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「本州では見られない大自然をここでは見ることができるから、でもそこへ行く手段はほとんどが歩いて行くしかなく、ここを起点に楽しんでいます」
 田中が笑顔で言った。
「夕食後のミーティングで、ペアレントさんが色々と教えてくれますよ。ガイドブックに載っているところも、載っていない穴場もね・・・。どうせプー太郎なんでしょ」
 こんどは森田が言った。
「まあ、先月、仕事を辞めて来ました。すべて行き当たりバッタリの旅がしたくて。もうすでに毎日が一話完結のドラマみたいで。ただ、六月やのに寒いのだけがねぇ・・・」
「まあ、それが夏の北海道でしょ。学生が夏休みに入ったらもっと人で溢れて、楽しみも半減してしまいますから」
 前回、北海道に来た時は盆休みを利用して、道内には二泊三日の強行旅程だった。襟裳岬のユースホステルは満室状態で、予約なしでは泊まることは出来なかっただろう。学生の夏休みが始まると多くの旅人が北海道へやってくるのだ。現在よりも北海道の人気は高かったように思う。
「それじゃ、お風呂に行ってきます」
 森田がタオルを持って部屋を出て行った。そのすぐ後ろを田中も俺もう、と言って出て行った。夏樹は日記帳を持って食堂へ向かった。今日のおもだった出来事を書きとめておくためだ。必ず毎日書いている。
 だいたいのことを書き終わったころだった、後ろから女の人の大きな声が夏樹に投げかけられてきた。
「あら、なにやってんの。あなたも泊まっていたのね・・・」
 振り向いてみると、霧多布里で一緒だったショートカットの女の人だ。
「なんやあ、あんたも来てたんかぁ。昨日はどこに泊まったの」
「開陽台の展望台にテントを張って、星空を見ていたの。寒かったよ」
「俺もさっき、行ってきたんやけど、その時は見かけへんかったなあ」
「朝の早い時間に出発したからねえ」
「あれぇ、こんにちは。奇遇やねえ、また会えるやなんて・・・」
 こんどは昨日の標津ユースホステルで一緒だった、大阪から来た女の人が声をかけてきた。






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2013.11.01 / Top↑
 大阪から来た女の人は、この岩尾別ユースホステルまでの交通手段が少ないことを車で来ていた大山に話をし、ウトロまで乗せてもらい、そこからバスで来たと話してくれた。
「ここのユースだけは、絶対に外せへんからねえ・・・」
「へえ、そんなにええとこなんや」
「知床が、一番北海道らしいと思わへんかぁ。行きたいとこはいっぱいあるから、車で来ている人を探して、乗せてもらえへんか、聞いて回ってんのよ」
「ヘルメットがあれば、俺の後ろに乗せられんのやけどなあ・・・」
「いやあ、なかなかヘルメットは、ないと思うわ。と言うことなんで、また後でゆっくりと」
「頑張って、探してください」
 大阪から来た女の人が車で来ている人を探しに行くと、霧多布里で一緒だったショートカットの女の人が話してきた。
「私は東京から来た、森です。無期限、全国放浪中なの、あなたは北海道にいつまで居るの」
「俺は夏樹、京都です。俺も無期限、全国放浪中なんや。北海道には学生が夏休みに入ると、いっぱい人が来るって聞いたから、それまでには本州へ戻ろうかなと、思ってます」
「なあ、温泉に行かない。この辺りには無料の露天風呂があるらしいのよ」
 突然、話の内容が飛んでしまった。
「そう言えば同部屋の人が言うてたなあ、ここからバイクで五分ほどのところにあるって」
「じゃあ、その人に場所を聞いて来てよ。で、入りに行こうよ」
「ああ、いいよ」
 とは言ったものの、男の俺に露天風呂へ誘うとは、どういう人なんだろうと考えたが、そこは旅仲間、男も女もないんだ、旅の途中で知り合った人間同士という思いの方が強かった。
 同部屋の田中の姿が、食堂にいないか探した。夏樹たちがいるところから少し離れた窓際に田中の姿を見つけ、森と二人で近づいて行き、露天風呂のことを聞いた。
「いいよ、俺も行こうと思っていたんだ、一緒に行こうよ」
 田中と、森と、夏樹の三人で露天風呂に行くことになった。


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2013.11.11 / Top↑
 夏樹と田中はタオルを首に巻きつけ、田中のバイクの後ろに乗った。森はDバッグにタオルなどを詰めて担ぎ、自分のバイクに乗った。
「すぐそこだから、お巡りさんに出会うことはないと思うからさ、大丈夫だよ・・・たぶん」
 と言う田中の言葉を信じて三人ともヘルメットを被らずに走った。
 露天風呂は道路から原生林の中を少し歩いて進むと、山の斜面を流れる滝の途中に畳二畳ほどの浴槽がある。全部で三ヵ所の浴槽があり、最上部の浴槽が一番熱かった。下の浴槽に田中と夏樹が入り、上の方の浴槽には森が一人で入った。
「下から上の風呂は見えないから、森さんはゆっくりと気にせずに入ってくださいね」
 田中が大きな声で上に居る森に言った。
「大丈夫よ、見えたって別に気にしないから、一緒に入らない、こっちの方が見晴らしいいよ」
「ええっ、いいの・・・、いやあ、いいよ」
 田中と夏樹は顔を向き合わせ、複雑な心境の表情だったと思う。
 熱くなく温くなく丁度の湯加減で、夏なのに林間を吹き抜ける風が少し冷たく、いつまで入っていてものぼせることはなさそうだった。
「さて、そろそろ戻りましょうか。夕飯の時間じゃないかな」
田中が言った。頭は冷たい風で冷えていたが、体はしっかりと温まり僅かに汗ばむほどだった。再びヘルメットを被らずにバイクに跨り、走り抜ける風が心地良かった。
 ユースホステルに戻ると温泉に出かける時よりも人が増え、おそらく満室状態だったのだと思う。夕食は同部屋の田中と森田、あとから森も加わり四人で食べた。食後はそのままミーティングとなった。ペアレントさん自作の観光案内図を広げ、ガイドブックに載っていない穴場を中心に、知床周辺の案内をおもしろ、おかしく話してくれた。大自然が相手である、カムイワッカの滝を登る時は、左側の方が登りやすく見えるが、かなり高温の湯が岩を流れていて危険だから右側を登った方がよいとか、羅臼湖に行く人にはユースホステルの長靴を貸しだしているとか、お昼用のおにぎりを安く提供してくれるなどの情報を教えてくれた。
「よし、明日は羅臼湖に行こうよ。ヒゲさん」
 森が立ち上がりながら言った。

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2013.11.17 / Top↑
 羅臼湖へ行くには、ユースホステルで長靴を借り、お昼用のおにぎりを持って知床横断道路の峠の駐車場までバイクで行き、歩いて登山道を進む。
 食後のミーティングでは、ペアレントさんの周辺観光案内が、言葉巧でとてもおもしろかった。
「羅臼湖へは必ず長靴が必要です。舗装はもちろんしていないし、湿地帯もあるのでスニーカーやバイク用のブーツでは靴がもったいないです。ユースホステルで貸しますから。でも、サイズと数に限りがあるので、早いもの勝ちですよ」
「はあい、わたし行きます」
「あっ、俺も」
「はい、わたしも」
「あっ、はいはい、俺も・・・」
「俺も行きたいです」
 森が一番に元気に手を上げて行った。そして、夏樹とは別の男と、ペアレントさんから一番遠くにいた女の人が手を上げた。夏樹は一歩遅れを取ってしまった。最後に田中が手を上げた。他に行きたいと言う人はいなかった。この男三人と女二人で羅臼湖ツアーに行くことになった。
 五人ともバイクで一人旅をしているが森と夏樹以外の三人は一週間から二週間の休みを取り、計画的に北海道へ来たようだ。そして五人の中で夏樹が最年少だった。
「みんな、ユースホステルのおにぎりを持って行くよねえ。わたしが五人分を頼んでくるね」
 森が他の四人の返事を聞かずに席を立ち、食堂の前にいるペアレントさんのところへ向かった。

 翌朝は快晴だった。朝食を食べ長靴とおにぎりをもらってバイクに乗った。昨日とは打って変わり爽やかな気温が心地良かった。
 知床峠の駐車場にバイクを停め、羅臼湖への案内版から湿地帯へ入って行った。昨夜のミーティングで羅臼湖へ行く時は何も取ってはいけない、何も残してはいけないと言われていた。植物や昆虫などを持って帰ることは禁止で、とっても良いのは写真だけ。もちろんゴミを残して来るなどは、以ての外である。残してきて良いのは足跡だけ、それも通路以外には残してはいけない。生態系を保護すると言うことは何も難しいことではないと思う。取らない、残さないを守れば大自然が楽しめるのではないだろうか。


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2013.11.23 / Top↑

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