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 宿泊定員四十人。ユースホステルとしては規模が小さく、二十人の宿泊者がいると言うことは、宿泊率五割、食堂などの共有スペースもあまり大きくない。そこに二十人からの人が行き交うと、とても賑やかになる。
 今までのユースホステルでは、夏樹もどちらかと言えば年長のほうだった。大学生を中心にした年齢層が多かった。ところが、どう見ても夏樹の干支よりも二周りは年上で、さらにネクタイをしている人がいるのだ。その人が夏樹に話しかけてきた。
「どちらから、いらしたのですか」
「はっ、はい、京都からです」
「私は札幌なんですけどね、こんなおじさんが、こんなところに居るなんて、おかしいでしょ。あっ、ネクタイだけでも取らないとね」
 そう言って慌ててネクタイをはずし、細かくたたんでズボンのポケットにしまった。
「出張とかで来たはるんですか」
「ええ、百科事典の訪問販売をね、北海道中を廻っています。個人営業ですからね、経費を安くするためにはユースホステルが一番いいんですよ。それに若い人たちと話ができるので、楽しいですからね」
 ニコニコと話をしてくれた。
「内藤さんここに居らしたんですか。さっき聞かれた住所なんですがね・・・」
 今度は夏樹の干支より一回りほど年上の男の人が、地図を持って来た。丸刈りで顔中にヒゲを蓄え、ここのペアレントさんか、それともと山小屋の管理人か、といった風貌だった。
「明日は帯広に行くのだけれど、初めての地域なので場所が良く分からなくて・・・。この人ね、さすらいの旅人なんですよ」
「橋本といいます。夢は小笠原に定住なんです」
「はあ、小笠原ですか、行ってみたいなあ・・・」
 この二人とはこの日、ここで初めて会った人たちなのだ。


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2013.03.07 / Top↑
 帯広の地図を広げた橋本は小笠原に定住し、ユースホステルのような民宿をはじめたいと笑顔で夏樹に話してくれた。
「小笠原って船とか飛行機で行くんでしょ」
「飛行機は飛んでいないのですよ。飛行場がないので」
「じゃあ、船だけやったら、行き来は大変ですねえ」
「ええ、30時間ほどかかるのかな。でも、東京都なんですよ。そこがなんとも、いいところでもあるのですがね」
 橋本はずっと笑顔で話してくれた。
「その続きは食事をしながらにしませんか、夕食の時間ですよ」
 内藤が橋本と夏樹に声をかけた。
 この日の夕食はユースホステルとしては豪華な食事だった。(残念ながら詳細は覚えていない)
「旅の楽しみは色々ありますがね、私はこれが一番の楽しみなんですよ」
 内藤が箸に挟んだ肉を持ち上げ笑顔で話した。
「なるほど。ここの食事はユースホステルとしては、けっこういいものですよね。久しぶりにこんな肉を食べたように思いますねえ」
 夏樹は肉片を口に運んだ。
「北海道は食の宝庫のようなところで、全てが海に囲まれていますから、沿岸地域では海産物が豊富ですし、内陸に入れば農畜産業がどこへ行っても盛んで、美味しいものが本州よりも安く、いっぱい食べることができますからね」
 橋本も肉片を口に運んだ。
「ホテルや旅館に泊まらなくても、美味しいものが食べられるユースホステルや、ユースホステルのような民宿がありますから、ええっと・・・、あなたの名前を聞いませんでしたね」
 内藤が夏樹を見て言った。
「あっ、すみません、夏樹と言います」
「夏樹さんはこの先、しばらく北海道を廻るのでしょ」
「はい、一ヶ月は居る予定です」
「じゃあ常呂町の『船長の家』には是非、行ってください。ユースホステルのような民宿なのですが、食事が最高なのですよ」
 内藤の顔が満面の笑みになった。

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2013.03.15 / Top↑
「船長の家なら僕も行きましたよ、ユースホステルより少し高いけれど食事は最高ですよ。なんと言っても朝の漁に連れて行ってくれるのです。そして採れたての魚やホタテを食べだせてもらいました。もう、言葉にできないぐらい、美味しかったなあ」
 橋本も満面の笑みを作り、話してくれた。
「あっ、それとねえ、霧多布岬の近くに『きりたっぷ里』と言う民宿があるんだよ。船長の家で修行したようなんだ。そこのオーナーが面白い人でねえ、思いっきり寿司を食べさせてくれるんだ」
「へえ、北海道には本州にはないような宿が色々とあるんですねえ。俺も、小樽の『ぽんぽん船』に泊まったんですけどね、古い民家をそのまま民宿にしたところですけど、縁側で食べる朝食が最高でしたよ」
 夏樹も旅情報を話し始めた。
「僕も行きましたよ『ぽんぽん船』あそこのオーナーも口数は多くないけれど、面白い人ですねえ。あの人、僕は好きだなあ・・・、あっ、いやぁ人間としてですよ」
 橋本が何を思ったか、慌てて弁解した。その様子を見て内藤と夏樹が大笑いをした。
「お二人とも、旅のプロですね。あっちこっちに行かれたようですしねえ」
「私はね仕事柄北海道中を廻ってますから。でもねえ北海道かから出たのは一回だけなんですよ。妻と出かけた新婚旅行で九州に行きましてねえ、冬に暖かい所に行ってみたいってことになりまして、札幌で一番寒くて雪の日が多い二月に、五日間で九州一周をしました」
「二月の北海道って寒いんでしょうねえ・・・」
「そうですねえ、毎日の最高気温も氷点下が続きますし、雪祭りも二月ですからねえ」
「わあ、やっぱり寒いですねえ。僕の住んでる京都なんか、最低気温がマイナス五℃で記録的ですからねえ」
「夏樹さんは京都でしたねえ、一度、行ってみたいです。五日間の九州旅行以外には、道外に行ったことがないですからねえ」
「僕は、学生のころに何回か、京都に行きましたよ。良いところですよ、四季を通じて楽しめますよねえ」
 橋本が笑顔で言った。



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2013.03.22 / Top↑
 橋本は日本中を旅した時の話し、内藤は北海道中を営業で廻った時の宿の話しを、代わる代わる聞かせてくれた。どの話しも、これからの夏樹の行く先への大きな参考になった。
「夏樹さんは札幌にも寄りますか、その時は是非、我が家に一泊していってください。お待ちしています」
 内藤はそう言うと仕事用の名刺を渡してくれた。勤め先の会社名と住所、札幌の自宅の電話番号などが書かれていた。
「ありがとうございます、その時は連絡します」
「家に居ない時が多いからねえ・・・、前もって連絡をもらえるといいのですが」
「でも、いつ札幌に行くか分かりませんしねえ。着いたら電話してみます。橋本さんはこれからも旅を続けはるんですか」
「いや、とりあえず今日までは旅人で、明日の午後からはここのヘルパーです」
「あぁそうなんやあ、どれくらいやるんです・・」
「八月末までだから、二ヵ月ぐらいかな。九月になったら、ゆっくりと南下して、小笠原へ渡って、現地視察だね。まあ、だいたいどこで宿を始めるかの目星は付けてあるのだけどね」
「なんかすごいなあ、営業が始まったら連絡下さいよ、行きますから・・」
「本当かい、じゃあ連絡先を教えてくれるかい」
 橋本が差し出したノートに、夏樹の実家の住所とフルネームを書いて渡した。
(残念ながら宿を始めたのかは分からない。案内の連絡もないし、小笠原にも行くことも出来ていない)
「さっきの『カニの家』の話しを、もう少し聞かせて下さいよ・・。だいたい、カニ族ってなんですか」
「俺がまだ中学生のころだから、十年、いや十五年ほど前かな、山登り用のリュックがね、横に広い形をしていてさ、それを担いで旅をしていた人の格好を後ろから見ると、カニに似ているんだよ。特に街中の狭い道や、混雑している列車の中を移動するときは、他の人の邪魔にならないように横になって歩いたものだから、ますますカニに見えたんだよ」
「それなら、私もよく見かけましたよ。ユースホステルもカニ族さんたちが、ほとんどでしたが、最近はあまり見かけませんねえ」
 内藤が食後のお茶を急須に入れて持ってきてくれた。


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2013.03.26 / Top↑

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