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 浜中町から国道44号線へ入る。天気は快晴なのだが、体感温度はかなり低い。いつもの合皮のジャンパーの下にトレーナーを着ているが、吹き抜けていく風はとても冷たい。
 厚床からは根室本線沿いの脇道に入って行った。途中からは未舗装道路が続いたが、四輪車が通った轍の上を走れば、オンロードバイクでもそれなりにスピードを出して走ることができる。しかしカーブなどは砂利が道路一面に広がり、ハンドルを取られて転倒しないよう慎重に、ゆっくりと走った。

        根室付近2
                         根室付近

 右手に海が見えてきた。左へ根室市街、右へ納沙布岬の看板を見つけバイクを進める。岬の周辺には北方領土記念館を中心に土産物店などもあり、ふらっと入った店に霧多布里で同部屋だった香川ナンバーのライダーが先に来ていた。
「どうも、また会いましたねえ」
「まあ、納沙布岬は行っておかないとねえ・・・」
 ここの店をなんとなく見て廻り、あまり荷物にならない小物の土産を買った。
「夏樹さんは、今日、どこまで行くんですか」
「まだ決めてないねん。天気はええねんけど、寒いさかいに適当なところで挫折して、ユースホステルとかに泊まろうかなあぁって思ってます」
「俺は網走あたりまで行こうかなって、あまり時間がないんでねえ、あと五日ほどで一周して小樽からフェリーで帰りますから」
「ほんなら、これから稚内まで行って、南下して行くわけやねぇ」
「休みが二週間なんで、小樽に着いてから、三日目なんです。フェリーだけで往復五日もかかるでしょ」
「俺も二年前に利用したけど、三十時間は長いなあ」
「だから、今日の目的地は網走なんで、お先に行きます。じゃあ、気をつけて旅を続けてください」
「自分もね、飛ばし過ぎて捕まらんように・・・」
 軽く握手をして別れ、夏樹も土産物屋を出て北方領土記念館に向かった。数台のバイクの中に見覚えのあるものを見つけた。霧多布里で一緒だったショートカットの女の人だ。
「あら、今来たの」
「あそこの土産物屋に居たんや。香川の人がいて、急ぐからって網走に向かって走って行かはった」
「急ぐ旅なんだ、私は全然急いでないからさ、今日はどこまで行こうかなあ」
「俺も、まだ決めてへん」
 そんな話をしながら記念館には入らず、納沙布岬の先端に向かった。


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2013.08.06 / Top↑
 納沙布岬の先端からは貝殻島と歯舞群島が見えた。本当は日本なのに当時のソ連に不法占拠されているのだと、案内版に書かれていた。この時からおおよそ三十年のときが過ぎ、ソ連は崩壊しロシになった今も、当時と同じく何の進展もなく、いまだロシア領である。
 ショートヘアーの女の人は、ヤマハのオフロードバイクに跨り「また、どこかで合えるといいね」と言って走って行った。北方領は肉眼ではっきりと見えるほどに快晴なのだが、とても寒い。できればこんな日にはバイクに乗りたくないのだけれど、仕方がない、とりあえず根室半島の北側を走り風連湖へ向かう。この湖は根室半島の付け根あたりから海沿いに北西方向へ縦長に広がっている。根室半島付近が大きく海に開いているため、海水と淡水が混ざり合った汽水湖と言うらしい。
 国道41号線を厚床方面へ走ると、いったん風連湖から遠ざかる。厚床からほとんど真っ直ぐばかりの国道243号線を北上し、尾岱沼、野付半島方面を目指す。地図を見ていて野付半島の付け根辺りに『標津』と言う地名を見つけた。勤めていた会社の女の同僚から頼まれていたことを思い出した。
「標津という町のユースホステルに、高校時代の同級生が働いているらしいのよ。もし、そっちの方に言ったら寄って顔を見てきてほしいの・・・」
 ということでその標津のユースホステルをガイドブックで探してみた。町で運営していたようだが、その後民営になり今は閉館となり、建物もなくなって更地になっているようだ。
 国道243号線がいつの間にか244号線に変っていた。気がつかなかった。再び右手には風連湖を望み、国道周辺はどこもかしこも牧場だった。国道沿いに電話ボックスを見つけ、ユースホステルに電話をすることにした。しかし財布には数枚の千円札と十円玉が一つしかなかった。たまたま近くに地元ナンバーの車が止まっていたから両替をお願いしたのだが、運転手の男の人の財布の小銭は十円玉が二個しか入っていなかった。
「あれえ、両替できないやあ。電話するんだったらこれを使ってよ」
 そう言って二十円を頂いた。ありがとうございました。本当に助かりました。

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2013.08.11 / Top↑
 合計三枚の十円玉を持って電話ボックスに入った。小さく密閉された空間は夏の日差しが全体に降り注ぎ、外の空間とは別世界のように暖かかった。ユースホステルへ電話をする前に、この温かい空気をしばし身体に溜め込んだ。何度も言うが、この日は夏のはしり、正確には六月二十一日である。しかしオホーツク海に面した北国では、まだ春が始まったばかりのような気候だった。
「はい、標津ユースホステルです」
 若そうな女の人の声が聞こえてきた。
「今日なんですけど、泊まれますか」
「一人ですか」
「はい、男一人です」
「夕食はいりますか」
「二食付でお願いします」
「いいですよ。何時ごろに着かはりますかぁ」
「すぐにでも行きたいんですけど・・・、もしかして京都の多田さんですか」
「えっ、何で分かるんですか」
「夏樹と言います、引田良子さんから聞いてませんか」
「あっ、リョウちゃんの会社の人ですか」
「正確には元、会社の人です。バイクで来たんですけど、寒くて、もう我慢ができません」
「分かりました、四時を過ぎれば入れますから、もう少し我慢して時間を潰してください」
『ピィィィー』
「もうすぐ電話が切れますから、じゃ、お願いし・・・」
 これぐらいのタイミングで電話が切れたように記憶している。あと一時間ほどでこの寒さから開放される。ユースホステルまでの距離を走る抜くためにもう少しこの電話ボックスに留まり暖まることにした。

 標津ユースホステルには四時を少し過ぎたころに着いた。一番乗りのようだった。
「お帰りなさい、夏樹さんですね」
「ただいまぁ、宜しくお願いします。あなたがさっきの多田さんですか。声から想像していた通りのひとやなあ」
「想像通りの、おでぶさんでしょ」
「いやいや、そんなことはないよ。それに電話の声だけでは、太いかどうかなんてわからへんし」
「そらそうですね。はい、これを書いてください。会員証も一緒にもらえますか」
「はい、さすが関西人、久々に関西弁を聞きましたは」
「私もです。また、後でゆっくりとお話しましょ・・・」
 そう言って彼女は、宿泊表と会員証を受け取った。

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2013.08.15 / Top↑
 標津ユースホステルには夏樹以外の宿泊者はまだ誰も来ていなかった。風呂はまだ沸いていないし、もちろん夕食には早い時間だ。スエットに着替えて二段ベッドの下を寝床として陣取り、ひとまず冷えきった身体に掛け布団をかけて暖まっていたが、いつの間にか眠ってしまったようだ。
 人の話声で気がつき目を覚ました時には、夏樹の居た部屋には大学生ぐらいの若者が三人で静かに談笑していた。
「あっ、こんにちは。寝てたみたいですわ・・・」
「こんにちは、もうすぐ夕食みたいですよ」
 一人の男が言った。他の二人は、にこりと愛想笑いだけを浮かべていた。
「ほな、食堂に行きましょかぁ」
 ゆっくりと立ち上がり四人で食堂へ向かった。
「今日のおかずは、なんやろねぇ」
「さあ・・・」
 先ほど夕食の時間だと教えてくれた男が言った。他の二人はいまだに声を聞いていない。なんだかとても静かな人たちである。
 食堂にはヘルパーとしてこのユースホステルに泊まりこんでいる多田が、せわしなく右へ左へと動いていた。
「夏樹さん、やっと起きましたかぁ。何回か部屋の前で呼んだんですけどねえ・・・」
「ぐっすりと寝てたみたいです」
「さあ、ここからおかずと、味噌汁をもらってください。ご飯はこっちですから」
 トレーに三種類の器を載せてテーブルを見渡すと、一人だけ女の人が先に座っていた。
「こんにちは、ここに座ってもいいですかあ」
「どうぞ、一人ですから」
「ええ、一人旅ですかぁ、バイクで・・・」
「いやあ、周遊券で来てます」
「あれ、関西からですか」
「大阪ですけど、そちらも関西やねえ」
「京都です」
「久々に関西弁を聞きますわぁ、なんか懐かしいいなあ」
 そこへ同部屋の三人の若者が、夏樹と大阪から来たと言う女の人が座っているテーブルにトレーを置き、何も言わずに座った。
「自分らはどこから来やはったんですかぁ」
「俺は鳥取です。大学の四年生です。バイクで来ました」
「へえ、バイクはなんですか、俺はGSX250なんやけど」
「俺はナナハンのカタナです」
「わあ、すごいねえ」
 大阪の女の人が言った。
「私は東京です。社会人なのですが、一周間の休みが取れたので、飛行機でおととい札幌に着きました」
「俺は、神奈川です、大学二年ですけど、二浪したので、こちらの彼と同じ年です」
「みなさん、若いですねえ」
 大阪から来たと言う女の人が言った。



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2013.08.23 / Top↑

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