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 キャンプ場に演歌のメロディーが響き渡っていたが、しばらくしてその音は聞こえてはくるが、耳障りで大きな音ではなくなった。
「一人のおばちゃんはちょっと不機嫌やったけど、おっちゃんらがすぐに「ごめんね」って音を下げてくれたから。まあ、あれぐらいのボリュームやったらBGMにちょうどええのとちゃうか」
 関西弁の男が交渉から戻って来た。
「そうだね、皆のキャンプ場だし、あの人たちは地元の敬老会の人たちだって言っていたから、そんなに遅くまではいないと思うよ」
 関西弁の男と一緒に行った男が少し送れて戻ってきた。再び焚き木を中心に輪になって宴会が始まった。
「どうぞ、一杯飲んでくださいよ、こうやって知り合うことができたんだから、俺の酒も飲んで下さい」
 札幌から自転車で来た大学生がビンに入ったウイスキーを差し出した。
「あれ、これ角瓶やんか。こんなビンに入ったウイスキーを積んできたんかぁ」
 夏樹のステンレスカップに勢いよく注ぎ、カップに八分目ほどの量のウイスキーが満たされた。
「おいおい、こんなにギョウサンは飲めんへんでぇ」
「大丈夫ですって、飲み終えたらテントに戻って寝るだけでしょ、たくさん飲んでくださいよ。僕、初めて一人でテントを積んで旅にきて、始めてのキャンプでこんなに多くの人と出会えて、感激しているんです。だからせめてもの感謝の気持ちです、これぐらいのことしかできませんが、飲んでください」
 大学生は満面の笑みを浮かべ、角瓶を持って輪になっている皆に振舞って廻った。
 カップに入っているウイスキーの半分を空のコッヘルに移し、カップからあふれるほどの水を入れ、アルコールの濃度を下げてゆっくりと飲んだ。そして、旅の話に夢中になっていた。いつの間にかあたりは真っ暗になり、BGMの演歌も聞こえなくなっていた。コッヘルにはストレートのウイスキーが残っているのだが、夏樹の発する声の呂律が少しずつおかしくなっていた。


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2012.10.04 / Top↑
「ちょっと、髭の兄さん寝ているのか」
「あっ、寝てたか。ちょっと酔っ払ったみたいやなあ。このウイスキーは濃いわぁ」
 コッヘルに残っていたウイスキーもカップに戻し、さらにカップからあふれるほどの水を注ぎ足し、角瓶の水割りの二杯目を作った。半分も飲まないうちに座ったまま、うたた寝をしていたようだ。
「いま、何時ですか・・・」
 夏樹は眠い目をこすり、隣にいた男に聞いた。
「まだ八時半だよ」
「けど、もうあきませんは。ちょっと飲みすぎてどうにも、あきませんは。すんません、あと、寝ます・・・」
 水割りの残りを一気に飲み干し、コッヘルとカップなどを両手に持って立ち上がった。そのときに少し足元がおぼつかなくなっていた。
「おっと、だいぶ酔うたみたいなやなぁ。学生さん、美味しいウイスキーを、ごっつぉうさん。それでは皆さん、お休みなさい。おぉきにぃ、ありがとうございました」
「はあい、おやすみなさい」
 そう言って少し左右によろめきながらテントへと戻った。テントの前にカップなどをそのまま置き、テントの中に入った。あらかじめ広げておいた寝袋の上に、両手を横へ大きく広げ仰向けになって上を見た。焚き木の灯りがわずかにテントまで届き、テントの天辺の三角部分がほのかに確認できる。しかし、その三角部分がぐるぐると廻っていたことだけを良く覚えているが、いつの前にか寝てしまい気がついたときにはテントの外は明るくなり、陽が登っていた。

大沼キャンプ場

           大沼

                      大沼から駒ケ岳


 北海道三日目。この日も朝から快晴。
 昨日、このキャンプ場へ来たときには十数台のバイクが各テントの近くに停められていたのだが、夏樹が目を覚ましてテントの外に出たときには、夏樹のバイク以外に二台と自転車が一台しかなかった。他のバイクはテントを張ったまま、まだ夜が明ける前に函館の市場へ行ったのだろう。出かけるバイクのエンジン音にも気がつかないほど酔っ払って爆睡していたようだ。

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2012.10.07 / Top↑
 キャンプ場での朝食は、いつもどおりに紅茶と五個入りミニアンパンですませる。
「おはようございます」
「おはようございます。きのうはウイスキーをぎょうさんいただいて、おぉきにぃ。自分もだいぶ酔うてた見たいやけど、大丈夫ですか」
 昨夜は気がつかなかったが、角瓶を振舞ってくれた大学生がすぐ近くにテントを張っていたようだ。
「ちょっと、まだ頭ぼやっとしています。髭さんこそ大丈夫でしたか、ふらふらしながらテントまで戻られたみたいでしたけど・・・」
「いやあ、あのままバタンキュウで仰向けになったら、テントがグルグルと廻ってましたわ」
「皆さん函館の市に買出しに行かれたみたいですねえ」
「いつまでここに居座らはんのやろなあ。自分は何処まで行かはるの」
「いやあ、もう札幌へ帰るんですよ。明日から校外ゼミがありまして・・・」
「ゼミってセミの親戚ですか」
「明日の日本経済について、企業の重役さんが特別に授業をして下さるのです」
「へえ、俺は高校が最終学歴やから、大学のことは分からんのやけど、あなたは経済学部なんやね」
「そうです。将来は商社に就職して世界を駆け回るのが夢なんです」
「なんか、すごいなあ。俺もこないだまで居た会社の専務に、世界を見て来い、って言われたんやけどな、俺はその前に日本が見たいんです!なんて啖呵きったんやけどな、ほんまは英語が苦手やから外国に行くのが怖いねん」
「そうですねえ、日本の英語教育は文法先行で会話は教えてくれないですからねえ」
 世界を駆け回る夢を持っている青年が別世界の人のように思えてきたが、昨夜の酒飲み状況を思い出すと、別世界ではなく、同じ人間なのだなと思えてくる。
「髭さんは何処へ行かれるのですか」
「小樽の方へ行ってみようかな、ほんでそこから北へ行って、最北端の稚内に向かってみようか・・・」
「じゃあ、道内一周ですか」
「一周にはこだわってないねん、牧場でバイトさせてもらうのも、ええかもなあ」



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2012.10.11 / Top↑
 アリスファームのことを大学生に少し話をして、道順を教えてもらった。
「とても良いところですよ。気をつけて行ってくださいね」
「おぉきにぃ、自分も気をつけて帰ってください」
 夏樹と大学生は握手をして別れ、夏樹が先に出発した。
 大沼を出てアリスファームへ向かうために国道五号線を北上する。森町からは太平洋の海岸沿いに進む。晴れているのだがとても寒い。合皮のジャンパーに穴のあいた皮ズボンを履いていても寒い。その寒さに耐えられずジャンパーの下にバスタオルを広げて入れたのだが、まったく寒さをしのげるようにはならなかった。六月だというのにこの体感温度は想定外の寒さだった。さらに太平洋から突発的に強風が夏樹を襲ってくる。寒さと突風にハンドルを取られないようにするため身体全体に力が入り、肩から背中、腰に痛みが走った。
 森から長万部までのおよそ六十五キロメートルの距離は右手に太平洋が続く。天気は快晴なのだが体感温度はかなり低く、気分は最悪だった。
 長万部から左折して内陸へ入って行くと、本州ではほとんど見ることができないような真っ直ぐの道に出会えた。すこし感動してカメラを取り出した。

      真っ直ぐな道1

                真っ直ぐな道2

 時々まっすぐの道を六十キロメートルほど行くとニセコに着く。当時としては珍しいカタカナの地名として記憶に残っていた。それと鉄道マニアとしては遠い昔、蒸気機関車が走っていたころに急行ニセコ号が走っていたことも覚えている。
 ニセコ駅では入場券がほしかったのだが、当時は委託駅になっていて購入がかなわず、仕方なくこの駅から次の駅までの切符を買い、倶知安へ向かった。

                ニセコ駅
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2012.10.16 / Top↑
 北海道の地名は読みが難しいものが多い。もともとはアイヌの人たちが呼んでいた地名に無理やり漢字を充てたものが多いと聞いた。長万部(おしゃまんべ)倶知安(くっちゃん)などはテレビなどでよく使われているから読めるのだが、これから北海道内各地を走って行くと様々な読みの難しい地名に出会うこととなる。
その倶知安で昼飯にした。牛丼屋を見つけ久々に肉を食べた。
 国道五号線をさらに北上して仁木町から右の方へ向かい赤井川村に入ったところにアリスファームはあった。農業と牧畜による羊毛から作られる衣類、家具製作など自給自足による集団生活。偶然見つけた本にアリスファームのことが載っていた。色々な思いが重なりながら一念発起して会社勤めを辞めたころに、もともと興味があった田舎暮らし、と言うより脱都会の生活を模索していた。そんなときにアリスファームのことを書いた本に出会った。はじめは飛騨の山奥で田園生活が始まったとあるが、十年後に北海道のこの地へ移ったようだ。夏樹がここへ来た年の二年前だ。そこで短期間の研修を飛び込みの電話申し込みをしたのだが、希望者が多く夏樹のように短期間の希望には答えられないとの返答だった。それでも近々に北海道へ向かうことを話すと、見学に寄り道して来ないかと言ってくれた。

               アリスファーム


 広々とした田園地帯に、アーリーアメリカンの白い建物が建っていた。一般の人たちも見学できる観光地になっていた。電話連絡した者だと告げると担当の人が作業場の奥の方まで案内してくれた。
『これじゃあ俺みたいな中途半端な気持ちでは世話になるわけには、いかへんなあ』
 当たり前と言えば当たり前なのだが、現場で目の当たりにして実感した。
「どうもありがとうございました。色々と勉強になりました」
 国道五号線に戻り余市方面へすこし走ったところでバイクを停め、地図を開いた。
「さて、これからどうしようかなあ。余市からすぐのところに小樽があるなあ。んん、小樽にに行ったら必ず寄ってほしいところがあるって・・・誰かが言うてたなあぁ」




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2012.10.19 / Top↑
 なぜそうなったかを語ると長くなるのでそこは省くが、京都にいたころに職場のちょっとした関係から、フランス語の翻訳などの仕事している方と親しくしていただいていた。東京生まれのその人は今も京都にお住まいなのだが、その人の親しい方が小樽にいらっしゃるから、北海道に行ったら必ず寄って来いと言われていたことを思い出した。
「もしもし、夏樹です。今、小樽に向かっているのですが・・・」
「おっ、そうなの、じゃあ彼のところに寄って行ってね。今から電話をしておくからさ」
「本当にお邪魔してもええのですか・・・」
「いいよ、前にも君の事を話したら楽しみにしているからって、何も遠慮なんかしなくていいよ」
 そう言って小樽のその方の住所と、だいたいの場所と電話番号を教えてもらい、さっそくその方の家に向かった。
 小樽市内の駅に近いところで、西洋アンティークなどを扱うお店だからすぐに分かるはずだと聞いた。
「こんにちはぁ・・・」
「はい、いらっしゃ・・・・、あっ、夏樹君だね」
「はい、そうです。石垣さんですか、大田さんから電話がありましたでしょうか」
「ようこそ小樽へ、よく来たね。さあ、まず休んで、いまコーヒーでも入れるから」
「はい、おぉきに、おじゃまします」
 店の置くに招かれ、洋風の小さなテーブルを囲んで椅子に座り、夏樹が大田さんと知り合った経緯や、なぜ北海道に来たのか、しばらくのあいだ質問攻めのように色々と聞かれたが、口癖のように若いといいよねえ、若いからなあと呟くように言っていたことが耳に残っている。
「ところで、今日の宿は決まっているのかい」
「いや、まだです。ユースホステルに連絡しようかと思ってます」
「と言うことは、できるだけ安くしたいんでしょ」
「はあ」
「いい民宿があるんだよ、ちょっとまっていてね電話してくるから」
 そう言うと石垣さんはさらに店の奥に入っていった。
「今日、泊まれるって。夕飯は一緒に食べに行こうよ、だから朝食だけを頼んでおいたから」
「えっ、はあ、おぉきに、ありがとうございます」
 夏樹は一言も喋るひまもなく、ぽんぽんと話が決まってしまった。


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2012.10.22 / Top↑
 民宿へは夕食後の受付でも良いからと、荷物を店に置かせてもらいバイクも店の前に停め、少し早めの夕食に出かけた。石垣の奥さんも一緒だった。
「何がいいかなあ。やっぱり小樽と言えば魚だよなあ、小樽の港に上がった魚を刺し身にしたら日本一、いや世界一だから」
「そらそうだ、魚を生で食べるのは日本ぐらいだもの」
 石垣の奥さんが突っ込みをいれた。
「じゃあ寿司を食べに行こう」
「えっ、寿司ですか・・」
「寿司はきらいかい」
「好きです。けど・・・」
「じゃあ、いいじゃん。遠慮なんかするなよ、大田の友達は俺の友達だ。なっ」
 石垣は夏樹の左側から右の肩に手を回し、肩を組むような仕草をして二度、ポンポンとたたいた。
 石垣の店から歩いて十分ほどのところに石垣たち夫婦がよく行く寿司屋があった。この店には大将が一人で切り盛りしていて、カウンターしかない。寿司屋のカウンターで、目の前で寿司を握ってもらい食べたのは、後にも先にもこの時だけだ。
「親しくなった祝いにビールで乾杯、といきたいところだが、この寿司屋には酒が一滴も置いていないんだよ、なっケンちゃん・・・」
 石垣は大将に目をむけ、少し恨めしそうな顔をした。
「イシ、そんな目で見るなよ。何回も同じことを言わせるなって、俺の寿司はな・・・」
「わかってるって」
 大将の言葉を遮るように石垣が言った。
「寿司を食べ終わったら別の店で飲むから。俺たちの他に予約が入っていないなら、一緒に飲みに行こうよ」
「俺の店だって忙しい時もあるんだよ。残念ながら」
 石垣と大将は幼馴染で、いわゆる腐れ縁だと大将は言っていた。その大将のこだわりが店には酒を置かないことだと言う。酒を飲みながらでは本当の寿司の味が解らなくなるからだ。新鮮な良いネタをしっかりと味わって欲しいから、酒類は一切置かない。握ってすぐに食べられるように、店の造りもカウンターだけ、大将の職人気質なこだわりだ。


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2012.10.27 / Top↑

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