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 太平洋からの風はとても冷たく、スピードに比例して冷たさは増し、とても六月とは思えないほどに寒い。警察のネズミ捕りに引っかからないようにするためもあって、あまり速度を上げずに走った。
 帯広から今までの風景は、夏樹が今までに見たどれよりも興味を抱かせ、右や左をキョロキョロと見入っていた。交通量が少ないことで進行方向もバックミラーで後方も気にせずキョロキョロしていると、夏樹の横を追い越して行く車が現れ、あまりに突然のことに驚かされた。しかし驚くのも一瞬で、見る見るうちに目の前から遠ざかって行ってしまう。

   音別2
                 音別1

 白糠町を過ぎ根室本線と平行して走るころから交通量が増えてきた。道東最大の都市、釧路市に近づいてきたようだ。国道沿いから畑や林が少なくなり、店や人家が目立ってきた。釧路市内に入ると、どこの都市でも見慣れたビルが立ち並び、大型のショッピングセンターなども見えてきた。また、製紙工場や水産工場の大きな建物も並んでいた。港には遠洋漁船が停泊していた。
 あちらこちらの赤信号で停車させられ、周りの車や歩行者に気を使いながら前に進んだ。
 市内ではどこにも寄らず、ひたすら国道38号線を東へ、案内標識の『根室 厚岸』と書かれたほうへ走らせた。釧路市から隣の釧路町へ入ると海から離れ、曇り空から日差しが表れてきたことで寒さも少し緩んだ。周りに標高の高い山は見えない。緩やかな丘がどこまでも続く風景の連続で、対向車にもあまりあわなかった。
 釧路町から30キロほどで厚岸町に入る。国道から離れ海沿いの道を、とりあえず霧多布へ向かうことにした。20キロも走れば霧多布に着いてしまう、まだ昼を少し過ぎただけである。そのまま内藤さんが言っていた民宿に泊まるにはまだ時間が早すぎるが、まあとにかく行ってみよう。着いてから考えることにした。
 気の向くまま、風の吹くまま・・・

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2013.06.02 / Top↑
 厚岸から10キロほど走ると『あやめヶ原』の看板を見つけた。あやめの原生花園だ。まだ花の季節には早いのだろう、まったく咲いていなかった。立看板によると、あやめ以外の草しか食べない馬が二頭、もくもくと草を食べていた。

             あやめが原

 原生花園から霧多布岬まではとても寒かった。安物とはいえ合皮のジャンパーに皮のモトパンを履いているのに寒い、六月と言うのにこの寒さはどう言うことなのか、これが北国の厳しさなのだろうか。
 寒さを我慢してようやく霧多布岬の付け根に着いた。たいした距離ではないがもう走るのが嫌になってきていた。
 岬の灯台まで行ける道路が伸びている。灯台からは岬の先端までは遊歩道を歩く。空は相変わらずどんよりと曇り、バイクを降りても少し寒さを感じる。それなのに岬の先端から戻ってくる二人組みの女子は、半袖にミニスカート姿、完全に真夏の格好をしていた。お互い軽く会釈をしてすれ違った。『寒そう・・・』と心の中で囁いた。
 岬の先端まで行くと断崖の先は300度に海が広がり、広い太平洋へ鋭角に尖って突き出ている。足元の岩には、冬の荒波のように激しい波が打ち寄せ、冷たい風が夏樹に吹付けていた。

           霧多布岬

                    霧多布

「なんか、冬の日本海みたいやなあ・・・」
 ぼそっと独り言を言った。来た道を戻りさらに東へ進むと浜中町に入る。すぐに『民宿 霧多布里』の看板を発見した。もうこの寒さは耐えられない、まだ三時だけれども、このままここに泊まることにした。『満員やったらどうしよう・・・』
 建物の前にバイクを停め、荷物は降ろさずにとりあえず玄関へ、まずは泊めてもらえるかの確認をしなければなるまい。
「こんにちは・・・。留守かなあ」
 さらに大きな声を出してみた。
「こんにちはぁ・・・」
 奥から若い男が一人出て来た。
「泊まる人?大丈夫だとおもうけどね・・・」
 なんか変な感じの男だと思ったが、この男も客だと後で分かった。
「とりあえず、荷物を持ってその辺で待って居ればいいんじゃない」
 その男の言葉を信じ、バイクから荷物を降ろして玄関に運んだ。




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2013.06.11 / Top↑
 テントなどの入った重い荷物を玄関に置いてしばらく待つと,外から一人の男の人が入って来た。
「こんにちは、ええと、今日泊まる人ですか・・・」
「はい、予約はしてないんですけど、泊まれますか」
「今日の予約は満杯じゃないので、だいじょうぶですよ」
「良かった、すんません突然きてしもうて」
「今の季節はそんな人が多いから。まだ時間も早いから、みんなでカヌーに乗ってきたら、今から何人かですぐそばの沼に行くからさ」
「カヌーですか」
「今日は特別に無料で貸し出すから」
「はあ、けど乗ったことないんやけど」
「だいじょうぶ、アルバイトのインストラクターが教えてくれるから、荷物を部屋に置いて、すぐに降りといでよ」
 ここのオーナーのようだ。とても人当たりがよく、ずっと笑顔で対応してくれた。
 案内された部屋に荷物を置き、合皮ジャンパーと皮のモトパンを脱ぎ、スエットに着替えた。玄関には二人の男と二人の女が、二人で一台のカヌーを抱え込むように持って待っていた。
「じゃあ、行きましょうか。沼まではすぐですから」
「行ってらっしゃい、沼に落ちないようにね」
 オーナーに見送られカヌーを持った男女五人は歩き始めた。
「皆さんは、カヌーに乗るのは初めてですか」
「はじめてですよ、でも面白そう。素人でもすぐに乗れちゃうの」
 ショートカットの女の人が笑顔で言った。
「だいじょうぶ、意外と簡単に乗れるようになりますから」
 何分ほど歩いただろうか、アルバイトのインストラクターの男の人に、他の四人が質問攻めのような会話をしていた。
 一人ずつ順番にゆっくりとカヌーに乗り込み、教えられた通りにパドルを右に左に漕いで沼の中を廻った。乗り込んでしまえば安定するのだが、五人の中で最年少と思われる女の人が乗り込むときにバランスを崩し、片足を沼に入れてしまい膝まで濡れてしまった。相変わらず曇り空で気温はかなり低い、片足とは言えかなり冷たかったと思うのだが、何事もなかったようにそのままカヌーに乗り込み楽しんでいた。

              霧多布里


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2013.06.16 / Top↑
 夏樹も恐る恐るカヌーに乗り込み、ゆっくりとパドルを漕ぎ前に進んだ。沼の水面の上を滑るように、ひと漕ぎごとに勢いよく進むと、水面を過ぎる風が陸地のそれよりもいっそう冷たく感じた。ここへ落ちてしまうと、間違いなく風をひいてしまうだろう。とても6月の気温とは思われない寒さだった。あまり遠くへは行かず、小さく時計回りに沼を廻り、元の場所へゆっくりと戻った。
「はじめてでもチャンと乗れるもんなんやねえ。面白かったですは」
「もう少し暑くなれば、みんなで湿原ツアーに出かけることも出来ますよ。いろんな生き物、植物を観察することが出来ますから。また、来てください」
 アルバイトのインストラクターの男の人が言った。
 沼の畔に佇み、他の人のカヌー漕ぎを見ていると、体中が冷えてきて黙って立っていられなくなってきた。
「寒うぅ・・・」
 思わず大きな声で言ってしまった。
「いや、本当に寒いねえ」
「あなたが最後ですね」
 もう一人の女の人に、アルバイトのインストラクターの男の人が言った。
「寒いから、今日はやめておくわ、また今度来ますから、その時までのお楽しみに」
「また,来はるの」
「難しい関西弁やねえ・・・、なんて言ったの」
「あぁ、すんません。また、来るのですか」
「今度は、変な標準語だね」
 夏樹と同じ年ぐらいの男が言った。
「標準語はよう喋らんから、しゃあないやん」
 そこにいた全員から笑い声が聞こえた。
「本当に森さんは乗らなくていいですか」
「はい、また来ますから」
 沼からカヌーを陸に上げ、みんなで担いで宿へ戻ることになった。宿に戻って夕食の前に風呂に入るように進められた。部屋に入ると沼に一緒に行った夏樹と同じ年ぐらいの男とは同部屋だった。その男と二人で風呂に向かった。
 風呂には先客が一人、湯船に浸かっていた。
「こんにちは。どちらかがスズキのバイクの人ですか」
「おれやけど、自分は関西の人?」
「関西弁に似てるよねえ、香川からです。さっき、ハルニレの木のところで赤いスズキのバイクを見かけたんですよ。そしたら、この民宿に停めてあったから・・・」
「ほんまに、そう言えばあの時、大きなバイクが走って来たような・・・」
「まあ、そう言うことは、よくあることさ」
 関東人と思われる、夏樹と同じ年ぐらいの男が言った。


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2013.06.30 / Top↑

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