上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
 四人用のバンガローは遠くから見るとキノコか、傘のお化けのような形をしている。太い柱の地上から1.5メトールほど上に三角錐の部屋があり、四人で寝るには少し狭いかも知れないが、一人ならゆっくりと過ごせそうだ。

              豊頃キャンプ場

 ひとまずこの部屋に荷物を置き、キャンプ場から少し街へ降りたスーパーに夕食と朝食の材料を買いに行った。
 大きな店ではないが食品ならほとんどのものが揃い、日曜雑貨も少し置かれていた。こうしたスーパーはどこの街にも一軒はあるように思う。地理的に海から近いところではないが、大漁旗を三枚使い、魚売り場を飾っていた。ここが一番面積を取っていたこの店は、スーパーを始める前は魚屋だったのではないだろうか。
 魚売り場には氷を敷き詰めたショーケースには、まばらに魚が並べられていた。「いらっしゃい。バイクの兄さんはどこから来たの」
 ショーケースの後ろで夏樹より十歳ほど年上の男が、魚をさばき刺身として盛り合わせている。白衣を着て腰から下はビニール製の白い前掛けをし、頭には捻り鉢巻をしていた。髪形はパンチパーマー、それこそ魚屋の兄さんといった風貌の男だった。
「俺ですか、京都からきました」
「それは遠いところ、ようこそ、いらっしゃいました。京都か、行ったことないなあ」
「あれ、お前京都に行かなかったけ・・・」
 同じ歳ほどで、おなじ格好をし、隣にいた男が言った。
「修学旅行の前に、退学したんだよ。自主的にだぞ」
「あっそうか、すまねえ。そうだったなあ」
 悪いことをして退学になったのではなく、この店を経営していた親父さんが急に体調を崩したために、高校を辞めて手伝うことにしたのだと、初対面の夏樹に丁寧に説明した。
「今じゃよう、親父も元気になって・・・ほらあそこのレジにいるだろ。今度、かみさんと二人で京都に行ったときは連絡するからよ、ちゃんと案内してくれないか」
「あんた、いいかげんなことを言ってんじゃないよ、どこにそんな暇と金があるんだい」
 突然夏樹の後ろから、この店の名前の入ったエプロンをした女の人が言った。お腹がかなり大きく、まもなく生まれるのだろうか。
「分かってらい、京都から来たお客さんに楽しんでもらってんだよ」
 なんとも愉快な人たちだ。これも旅先での楽しみではないだろうか。

・拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。

    にほんブログ村 旅行ブログ 国内一人旅へ にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
           にほんブログ村
・応援いただき、ありがとうございます。

          下記URLにて、鉄道模型ブログも公開を始めました。l
          そちらへもお立ち寄り下さい
             ⇒翼芭里鉄道建設記録
スポンサーサイト
2013.05.06 / Top↑
 今夜の夕飯は、魚は買わずにメンチカツを二切れ、カップのうどん、朝食用の五個入りアンパンと缶ビール一本を買った。
「なんだよ、刺身を買っていかないのかい」
「いやあ、貧乏旅行なんで、そんな贅沢はしてられませんねん」
「そうか、まあ気をつけてなぁ」
「おぉきにぃ・・・」
「いいね、テレビのドラマでしか聞いたことのない、その言葉、京都に行ってみたいなあ・・・」
 兄さんに軽く会釈して買ったものを持ってレジに向かった。レジには魚売り場の兄さんが言っていたおじさんがネクタイを締め、その上から魚売り場にいたお腹の大きな女の人と同じ店の名前の書かれたエプロンをしていた。
「いらっしゃいませ、バイクでいらしたのですね。もしかしてこの上のキャンプ場で泊りですか。味噌汁ぐらいは飲まないと・・・」
 店用のかごの中身を見てそのおじさんが言った。
「これねえ、五十円だから買って行きませんか。味噌汁は身体にいいよ・・・」
 レジのすぐ近くに置かれていたインスタントの味噌汁を持っていた。
「はあ、じゃあ、お願いします」
 サービスしとくよ、と言ってくれるのかと思っていたのだが、しっかり金をとられた。でもほんのひと時ではあったが、見知らぬ街で、見知らぬ人たちと楽しい会話を出来た。心から「おぉきにぃ」と言って店を出た。
 キャンプ場に戻ったが管理人室にはもう誰もいないようだった。そして、キョンプ場には新たな泊り人はいないようだ。この小高い丘の上の、広いキャンプ場に居るのは夏樹だけのようだ。屋根のついた水場にだけ薄暗い電球が点いていた。まもなく陽が暮れ真っ暗になるのだろう。夏樹だけ、たった一人である。
 薄暗い電球の下で、今までで一番美味く炊けたコッヘルの飯と、メンチカツ、カップのうどんを食べた。他に誰もいないので片付けは明日の朝にして、三角推のバンガローに戻り缶ビールを飲んで寝ることにした。



・拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。

    にほんブログ村 旅行ブログ 国内一人旅へ にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
           にほんブログ村
・応援いただき、ありがとうございます。

          下記URLにて、鉄道模型ブログも公開を始めました。l
          そちらへもお立ち寄り下さい
             ⇒翼芭里鉄道建設記録
2013.05.10 / Top↑
 北海道八日目の朝は寒さで目が覚めた。バンガローに泊まったのにとても寒く、四時には目が覚めた。外はもう明るくなっていたが、薄い色の雲が空一面に広がっていた。六時ごろまで寝るでもなく、起きるでもなく、なんとなく寝袋の中でゴロゴロとした。
「さあ、そろそろ起きようか。だいぶ明るくなってきたし・・・」
 水場に行きコッヘルで湯を沸かし、紅茶とスーパーで買ったアンパンで朝食をすませた。広々としたキャンプ場に夏樹一人だけで迎える朝の時間は、時おり聞こえてくる鳥のさえずり以外は何も聞こえなかった。東の空は朝焼けが広がっている。今日は雨だろうか。
 七時を過ぎても空は晴れてこなかった。
「さてと、きょうは何処へ行こうかなあ・・・」
 夕食と朝食に使ったコッヘルなどを片付け、地図を取り出し今入る豊頃町から東の方を見た。
「もう少し行けば釧路、その先に厚岸、もう少しで霧多布があるなあ・・・、内藤さんが言っていた民宿があるんやったなあ。んんと、150キロほどやなあ」
 そこまで行けるか、途中に何かがあればそこで泊まってしまうかも知れない。
 国道38号線を南東へ走る。何処までも真っ直ぐの道路の右も左も畑が続き、対向車も追い越して行く車もなかった。しばらく走ると前方から白いものと、黒いものが夏樹のほうへ向かってくるように見えた。やがてそれは向かって左側に白いバン、右に黒いダンプだった。さらに近づいてくると白いバンがダンプを追い越そうとしているのが確認できた。しかし、いつまでも白いバンはダンプを追い越して右側へは入っていかなかった。このまま夏樹のバイクに向かって来そうなスピードで走ってくるのだ。
「おいおい、やばいやろう、早く追い越せよ・・・」
 慌ててパッシングをして夏樹のバイクの存在を知らせた。車種がはっきりと分かるぐらいまで近づいたころ、ようやくダンプを追い越し右側に戻った。と次の瞬間、夏樹の右側を乗用車が追い越して行った。ぎりぎりのところで夏樹の前に入り、そのすぐあとに白いバン、三台の黒いダンプが夏樹のバイクとすれ違っていった。



・拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。

    にほんブログ村 旅行ブログ 国内一人旅へ にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
           にほんブログ村
・応援いただき、ありがとうございます。

          下記URLにて、鉄道模型ブログも公開を始めました。l
          そちらへもお立ち寄り下さい
             ⇒翼芭里鉄道建設記録

2013.05.18 / Top↑
 速度規制の標識がない一般道路の最高速度は時速60キロだ。取りしましによる検挙されない速度は70キロ未満と言われている。それを超えると速度取締りで検挙されるようだ。しかし、250ccのバイクのそれは時速50キロだ。取締りで検挙されないぎりぎりの速度は時速60キロではないだろうか。僅かな速度超過で検挙され、反則金を払わされては面白くない。夏樹は常に時速60キロ未満で走っていたが、その横を追い越して行った車も、すれ違った白いバンとダンプの速度も、時速100キロに近かったのではないだろうか。一瞬の出来事だったが、その瞬間の恐怖がしばらく残っていた。
「あぶなかったなあぁ・・・」
 真っ直ぐで広い道路には、ときどき三、四台の車が連なって時速100キロは出ていそうな速度ですれ違ったり、追い越されたりした。ほとんどの時間はすれ違う車も追い越して行く車もいない、とにかく交通量の少ない道路だから、先ほどのような怖い思いはこのあと数日後にもう一回だけあった。

 豊頃からの真っ直ぐの道沿いには牧場が多く、国道沿いに数頭の牛がゴロゴロとしていた。その牧草地の所どころに、大きな木がそびえていた。後になっての情報だが、そのうちの一本が電機メーカーのCMに使われていた「この木なんの木、気になる木・・・」だと言うのだが、どれも少し違うような気がする。それでも広い牧場の真ん中に、一本だけそびえる大きな木は貫禄があった。木の根元に「ニレの木」と書かれた小さな看板があり、今までに見たことのない風景だった。北海道は感動の連続である。

ニレの木3

         ニレの木1

                     ニレの木2

 国道38号線は浦幌から東方面に向かい、少し山が近づいてきた。緩やかな山道を走る。10キロメートルほど行くと海に出た。太平洋だ。空は晴れているが海に出たことでバイクで走る夏樹を駆け抜ける風が少し冷たい。



・拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。

    にほんブログ村 旅行ブログ 国内一人旅へ にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
           にほんブログ村
・応援いただき、ありがとうございます。

          下記URLにて、鉄道模型ブログも公開を始めました。l
          そちらへもお立ち寄り下さい
             ⇒翼芭里鉄道建設記録
2013.05.27 / Top↑

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。