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 内藤は橋本と夏樹の分の湯のみにお茶を入れてくれた。
「おぉきにぃ、ありがとうございます」
「そのカニ族さん達が安く泊まれる宿が『カニの家』なんだ。帯広の駅前に少し大きなテントが張られて・・・、十畳ぐらいの広さかな。無料で開放をして、カニ族達を泊めてくれたのさ」
「お金があまりない学生のカニ族さんは、駅前のコンクリートの上で寝袋に包まって野宿をする人が大勢いてね、夏とは言っても北海道の深夜は寒いときもあるのですよ。屋根のないところでの野宿は、ちょっと過酷です。寝袋がない人は新聞紙に包まって寒さをしのいだ人も居たようです。女の人も、けっこういたようですよ」
「内藤さんって、もしかして元カニ族ですか」
 夏樹が聞いた。
「いや、私よりも少し年下の世代の人たちですね。何処かのユースホステルに泊まった時に聞いた話しです」
「そういう人たちのために出来たのが『カニの家』なんだよ」
 橋本が笑顔で言った。彼も一度だけ『カニの家』に泊まったことがあると付け加えた。
「その『カニの家』って今もやってるんですか」
「夏になると、オープンするはずだよ」
「でも、まだ早いかもしれませんね。たしか、六月末からだったと思いますが」
「じゃ、まだですねえ。残念やなあ、泊まってみたかったなあ」
 内藤がすっと立ち上がり、厨房の入り口付近に置かれたポットから、急須にお湯を入れて戻ってきた。
「おかわりどうぞ」
「おぉきにぃ、何回もすんませんねえ」
「やっぱり関西弁はいいねえ。おれは好きだなあ。でも、関東の人間が関西弁のまねをすると、関西の人はちょっと嫌な顔をするんだよねえ」
「俺が標準語のまねをするとおかしいでしょ」
 夏樹は標準語のような話し方で言った。
「私はね、生まれ育った土地の言葉を話せばいいと思いますよ。分からない方言は、聞けばいいのですよ。そこからまた、会話が広がり、知識が増えていく。楽しいと思いますよ」
 内藤が両手に湯飲みを持って話した。


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2013.04.02 / Top↑
「内藤さんは札幌ですよね。札幌って標準語なんですか」
「夏樹さん、北海道も多少の訛り、方言はあります。札幌市内は比較的標準語に近いですかね。それに仕事柄、どうしても標準語的な話し方になってしまいます」
「おふた方、そろそろここを片付けて風呂にしませんか。夕食の食器をここに置いているのは我々だけです」
 橋本が食器の載ったトレーを持って立ち上がった。
「これはいけませんねえ。厨房のスタッフさんたちに、申し訳ないです」
 夏樹も慌てて持っていた湯飲みをトレーに置き、席を立った。食器を載せたトレーを返却口と書かれた棚に置き、中のスタッフさんに挨拶をし、ひとまず部屋へ戻った。
 風呂に入った後も内藤と橋本と夏樹は、色々な旅の話しをした。夏樹は二人の話しを聞いて、納得させられたり感心させられたりするばかりだった。
「橋本さん、『カニの家』はいまもやってるんですか」
「あると思うのだけれど、まだ少し時期が早いかな・・・」
「あした、帯広方面へ行って見ようと思うんですけど、駅の近くなんでしょ。とりあえず行ってみます」
「オープンしていなかったら・・・」
「その時は気の向くまま、その時に考えます。キャンプ場もどこかにあるでしょ」
「そうだね、どこの町にも村にも、一箇所ぐらいはあるからね」
 この日はユースホステルとしてのミーティングはなく、各自がフリータイムミーティングとなり、後半は橋本の知り合いと言う一人旅の女性が加わり、四人で消灯時間まで話をした。知り合いと言っても夏樹に会うほんの少し前に、このユースホステルで声をかけて親しくなっただけのことなのだと言う。ユースホステルはそんな交流の多い宿なのだ。
 明日、橋本と一人旅の女性は麓郷に行くと言った。夏樹も明日、もう一度あの場所には行ってみたいから、現地で待ち合わせる約束をし、部屋に戻って寝ることにした。

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2013.04.09 / Top↑
 翌朝、北海道上陸七日目の朝は晴れていた。朝食を食べに食堂へ行くと、窓際の席に内藤が一人で朝食を食べていた。食材をトレーに乗せ、内藤の居るテーブルに向かった。
「おはようございます」
「おおぅ、おはようございます。今日は良い天気のようですが、おそらくこれから下り坂でしょう」
「ええ、これから雨が降ってくるんですか」
「北海道に梅雨はないけれど、今の季節は天気が変わりやすいですからね」
「おはようございます」
 橋本が一人旅の女性が内藤と夏樹の席にトレーを持って来た。
「あっ、どうも、おはようございます。昨日は楽しい話をありがとうございました」
 夏樹は内藤と橋本の二人に軽く会釈した。
 昨夜と同じように旅や宿の話をしながら、朝日が差し込む窓際のテーブルで、四人で話し込んだ。そして、また食堂を最後に出たのは夏樹たちだった。
 夏樹は内藤に札幌に寄るときは、必ず連絡をすると約束をして別れた。そして麓郷へ向かった。麓郷には橋本たちより先に着いた。昨日フィルムがなくなり、あまり撮れなかった写真を、様々な方へカメラを向け撮った。

富良野

                       麓郷2

麓郷3      
           
                       麓郷4


 まもなく橋本と一人旅中の女性が、橋本の車で麓郷へやって来た。ドラマ『北の国から』で使われたログハウス『五郎の家』の近くにあるログハウスの喫茶店で話をした。
 橋本は今日の四時から富良野ホワイトユースホステルでヘルパーさんになる。一人旅の女性は周遊券を使って、今日は道北方面へ、どこまで行けるか、いける所まで行ってユースホステルか民宿に飛び込みで泊まるのだそうだ。
「では、また、どこかで・・・」
「じゃあ、良い旅を・・・」
 夏樹は橋本たちより先にバイクに乗り出発し、帯広方面へ向かうことにした。

                     ログハウス

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2013.04.15 / Top↑
 麓郷を出発し国道38号線を帯広に向かってバイクを走らせた。ユースホステルを出たころは晴れていたが、黒い雲が少しづつ表れ、このころには今にも雨を降らせてやろうとしている雲が、空一面に広がっていた。ユースホステルに連泊してしまったので今日はテントを張ろうと意気込んでいたが、このままではユースホステルに三連泊になってしまう。それとも、帯広の『カニの家』がオープンしていれば泊まってみたいのだけれど、この時点では未確認だ。
 狩勝峠までの南富良野は、木の種類も高さも様々で、原生林と思われる林が広がり、杉などの整って真っ直ぐに伸びる植林された林はどこにも見ることが出来なかった。さらにところどころに、木がまったく生えていないなだらかな丘に、一面紫色のラベンダー畑が広がっていた。これが北海道。天気はよくなかったが北海道らしさを満喫することができた。
 ラベンダーだけではなく、何かの野菜を植えた畑なども、本州のそれとは比べものにならないほどに広い。とにかく見渡す限りハ・タ・ケ、だった。
 狩勝峠から帯広方面を望んでも、怪しい雲がどこまでも広がり、いつ雨が降り出してもおかしくなかった。

              狩勝峠
                 
 峠を越えてしばらくは原生林がつづき、峠を降りきったあたりからは国道の両側に牧場が広がった。風除けなのだろうか細身の背の高い木が、整然と道路脇に並んでいた。帯広市内に入っても牧場と、ときどき大きく広がる畑が続いた。道路も直線が多く、登りも下りもほとんどしていなかった。
 帯広駅に着いた。駅で『カニの家』ことを聞いたが、やはりまだオープンしていなかった。今年は七月に入ってからのオープンらしい、との情報だった。残念である。仕方なく富良野の『北時計』でもらった北海道大辞典を開き、キャンプ場を探した。帯広市内から国道38号線をさらに南東へ二十キロメートルほど行った豊頃町にキャンプ場があった。距離的にもちょうど良いところだろう。雨が降らないことを祈りながらバイクを走らせた。
                

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2013.04.22 / Top↑
 国道38号線を進むと、目の前に広がる空の色が急に怪しくなり、今までに見たこともないほどの黒い雲が迫って来た。間違いなく大雨を降らせる雲になっていくのだと、確信した。国道を跨ぐ歩道橋に登り西の方を見ると、周辺にはあまり高い山が見えず、遠くまで見渡すことができ、真っ黒な雲が少しづつ近づいてくるのがよく見えた。好き好んで大雨の中をバイクに跨り走りたくない。 
 帯広駅から少し東へ行ったところで雨がポツリポツリと降り始めた。近くの札内駅の軒にバイクを停め、雨の様子を伺うことにした。やがて本降りになり、遠くで雷が轟いていたが、札内駅に近づいてくることはなく、雨もさほど強く降ることもなかった。雨は三十分ほどで止み、ゆっくりと青空も顔をのぞかせ陽が差してきた。
 道路に少し水溜りが残っているが、西の空にも青空が見える、東へ向かうことにした。幕別町まで来ると集中豪雨による大雨の痕跡が、あちらこちらに見ることが出来た。風もかなり強く吹いたのだろ、多くの葉が道路中に散乱しているところもあった。
 帯広から三十キロメートルほど行くと、市街地から少し山手に登ったところに『茂岩山自然公園キャンプ場』がある。大小のバンガローもあったが、夏樹がキャンプ場へ着いた時には他に誰もいなかった。ますは管理棟へ行った。
「キャンプしたいんですけど」
「はいどうぞ。テントはお持ちですか」
「はい、持ってます」
「それなら無料です。どこでも、好きなところに張ってください」
「あのう、さっきみたいに、いつ雨が降ってくるか分からへんので、屋根のある水場にテントを張っても構いませんか」
 管理棟から見えるところに大きな屋根の下に、横長の水場が見えた。
「ええ、そうですねえ、小さいバンガローもありますから、そちらにされたら・・・、それにこのあたりの夜は、まだまだ寒いですよ、大雨も降りましたから・・・」
「けど、有料でしょ」
「お一人で、千円です」
 たしかにキャンプ場を横切る風は、合皮のジャンパーを着ていても少し肌寒い。少しの金をケチって風邪をひいてはつまらない、屋根はあるけれど飯も風呂もない、もちろん暖房もない、キャンプと同じである。
「じゃあぁ、お願いします」
 北海道の六月はまだまだ寒かった。



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2013.04.30 / Top↑

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