、俺のおごりや』て言うたら」
「あっそうか、お前以外にも聞こえたやろか」
「たぶん、聞こえてへんと思いますけど」
 青田と野川は小さな声で会話をした。
「夏樹、野川も一緒でもかまへんか」
「ぜんぜん、かましませんで、先輩」
 夏樹も小さな声で話をした。
 結局三人で会社の近くにある、お好み焼き屋に行くことになった。目の前に鉄板が置かれたL字型にカウンター席しかない小さな店だが、家庭的な味が評判で、会社の連中も時々通っているようだ。またここのママさんは飾りっけなく、素ッピンのおばちゃんだけど、豪快な笑いでいつも客を和ませてくれる。会社の寮にいる若い連中の、おかあちゃんみたいな人だ。


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2010.09.17 / Top↑
「こんばんは、おばちゃんビールちょうだい、コップは三つで」
 青田が店に入るとすぐに言った。店には他の客の姿はなかった。
「はい、いらっしゃい、なんやあんたらか、けどこちらさんは初顔やねえ」
「野田、この店初めてか、給料前の金のない時はここに来るなよ、このおばはんに、金がない時はインスタントのラーメンでも食ってしのぐもんやって、怒られるで」
「当たりまえやんか、若い時はちゃんと貯金をして、頻繁に外へビールを飲みにいくもんやない、ましてや給料日の前に金があるわけがないやろ」
「そんなことを言うてるから、儲からえへんねんで、おばちゃん」
「あほなことを言いなや、あんたらが来てくれんかて、商売はやっていけます」
 おばちゃんはビールの栓を抜いて、青田のコップに注いだ。青田は少しコップを傾けて持ち、微笑んだ。
「ところで青ちゃん、寮を出てアパートに住んでんにゃて、もったいないなあ、結婚資金に残しといたらエエのに」
「俺かてもう二十五やで、いつまでも寮にいるわけにはいかんやろ」
「ええ、そうなんですか、二十五になったら寮を出んとあかんのですか」
 野田が少し不安な顔で言った。
「ちゃうちゃう、どうせ青ちゃんは、部屋に女を連れ込むために一人暮らしを始めたんやんやろ」
「おばちゃん、今日はその話は禁句や、ふられたばっかりやねん」
 夏樹が小声でおばちゃんの耳元で言った。
「女にふられたぐらいで、辛気臭いなあ。そしたら今日は青ちゃんのおごりやな」
「青田先輩、ふられたんですか」
「野田、まあええやんか。先輩、まあ飲もう、ね」
「青ちゃん、誰にふられたんや、会社の子か」
「おばちゃんは、真っ直ぐやなあ。もっちょと飲んでからの方が、ええのとちゃうか」
「夏ちゃん、飲んでからやと、余計に辛気臭くなるさかい、早めに喋った方がええねん。青ちゃん、男なんやから、いつまでもくよくよせんと、ほら、うちからのおごりや、飲み」
 おばちゃんはそう言うと、ビールの栓を抜き、青田の前に置いた。


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2010.09.20 / Top↑
 夏樹はおばちゃんの奢りのビールを持ち、青田のグラスに注いだ。
 落ち込んで少し俯(うつむ)いている青田が突然、背筋を伸ばしてグラスを持ちビールを一気に飲み干した。そして、その右隣にいた夏樹を見た。
「そうや、今年の盆休みって五日もあんのやろ」

「びくりしたな、いきなり大きな声を出して何やねんな、落ち込んでると思うて、ビールをサービスしたのに」
「いつまでも、クヨクヨしてたかて、しゃあないやんか、おばはんの奢りのビールを飲んだら、元気が出てきた。女はあいつだけやない、ふられたら次を見つけたらええねん」
「さすが青田先輩、男らしいは」
 野田が大いに喜んだ。
「流行の歌にもあるやろ、『別れたら、次の人・・』ははは・・」
 青田は店中に響き渡りそうな大きな声で歌った。かなり音程は外れている。
「先輩、ちょっとちゃうやろ『別れても、好きな人・・』やろ」
「そんなもん、わかってるわい、夏、ほら飲め」
 そう言うとおばちゃんの奢りのビールを、夏樹のグラスに注ごうとした。
「おまえなあ、全部飲まなビールが入らへんやろ、注ぎ足しは不味く(まずく)なるさかいなあ」
 夏樹はグラスに半分ほど残っていたビールを一気に飲み干した。夏樹のグラスにビールを注ぐと、野田にも同じこと言ってグラスを空にさせ、ビールを注いだ。
「おばはん、ビールもう一本ちょうだい、それとミックスを三つ作ってや、お前ら半そばにするか」
 半そばとは焼きそば用のそばを半分だけお好み焼きに載せ、一緒に焼くオプションだ。モダン焼きとも言うようだ。
「ところで盆休みは五日もあんのやろ」
「そうやねえ、十二日から十六日までやから、五日もあるなあ」
 野田が答えた。
「どっかに行こうかな、俺の源チャリでどこまで行けると思う。夏樹やったらあっちこっち行ってるさかいに、わからへんか」
「青田さん、あのラッタッターでツーリングに行くのか」

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2010.09.23 / Top↑
「そうやあ、普通免許で乗れるのは車と源チャリだけやから、あの『ラッタッター』しか持ってへんしなあ」
 ラッタッターとは三十年ほど前にホンダから販売された原動機付自転車「ロードパル」のことだ。エンジンを掛けるのにペダルを数回踏み込み、ゼンマイを使って始動させる。ソフィア・ローレンが「ラッタッター」と叫ぶテレビコマーシャルがあった。それでこのバイクをロードパルと言う人はいなかった、誰もがラッタッターと言っていたように思う。
「行けんことはないと思うけど、スピードはあんまり出えへんから、交通量の多い方面は辞めといたほうがええのとちゃうか」
「ゆっくりと、旅にでも行こうかなあ」
「先輩、旅に行きたいのやったら、一緒に北海道に行きませんか」
「北海道!!」
 野田のいきなりの発言に青田と夏樹は、ほぼ同時に大きな声で言った。
「そうですよ、北海道ですよ。いま友達と計画中なんですよ」
「けど北海道に行くって、交通費はけっこう高いやろうし、五日間で行ってこれんのかあ」
「夏樹さん、フェリーで行くんですよ。時間は少しかかるけど、お金はあんまりかからへんよ」
「フェリーで行くということは、車で行くのか」
「そうです、向こうでの交通費はガソリン代だけやしね。その代わり北海道には二日しか滞在でけんのですけどね」
「ほな三日間は船の上っちゅことか」
「そやから一緒に行きませんか、船の上は退屈やろうから。三十一時間もいますからねえ、片道ですよ」
「さんじゅういちじかあん!!」
 青田と夏樹はまた同時に大きな声をだした。



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2010.09.25 / Top↑
 青田と夏樹がたびたび大きな声を出すから、おばちゃんが負けずに大きな声を出した。
「あんたら、うるさいなあ、他のお客さんに迷惑やろ」
「何を言うてんの、わしら三人しかいいひんのに」
 青田が皮肉たっぷりに言った。
「とにかく、急に大きな声を出さんといて。ほれ、焼けたで」
 おばちゃんは焼きあがった三枚のお好み焼きにソースを塗り、青海苔とカツオ節を載せそれぞれの前に置いた。
「よし、俺も北海道に行く」
 夏樹がまた大きな声を出した。おばちゃんは無言で夏樹を睨みつけた。
「あっ、おばちゃん御免な。野田、俺も連れて行ってくれへんか、一緒に北海道に行きたい」
「うん、行きましょ」
「先輩も一緒に行こう、ラッタッターで行くのは、ちょっとしんどいと思うけど、野田の車に乗って行ったらええやんか」
「そやなあ、前向きに考えとくは」
 夏樹は北海道へ行くフェリーのことや、北海道での行動を野田に聞いた。野田は五日間の計画を話しはじめた。
「十一日の仕事が終わったらすぐに敦賀の港に向かうんやな」
 夏樹は目の前にあるお好み焼きには手をつけずに、野田の話に夢中になっていた。
「そうです。十三日朝早くに小樽に着きます。ほんで十六日の夜までにはここに帰ってこれますから」
「北海道の二日間でどこへ行くんや、広いからどっかまで行って、次の日に小樽まで帰ってこんとあかんやろ」
「俺は北の端、宗谷岬に行きたいんです」
「宗谷岬か、小樽から何キロあるんや」
「だいたい500キロぐらいかな、けど北海道は道が広いし、信号も少ないからこの辺で500キロ走るよりは楽やと思うけんやけどね」
「500キロか、バイクで500キロはちょっときついかなあ」
「あれ、夏樹はバイクで行くのかあ」
 青田が言った。


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2010.09.28 / Top↑
 青田と野田はお好み焼きを食べながら、ビールを飲んでいた。夏樹だけはいまだにお好み焼きには手を付けず、ビールの入ったコップを持って天井の一点だけを見つめるように見ていたが、その視線を野田に向けた。
「野田、フェリーの予約って終わったんか」
「いや、まだですよ」
「俺の分も頼むな、バイクも料金が取られんのやろ、車と同じなんか」
「車よりはだいぶ安かったと思いますよ。夏樹さんはバイクで行くんですか」
「当たりまえやんか、どうせ行くんやったらバイクで行きたい。あの大きな大地の風を受けながら走りたい。けど一日で500キロはちょっとしんどいから、北海道では別行動かな」
 夏樹はコップに残っていたビールをひと息に飲み干し、ようやくお好み焼きに手を伸ばし食べた。
「先輩、ご馳走さまでした。また、来ましょうね」
 野田と夏樹が青田に礼を言った。
「パチンコで大当たりしたらな」
 お好み焼きを食べ終わり、青田はアパートへ、野田と夏樹は寮へ向かった。

 寮に戻り野田が手に入れた『新日本海フェリー』のパンフレットを見て、二ヶ月後の自分の姿を想像していた。憧れの北海道である。広い大地を走るには今のバイクよりも、ロードタイプのバイクの方が走りやすいのではないかと、今まで以上に思っていた。
「飛沢に電話をして、大学の友達に250ccのロードタイプのバイクを、探してもらわなあかんなあ」
 後日、新しいバイクは意外にもすぐに見つかった。新しいと言っても『スズキGSX250E』の中古車だ。程度はかなりよいと言う。いま乗っているトレールバイクも下取りをしてくれると言うことで、話がまとまった。
「さて北海道の二日間、何処を走ろうか。飛沢もいかへんかなあ、けどバイクを持ってへんしなあ」
 北海道の地図を広げて思いにふけった。
                
                        GSX-250E




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2010.09.30 / Top↑

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