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 北時計の内部は広々とした空間で、一般住宅に見られる平らな天井がなく、切妻屋根の形がそのまま見える。二階建てほどの高さがあるのだが、この建物は平屋だ。補強のための梁なども一般住宅では天井と屋根の間に隠れて見えないが、ここでは丸太作りのそれらが、あちらこちらに見える。当時はログハウスと言う建物は、あまり知られてはいなかったように思う。夏樹も始めて見た建物だった。
 喫茶店でコーヒーを注文して飲むのは、とても久しぶりのように思う。破れた皮のライダーパンツに安物の薄汚れた合皮ジャンパーを着て入ってきた夏樹にも、若いアルバイトの女の子は笑顔で注文を聞いてくれた。
 少し待つと先ほどの女の子がコーヒーを持ってきてくれた。
「どうも、おぉきにぃ。ところで、ここでは観光案内もしてもらえるって聞いてきたんですけど、案内図とか、あるんやったら、ほしいんですけど・・・」
「はい、ちょっと、お待ちください、いま持ってきますね」
 笑顔でそう言うと、奥の方へ行き、すぐに戻ってきた。
「どうぞ、ちょっと荷物になりますけど、良かったら持って行って下さい」
 そう言ってコーヒーカップの置かれたテーブルに置いた。一番上には富良野の駅でもらったものと同じ観光案内図が一枚、その下には厚さ一センチほどの電話帳のような本が二冊あった。全道の市町村の面積や人口、特産物、観光地、宿泊施設などを紹介している。北編と南編があり、北海道庁が発行している。
「えっ、ほんまに、もらってもええのですか」
「どうぞ。バイクでいらしているから、ちょっと邪魔になるかも知れませんけど」
「いやぁ、だいじょうぶです。おぉきに、ありがとうございます」
 この先、色々と参考にさせてもらったが、残念ながら現在は行方不明になってしまた。




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2013.02.07 / Top↑
 久々に美味しいいコーヒーを味わい終え、電話帳のような全道案内本を小脇に抱え、グローブの入ったヘンルメットを反対の手に持ち、北時計をあとにした。
 相変わらず空はどんよりと曇り、いつ雨が降ってきてもおかしくはなかった。北時計でもらった観光案内図に載っていた、「北の国から」のロケ地である麓郷へ向かうことにした。
 北時計を出てすぐの道路沿いに線路が見えてきた。根室本線の線路のようだ。この辺りはすぐ近くに山や、高い建物がなく、どこまでも見渡せる。そんな風景の中を、どこまでも真っ直ぐの線路が伸びている。夏樹の頭の中は「線路は続くよ、どこまでも・・・」の歌詞が流れていた。憧れの北海道に、いま自分がいることの感動を超え、北海道らしさのど真中に置かれていることに浸り、酔っているような感覚だった。こんな味わったことのない感覚がしばらく続くこととなった。

               根室本線

 国道38号線を五キロほど南へ行くと、左へ麓郷と言う看板がみえてきた。深さがあまりない川沿いを少し登って行く。

               麓郷周辺

 しばらく走ると視界が開け、今までに見たことのないような風景が現われた。なだらかな丘陵地帯に作物が植えられた畑がどこまでも続き、360度ぐるりと見回しても大きな建物はなく、空は曇り空なのだが、感動の連続だった。思わずカメラを取り出しシャッターを押し続けようとしたのだが、数枚を写してフィルムがなくなってしまった。

          麓郷2

               麓郷

 急遽、富良野に泊まり、明日もここへ写真を写しに来ることを思いついた。たしか富良野のユースホステルは良いところだから、泊まってみる価値があると、どこかで誰かに聞いたような気がする。さっそくガイドブックを開き電話予約をするために探した。富良野駅から十分ほどのところに「富良野ホワイトユースホステル」がある、すぐに電話ボックスを見つけ予約を入れた。ユースホステルは空いてさえいれば、当日の午後でも泊めてもらえる。気ままな旅には欠かせない宿だ。なんといっても料金が安い、二食付で三千円からおつりが来るときがあるのだから。


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2013.02.14 / Top↑
 北の国からのロケ地には数組の観光客が来ていた。バイクで訪れているのは夏樹だけで、他の人たちはみな車で来ているようだ。
「こんにちは、京都から来たはるんですか」
 ヘルメットを被ろうとしたときに、バイクのナンバープレートを見て、ひとりの男の人が声をかけてきた。関西弁だった。
「はい、あれ、関西の人ですか」
「はあ、大阪からですねん。新婚旅行で北海道に来てまして」
「へえ、新婚旅行ですか。いいですねえ。おれは一人旅です」
「私もねえ、学生のころに一人で北海道旅行をしたんよ」
 突然,新婚のお相手であろう女の人が男の人の後ろから話してきた。
「大阪からの周遊券を買って、有効期限の二週間で北海道を廻ったなあ」
「そうなんや、俺、知らんかったなあ」
「そやから新婚旅行は北海道にしたんよ」
 そう言うと女の人は男の人の腕を握り、身体を引き寄せた。
「おいおい、彼が困ってはるやないか。すみませんねえ」
 新婚さんはとても仲が良く、夏樹の存在を忘れていたような振る舞いだった。
「あっ、すんません。一人旅って言うてはったけど、どれぐらいの予定なんですか」
 咄嗟に女の人は男の人から少し離れ、夏樹に話かけた。
「北海道には一ヶ月ぐらいですかねえ・・・」
「一ヶ月もいたはるんですか、すごいなあ・・・」
「北海道にはって、他にもいかはるんですか」
 男の人が不思議そうに聞いた。
「はあ、日本中を廻って見ようと思てます」
「すごいなあ」
「仕事は、そんなに長いこと休めるんですか」
「辞めました。プー太郎です」
 夏樹は右手で頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。
「ええなあ、私もそんなん、しといたらよかった」
「まあ、もう少し歳をとってから、そう思わんようにせんとあかんなあって、ほんで思い切って仕事を辞めて、北海道に来たんですよ」
 久々に関西弁を聞き、久々に思いっきり関西弁を話したような気がする。旅での出会いは面白い。
「もしかして、今日の泊まりはキャンプですか、それとも何処かの宿に・・・」
 バイクの後ろに積んだ大きな荷物を見て女の人が言った。
「富良野ホワイトユースホステルにさっき予約をしときました」
「そこに私も泊まったんよ。一人旅のときに。ええとこやったよぅ」
「それは、楽しみやなぁ」


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2013.02.21 / Top↑
 大阪から来た新婚さんは、レンタカー借り一週間かけて北海道を廻り、今日は富良野のホテル、明日は札幌のホテルに泊まり、その次の日に飛行機で大阪へ帰るのだと言っていた。
「思いっきり、北海道を楽しんでくださいね」
 女の人が言った。
「はい」
「きぃつけて、走ってくださいね。バイクは倒れると怪我をしますから」
 男の人が言った。
「はい、おぉきにぃ」
「あほやなあ、バイクに乗ってて、倒れたら怪我をすんのは、当たり前やんか・・・」
「えらいすんまへんなあ」
「あのう、ここで夫婦漫才をせんでもええのとちゃいますか・・・」
 三人で大きな声を出して笑った。

 富良野ホワイトユースホステルは、富良野スキー場のすぐ近く、ペンション街の一画にあり、ペンションのよう建物だった。現在は富良アルパインビジターセンターと言う宿泊施設に変わったようだ。しかし、一人で泊まりに行くとユースホステルのように二段ベッド男女別相部屋に泊めてくれる。料金も格安のようだ。
 数台のバイクが建物の前に並べて置かれていた。その列の端に夏樹のバイクを停め、荷物を降ろして玄関に向かった。
「お帰りなさい」
 受付の中から一人の男が言った。
「ただいまあ。さっき電話した夏樹です」
「なんか、荷物が多いねえ。バイクで来る人はみんな、荷物が多いねえ」
「テントなんかが入ってますから」
「キャンプもするんだ。はい、これに必要事項を書いてください。それと、会員さんですか」
「はい」
「じゃあ、会員証を出してくださいね」
 ユースホステルでのいつものやり取りが交わされた。
「なんだか、人が多いですねえ。昨日のユースホステルは二人だったから・・・」
「でも二十人ぐらいですよ。ドラマの影響で人気が出てきましたからねえ」
「北の国からですか、残念ながら俺は見てへんのよねえ」
 ビデオデッキもまだまだ一般には普及していないころの時代、リアルタイムの放送を見逃せば、再放送を待つしかなく、その再放送は午後、昼ドラの時間帯の次に放送されることが多く、一般社会人がテレビに向かえる時間帯ではない。数十年、十数年先に「なつかしのテレビシリーズ」みたいな番組でようやく見ることができた。




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2013.02.28 / Top↑

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