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「兄さん、京都から来たのか。今日、フェリーできたのか?」
「はい、さっき・・・」
「怪我はなかったか」
「はい、大丈夫そうです・・・。直りますかねえ」
「これぐらいなら大丈夫だ、今日すぐにって言うわけにはいかねえけどな、ほら荷物も荷台に乗せて」
「はあ、ありがとうございます」
 軽トラックの助手席に乗せてもらい、ゆっくりと今来た道を北上して行った。五分ほどで小さな自転車屋さんの店の横に軽トラックは入って行き、店の中へ案内された。
「大変だったねえ、今日は暑いから、そのジャンパーを脱いで、とりあえずこれでも食べて」
 そう言って自転車屋の店主の奥さんらしき人が、アイスキャンディーを渡してくれた。自転車屋の棟続きに駄菓子屋のような店があり、その店は奥さんが切り盛りしているようで、その店から持ってきたようだ。
「おぉきに、ありがとうございます」
 いただいたアイスキャンディーの包みを開き、中身を取り出そうとした時、自転車屋の店主が小走りに夏樹の前に戻ってきた。
「来てすぐに慌ただしいんだが、函館のサービス工場で直ぐに来いって言うから、持って行こう」
「ええ、は、はい・・・」
「あんた、まず座って、少し涼んでからにしたら。この人にアイスの一本ぐらい食べさせてからでいいだろ」
「おおう、そうだな。俺にも一本くれよ」
「あいよ」
 そう言って奥さんは夏樹がいただいたアイスキャンディーと同じものを、自転車屋の店主に手渡した。
 今日の気温は何℃ほどあるのか、手に持ったアイスキャンディーは、みるみる融けだし、水滴が地面へ落ち始めた。夏樹より先に自転車屋の店主が食べ終えた。食べ終えると同時に立ちあがり、さあ行こうと言わんばかりに夏樹の様子を伺った。


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2012.08.05 / Top↑
 再び軽トラックの助手席に乗せてもらい、来た道を函館の市内へ向かった。行先はバイクメーカーのサービス工場だ。
「どうも、いつもお世話さまです。所長さん、彼がさっき電話で話したバイクの人です」
「はい、毎度ありがとうさんです。で、バイクは」
「俺のトラックに積んできました。よろしく頼みます」
「あらぁ、結構、曲がっちゃったねえ。ウインカーも割れているし。運転手と相手にけがはなかったの」
「本人はかすり傷程度みたいだし、相手はトラックの後ろだから、けが人もヘコミもなかったようですわ」
強調文「バイク、直りますかあ」
 夏樹がようやく口を開いた。
「大丈夫ですよ。この壊れた部品なら、うちに在庫があるから・・・」
 そう言ってサービス工場の所長は壊れた場所をじっくりと観察した。
フロントフォークは曲がっていないみたいだから、明日の午後には直りますよ。修理代も三万円ぐらいかな。京都ナンバーだもの、旅人には少しサービスしてあげるよ」
 その言葉を聞いてようやく夏樹の心が落ち着いた。頭のてっぺんから肩にかけて、見えないがどんよりと暗い雨雲のような重苦しいものが、まとわり憑いていたのだが、所長の言葉でどこかへ飛んで行ったようだ。
「ああ、よかった。どないなるかと思てました。ほんま、よかった」
「じゃあ、俺はこれで帰ります」
「武田さん(そう、武田自転車店と看板に書いてあった)ありがとうございました。ほんま助かりました」
「いいってことよ、困ったときはお互いさまだ。ここからなら路面電車やバスに乗れば、市内のどこへでも行けるから。今日は函館に泊まってゆっくりとして行けばいいさ」
「はい、おぉきに、ありがとうございました」 
 夏樹は大きく頭を下げて、礼を言った。

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2012.08.10 / Top↑
 夏樹はサービス工場の人にお願いをして人目に付かないところを借り、皮ズボンからジーンズに履き替え、それをバッグに無理やり詰め込み、合皮ジャンパーは手に持った。ライダーブーツはキャンプ用品と一緒にバイクに括り付けておいた。
「じゃあ、明日の今頃には直っていると思いますから」
「はい、よろしくお願いします」
「それじゃ、兄さん、この先は気をつけて旅をしなよ」
「はい、本当にありがとうございました」
 武田さんはにこりと微笑んで軽トラックに乗りこみ、帰って行った。
 まずは函館の駅までバスで行き、ユースホステルガイドを開いて函館のユースホステルを探した。函館駅から路面電車で二十分ほどの湯ノ川温泉に「北星荘ユースホステル」があった。ユースホステルの風呂も温泉らしい。さっそく電話して予約を入れた。名前だけを聞かれ、了解をとったが、なんとなく事務的な対応で少しユースホステルらしくない感じだった。
 カメラだけをバッグからだし、残りの荷物は駅のロッカーに預けて路面電車に乗り、駅でもらった観光案内図を片手に観光に出かけた。函館は江戸時代からの港街、洋館や教会、外国人墓地などがあり異国情緒たっぷりのところだ。海から函館山へ向けての坂道が多く、その道も石畳になっていた。

      教会

           外国人墓地

                      石畳

石畳3

                 石畳2

                         路面電車


 そんな観光地を久々にバイクから離れ、電車に乗ってゆっくりと歩いて周った。
 夏の北海道の夕刻は遅く、陽はまだ高い所にあるようだが、時計を見ると五時を少し過ぎていた。函館駅に戻り荷物を持って今日のユースホステルへ向かった。北海道での最初の夜にどんな人と出会えるか、楽しみである。


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2012.08.15 / Top↑
 北星荘ユースホステルは函館駅から路面電車に乗って二十五分の川湯温泉入口で下車、歩いて二分の所にある。ユースホステルガイドにはそう書いてある。
 建物はかなり古そうで、以前は旅館として使われていたようだ。
「こんにちは」
 受付には少し年配のおじさんが、とても事務的な対応で迎えてくれた。シーツをもらい、言われた部屋に向かった。館内には高校生ぐらいの男子が大勢いてとても賑やかだった。しかし受付で聞いた部屋の方には賑やかな集団はいなかった。部屋にも先客は誰も居なかった。受付近くの賑やかな雰囲気が嘘のように静かな一角だった。
 夕飯の時間になり食堂へ行くと、その周辺は先ほどと同じように賑やかだったが、食堂のテーブルには三人分の食事だけがトレーに載せて置かれていた。
「一般の泊まりは他に二人いるのかなあ」
 ご飯と味噌汁を器に入れてテーブルに戻ったとき、夏樹よりは明らかに年が若い男と女が一人づつ食堂に入って来た。
「こんにちは」
 夏樹が先に声をかけた。
「こんにちは」
 二人がほぼ同時に声をかけてくれた。聞き間違いではないと思うが、男の言葉が訛っていたというより、おぼつかない日本語といった感じだった。
「二人で旅をしたはるんですか」
「いえいえ、たまたまさっき、ここへ来る前に知り合っただけですよ」
 女の方が素早く反応した。
「ボクたち、トモダチです」
 女の方は東京から来た大学生、男の方は台湾から来た留学生で、函館を観光中に男が女に道を聞いたことから、泊まるところが同じであることがわかり、今日の観光地めぐりを一緒に行動することになったと女子大学生が話してくれた。


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2012.08.20 / Top↑
「おれは、京都から来ました。プー太郎です」
「プー・・・?タロウ」
 留学生はとても不思議な思いで夏樹に聞き返した。
「プー太郎、無職って言うこと、仕事を辞めて旅をしてますねん」
「ヒゲさんはどんな方法でここへ辿り着いたのですか」
 女子大学生が微笑んだ。
「そう、京都からバイクで日本海側を走り、今日、函館に着いたんですわ」
「でも、バイクは?裏の方に駐車場があるのですか」
「いやあ、実は函館港にフェリーで到着した途端にトラックにぶつかってしもうて、いま修理中なんですわ」
「あらあ、大変でしたね、ケガは無かったのですか」
「大丈夫、この通り」
 そう言うと夏樹は両腕を大きく回して見せた。
「バイクは、スグに、ナオリマスカ」
「大丈夫、明日の午後には直るみたいやから」
「ヤカラ・・・?」
「日本語、難しい、ですか?私の関西弁はもっと難しいですか?」
「台湾も漢字をツカイマス、漢字の意味はダイタイ同じ、でも言葉はゼンゼン、チガイますね。ダカラ、日本語、ちょっと難しい」
 留学生は微笑みながらゆっくりと話した。
「私は中国語をちょっとだけ知っています。イー、リャン、サン、スー」
「イマノ、ちょっと違います、イー、アル、サン、スーが正シイデス」
「ええ、そうなん、麻雀ではそう言うって教わったけどなあ。ほな、トン、ナン、シャー、ペーも違うのかなあ」
「今のはダイジョウブ、発音はヘタですね」
「あんたも、日本語の発音、下手です」
 ほんの少し会話の間があったが、三人がほぼ同時に大きな声で笑った。
「ところで、明日はどうしはるんですか」
 夏樹は女子大学生に聞いた。
「今日は五稜郭にしか行ってないので、明日は電車に乗って公会堂とか,教会とかに行って見ようかと」
「そのへんは今日、行って来た辺りかなあ?五稜郭はどうでした」
 時々、留学生も話に加わりながら情報交換をした。

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2012.08.24 / Top↑
 女子大学生と台湾の留学生と夏樹の三人意外に、二、三十人の高校生ぐらいの男子が,他の広い部屋で何となく騒いでいる。二人の先生らしき人物の姿も見えていた。
「あっちの団体さんはなんなんやろねえ」
 夏樹が女子大学生に聞いた。
「あの子達は高校のバレー部で、明日何かの大会が函館であるらしいの」
高校のバレー部なんや、それででかい奴ばっかりなんや」
「レシーブ、トス、アタックのバレーデスカ」
「そうそう、ピチピチのタイツを履いてクルクル回るのとは違うと思うで」
 女子大学生には少しうけたようだが、留学生は不思議そうな顔をしていた。
「あなたは、いつ日本に来たのですか」
「今年の四月から東京の大学にキマシタ。日本の大学の夏休みはナガイので、イロイロナ所に、行ってミヨウと思いました」
「ほんで、今は北海道に来たんやね」
「ソウ、北から順番に。ソシテ、明日は彼女と函館観光をシヨウト思います」
「えっ、明日も・・・」
 女子大学生の表情が、一瞬、変わったように見えた。
「ヒゲさんも一緒に行きませんか、大勢の方が面白いでしょ・・・」
「ええよ、どうせバイクは午後にならんと乗られへんし、わいわいと回った方がおもろいしなあ」
 この後も台湾の話や女子大学生の東京でのバイトの話、などなど会話は時間の過ぎるのを忘れさせてくれる。いつの間にか隣の部屋でミーティングをしていた高校生達の姿は見えなくなり、灯りが消えていた。年配のペアレントさんがそろそろ消灯にしようかと三人が話し込んでいた部屋に入ってきた。
「ほな、またあした」
「おやすみなさい」
「オヤスミ、ナサイ」
 部屋に戻ったが留学生は別の部屋にいるようで、夏樹は広い部屋に一人だった。


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2012.08.28 / Top↑

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