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 夕食後も男三人と大阪から来た女の人とヘルパーの多田、そして夏樹の六人で話をした。正確には男二人と女二人の四人だった。社会人と浪人した大学生は頷いているだけで、ほとんど声を聞くことはなかった。
周遊券で北海道を廻ってはるんでしょ、あれって二週間しかないのと違いますか」
「そやから二枚、買ってくるんですよ。一枚目の期限が切れたら、次に列車に乗る時に二枚目を出して、それから二週間以内に北海道を出て帰ればええのよ」
「そしたら、合計四週間なんや」
「正確には、もう三日以上は旅ができるんやけどね」
 周遊券には大阪から北海道に上陸するまでの普通列車運賃が含まれているが、有効日数十四日間は、北海道を回ることのできる期間で、そこまでの行き帰りの日数は含まれていない。普通列車を乗り継いで大阪から北海道までは何日かかるのだろうか。別に特急料金、寝台料金を払えば乗れるのだけれど。その日数と二枚目の周遊券を使うまでに、列車に乗らずにヒッチハイクをしたり、その場に滞在したりすれば、さらに旅の期間が延びる。周遊券二枚で、北海道に滞在できる期間が最短でも四週間は居られるということのようだ。
「そやから、あと一週間で一枚目の周遊券が終わるから、どこかでヘルパーをして、お盆過ぎに二枚目を使おうかなって・・・」
「ほな、ここでヘルパーしませんか。ペアレントさんが、もう一人ヘルパーがほしいって、言ってますから」
 多田が身を乗り出して言った。
「ほな、もう一週間、回ってからどうするか考えるわね」
「写真を撮りましょう。みんなで」
 突然、カタナのナナハンに乗っていると言う鳥取の男が言った。
「ほな撮りましょう。帰って、現像をしたら送ってね」
「もちろん。送り先を教えてくださいね」
「じゃぁ、私がシャッターを押しますよ」
 多田が鳥取の男からカメラを受け取った。
「いや、俺が取りますよ」
 なぜか神奈川の大学四年生が多田からカメラを受け取った。

             標津YH



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2013.09.01 / Top↑
 少しずつだけれど神奈川の大学生と、東京の社会人の二人も会話に加わってきた。大学生は周遊券で回っているのだと言った。一枚だけれども。東京の社会人は飛行機で来て、レンタカーを借りて回っているのだと言った。とても贅沢な旅のようだが、学生時代にできなかった北海道の旅を、短い休みを最大限に利用して回っていると、今までとは別人のように語ってくれた。
「俺って、小さいころからこんな感じで、おとなしくて、友達も少なくて、なんとなく大学から、それなりの企業に入ることができたのです。同僚や先輩達はいい人達ばかりで、今までに経験したことのないような、雰囲気の好いところです。俺とは正反対の活発な、スポーツマンタイプの人たちが多いのです」
「へえ、なんか面白そうな会社やねえ」
 大阪の女の人が言った。
「仕事は厳しいし、難しいし、大変だけれど、毎日が楽しくて、学生時代にこんな楽しい毎日を送ることはなかったです。その先輩や同僚達の会話の中に時おり出てくるのが、学生時代に旅した話だったのです。特に多かったのがユースホステルを利用しての北海道の旅です」
「俺なんか北海道に憧れて、会社を辞めてもうたけどね・・・」
 夏樹がぼそりと言った。
「それで、今までに家以外の場所に泊まったのは修学旅行の時だけです」
「じゃあ、家族旅行もしたことないの」
 カタナの男が言った。
「両親は商売をしていますから、家族旅行には連れて行ってもらったことはないですねえ。祖父母と同居していますし、母方の祖父母は母が若いころに亡くなり、新潟の実家もありませんから、田舎に遊びに行くこともなかったです」
 東京から来た社会人君の話はこのあたりにしておこう。
「皆さん、明日の朝、三時過ぎに起きて日の出を見ませんか、野付半島の先端あたりまで行けば、海から登る朝日が拝めますよ」
 多田が笑顔で教えてくれた。
「じゃあ、俺の車で行きましょうよ、朝は寒いですから」
「ええ考えやなあ、お言葉に甘えて、皆さん行きませんか」
 夏樹はここ数日の寒さ続きに、できれば早朝の気温の低い時間帯にはバイクに乗りたくなかった。


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2013.09.08 / Top↑
 翌朝、目が覚めたのは三時半ごろだった。誰も起こしてはくれなかった。でも堂部屋の三人もまだ寝ているようだ。窓から外を見ると、曇り空で霧に被われていて日の出を見ることができそうにない。まだ三時半なのにすっかり夜が明けて、とても明るい。緯度が高いと夏の朝は早い。もちろん夜も遅いのだけれど。仕方なくもう一度布団に入り、眠ることにした。

           標津の朝

「おはようございます。霧と曇りでは日の出は見れへんもんねえ。残念やなあ」
 六時半に食堂へ向かった。
「おはようございます」
 多田が元気に大きな声で言った。大阪から来た女の人だけが朝食を食べていた。
「おはようございます。曇りですね」
「今日はどこまで走らはんのですか」
「今日ですか、まだ決めてません、少しづつ北へ向かおうかなあ、けど寒いからねえ、もう少し暖かくなるまで少し内陸に向かおうか・・・」
「バイクはええねえ、道さえあったらどこでも行けるし」
「まあねえ、けど自転車の人はすごいわ、自分の力だけでペダルを漕いで進むんやから、上り坂なんか、あの重い荷物を積んで行くんやもんなあ」
「列車は線路がないと行かれへんから、行動範囲が決まってくるしねえ。大阪に帰ったらバイクの免許を取りに行こう」
「ほんで、また北海道に来るの・・・」
「うん、必ず来る」
「おはようございます」
 三人の男達が食堂へ入って来た。朝食を載せたトレーを持ち、夏樹たちの隣に座り、三人とも簡単な挨拶を交わしただけで、黙って食べていた。
「大山さん。車に乗せてもらって、日の出を見に行けんようになったねぇ」
 東京から来た社会人君が夏樹の隣に座っていた。
「朝御飯を食べたら、皆さんで野付半島の先端まで行きませんか、私の車で」
「けど、ねえ、俺はバイクやけど」
「いいじゃないですか、ちょうど五人乗れますし、一緒に行きましょうよ」
 大山はとても積極的に皆を誘った。
「夏とは言っても気温が低いから、本心はあんまりバイクに乗りたくなかったんや」
「俺もです・・・」
 鳥取のカタナの男も照れくさそうに言った。



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2013.09.19 / Top↑
 朝食を食べ終え部屋に戻り荷物をまとめて玄関に集合した。レンタカーで北海道を回っている大山の誘いに皆が甘え、野付半島へ向かうことにした。
「いってらっしゃい」
 多田が笑顔で見送ってくれた。
 野付半島は波の流れによって運ばれた砂や土が堆積して出来た砂嘴(さし)なのだそうだ。昔は半島の幅も広く、松林が広がっていたようだが、波による侵食や大きな台風の塩害で立ち枯れ(トドワラ)が進み、荒涼とし少し不気味な風景だった。いずれ立ち枯れた木々は風化し、何もない湿地になってしまうようだ。
「なんか怖いぐらいの景色やね」
 大阪の女の人が言った。

        トドワラ1

            トドワラ2

                 トドワラ3


「こんな風に、木が枯れて立っているのを他でも見た気がするなあ」
「夏樹さん、それって上高地の大正池とちゃいますか」
 鳥取のカタナの男が言った。
「そうそう、火山の噴火で川が堰き止められて出来た大正池に何本もの枯れた木が立ってたなあ。あの時は快晴やったから、なんか珍しいものを見たという感じやったけど、今日は天気もどんよりと曇っていて、なんか不気味やなあ」
 満潮が近いのか道路の近くまで海水が押し寄せていて、途中で通行止めになり、半島の先端まで行くことが出来なかった。
 通行止めから真っ直ぐにユースホステルに戻り、荷物をまとめ直してバイクに積んだ。
「大山さん、おぅきにぃ、ありがとう。今日はどこまで行かはんの」
「そうですねえ、思い切って宗谷岬まで行ってみようかなあ。どこか、いいユースホステルとか民宿があったら教えてください」
「んん、道北の情報はまだないねえ」
「浜頓別ユースホステルが面白いって聞いたことがありますよ」
 多田が言った。
「じゃあ行ってみます。皆さん、いろいろとありがとうございました。必ず写真を送りますから、楽しみにお待ち下さい」
「大山さも、よい旅を続けてくださいね」
 大山の車に大阪の女の人と、神奈川の大学生を乗せて駅まで送って行った。夏樹は北へ、鳥取のカタナの男は南へ向かった。

               標津ユースホステル前



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2013.09.22 / Top↑
 とりあえず国道244号線を北へ向かったが、昨日のミーティングの時に多田が言っていたことを思い出した。
「開陽台には行ってきてください、ほぼ360度のパノラマが見えますし、そこへ通じる道は、どこまでも真っ直ぐで、日本じゃないような風景が見られますから」
 そう言って簡単な地図を広げ、この辺りの道が特に見ごたえがあるからと教えてくれた。すぐにバイクを止め地図を広げた。少し戻り国道272号戦を西へ向かい、多田から聞いた道を右に入って行った。ようやく陽が差し、少し暖かくなってきた。
 小高い丘を目指して真っ直ぐの道があらわれた。周りの緑とは違う黄土色の未舗装の道が、丘の斜面にへばりつくように真っ直ぐに伸びている。開陽台の標識を左に行くと今度は舗装された真っ直ぐの道があらわれた。ときどき交差する道もどこまでも真っ直ぐで、それなのに車は一台も走っていないから、直線がより目だって見ることができた。バイクを止め、道のど真ん中に立ち写真を撮った。

真っ直ぐ1

         真っ直ぐ2
                   真っ直ぐ3

 開陽台は標高が300メートル足らずの小高い丘で、後で聞いた話しだがライダー達の聖地になっているらしく、多くのバイクが止まっていた。展望台周辺にテントを張っているライダーもいて、360度の星空は絶景だそうだ。そんなライダーが大勢いるから、キャンプは遠慮することにした。陽が差し少しは暖かいがバイクに乗って切る風は冷たく、夜にここでテントなどを張って野宿するに十分な暖は取れそうになかった。とにかく寒さに弱い夏樹である。

                開陽台

 開陽台からの景色は素晴らしいものだったが遠景にうす雲が広がり、どの方向にも地平線を見ることができなかった。それでもいまだソ連(30年ほど昔の話です)領、国後島が微かに望めた。展望台の駐車場で地図を広げ、これからの行き先を検討した。今の場所からほど近いところに知床半島がある、そちら方面に向かい、寒さに負けそうになったらユースホステルガイドを広げ、どこに泊まるか考えよう。この気温では今夜もキャンプはやらないだろう。
 国道272号線を東へ、標津から244号、335号を北へ羅臼に向かう。


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2013.09.28 / Top↑

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