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 羅臼湖への参道はロープを使って仕切られ、それより先には入林禁止と書かれた立て札があった。登山道というより、ハイキングコースのようになだらかで、起伏の少ない道だった。しかしそのほとんどが湿地帯で、長靴がなければ大変な思いをしたことだろう。時おり雪が残っているところあり、五人ともこの季節に雪を見ることができ、たいへん感動していた。

                 湿地帯

 五つの沼を通り抜け一時間半ほどで羅臼湖に着いた。周りは原生林とクマザサの茂みに被われ、今まで見てきた山の風景とはまったく違った別世界のようだった。眼前に広がった素晴らしい風景に五人とも言葉を失い、しばらくのあいだ無言で見とれていた。そして快晴の空の下で乾いた草地に座り込み、五人の自己紹介のような会話が弾んだ。

      羅臼湖羅臼湖1羅臼湖2
(パノラマカメラなど無かった時代、カメラを三脚に立て水平に左から順に数枚撮って繋げてみた。わかっていただけますでしょうか)


 この羅臼湖ツアーへ一緒に行くことになった五人、東京から二週間の休みを取って来た福田という女の人は夏樹よりも六歳も年上で、小さい会社だけれど社長だと言っていた。もう一人、静岡から来た清水という男も夏樹より年上で、こちらも仕事の休暇を利用して北海道に来ていた。そして露天風呂に一緒に行った田中と森。
「わたし、この後、襟裳まで行きたいんだけど、だいじょうぶかなあ」
 福田が言った。
「昼ごろにはユースホステルに戻れると思うから、じゅうぶん間に合うと思うよ」
 田中が言った。
「僕も今日は摩周湖ユースホステルに予約しているんですよ。時間は余裕なんですけどね」
 一週間や二週間の休暇で北海道への旅はやはり強行軍のようで、この二人は羅臼湖から戻れば次の目的地に向かわないといけなかった。森と田中、夏樹たち三人のプー太郎は、早々と岩尾別ユースホステルに連泊を決めていた。夏樹は北海道で始めてのユースホステル連泊だった。
「ああ、気持ちええなあ」
 夏樹は大きく伸びをしながら草地に仰向けになり、快晴の空を眺めた。夏樹につられるように、他の四人も大の字なって草地に仰向けになった。

             記念撮影                      
             (清水(仮名)さんの撮影。後日、送っていただきました)



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2013.12.01 / Top↑
 草地の上に仰向けになり、快晴の空を眺めて、いつの間にか寝てしまったようだった。
「さあ、そろそろ戻りましょうか。昼前にはユースホステルを出発したいので」
 福田が草地に座ったままゆっくりと言った。
「そうですね。いやあ気持ちよかったなあ」
 清水が大きく伸びをしながら言った。
 五人は来た道を歩き始めた。地元の話し、旅先での話し、仕事の話しなどなど、色々な話しをしながら、五人が昨夜、偶然に知り合った仲とは思えないほどに仲良く歩いた。
 知床横断道路に戻り、ユースホステルへ帰った。福田と清水は玄関に置いていた荷物をバイクに積み、それぞれの目的地に向けて出発した。夏樹たち三人とユースホステルのペアレントさんとで見送った。
「また、どこかで・・・、良い旅を・・・」
 
 森と夏樹は再びバイクに跨り、田中の案内で秘境に向かった。ユースホステルから二キロほどウトロよりに走ったところから、海のほうへ未舗装の道へ入って行った。クマザサの草原の中を抜けると断崖絶壁に出て来た。ここにバイクを停め、その断崖になんとなく出来ている道を下って行くと、垂直に切り立った崖を数十メートルの幅で流れ落ちる滝が見えてきた。さらに降りるとその滝を隠すように屏風のように大きな岩が現れ、滝と屏風岩の間をさらに下りると海岸に畳三畳ほどの大きく平らな岩があり、ユースホステルでは『昼寝石』と命名していた。

            第三の秘境
                     第三の秘境2

            第三の秘境3

         昼寝岩
      (中央が『昼寝岩』と思われる)

「ここが、ペアレントさんが言っていた、第三の秘境と言う所。昨日も三人で来たのだけれど、是非もう一度来たかったんだ。この昼寝石で半日も寝ていると、頭が真っ白になるって言うのだけどね。分かるような気がするんだぁ」
 田中が少し自慢げに話した。(今、改めて地図を見ると像の鼻かフレぺの滝だと思われる)
 この岩に寝転んでいると、断崖の上に広がる快晴の空と、目の前をほぼ真上から何本もの水の筋が流れを落ちる滝の音と、波の音しか聞こえない。半日もここに居ると、頭が真っ白になるかも知れない。


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2013.12.08 / Top↑
 森と田中と夏樹は、通称昼寝岩の上に仰向けに寝転び、快晴の空を眺めながら話しをした。
「森さんと田中さんは何で仕事を辞めて来たんですぅ」
「俺はね、辞めるつもりは無かったのだけれど、色々と事情があって別の仕事をすることにしたんだ。それで、予定より少し早めに前の会社を辞めて、学生時代によく来た北海道へもう一度来たかったのさ。それに知床には今までに来られなかったからね」
「ほな、帰ったら新しい職場で新規一転ですか」
「まあ、そういうこと。森さんは」
「わたし、わたしはねえ、ただ全国を回って見たかったの。全国の林道をこのバイクで走り回りたかったの。その後のことは、今は何も考えてないのよ」
「女の人でオフ専門に攻める人は珍しいんじゃないかな」
「かもね、わたし、男みたいでしょ。でも正真正銘の女だから。ぜんぜんらしくないけれどね」
 森は髪も短く、バイクの走り方は男顔負けの走り方だった。ヘルメットを被れば、女とは誰も思わないだろう。
「ヒゲさんはどうなのよ」
「おれも、とにかく全国を回ってみたかった。別にバイクが好きでバイクで来たわけやないねん。バイクが一番、安くて行動範囲が広いからねえ。北海道も一周にはこだわらず、行った先で情報を仕入れて行ってみたい所へ行く。できるときにね」
「じゃあ、ヒゲさんが京都に帰ったころに関西方面に行こうかなあ。その時は案内してね。修学旅行で行ったけれど、舞妓さんに会うことが出来なくてさあ、一緒に写真が撮りたいのよねえ」
「いやあ、会うことは出来るけど、一緒には写真を撮ってはくれへんと思うよ。忙しいさかいなあ」
「夏樹さんて京都の人なのに『どすえぇ』って言わないねえ」
「言いませんて、そういう言葉は、いわゆる業界言葉で、舞妓さんみたいな花街の人とか、老舗の店の人とか、一部の人だけで、一般の人は使わへんよ」
「へえ、そうなんや。京都の人はみんなが『どすえぇ』って言うのだと思っていたよ」
 お国言葉の話は、いつも盛り上がる話題の一つだった。




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2013.12.14 / Top↑
 昼寝岩の上で大の字に仰向けになり話しをしていたが、夏樹はいつの間にか寝入ってしまったようだった。
「ヒゲさん、帰るよ、起きなよ」
 森に夏樹は起こされた。時計を見るとちょうど三時だった。降りてきた断崖を登るのは、かなり大変だった。降りるのも危険だったが、登るには多くの体力を使い、息を切らしながら一歩づつ上へ足を運んだ。
「はあ、やっと上に着いた。ああ、しんど」
 崖の上で腰を降ろし、少し休憩をしてからバイクに乗ってユースホステルに戻った。この日も多くの宿泊者が来ていた。何人かは昨日からの連泊のようで、覚えのある顔があった。
「あれ、ヒゲさん、連泊しはるの」
 大阪から来ている女の人が声をかけてきた。
「おお、あんたも連泊するんや。車で来ている人は見つかったんかぁ」
「ばっちりよ、それでカムイワッカの滝まで連れって行ってもらってん。上の方までは登らんかったんやけど、すごかったわぁ」
「ところで、あんたの名前を聞いてへんかったなあ。俺は夏樹です」
「あれ、そうやったかいなあ。うちはヒゲさんの名前は知ってるけど、なんでやろ。土本です。東大阪市出身です」
「大阪って京都から近いんやけど、あんまり行ったことないさかいに、ようわからんのやけど、東大阪って言うぐらいやから、奈良に近い方なんやろなあ」
「まあ、そう言うことやなあ、大阪の東やから、東大阪なんやろなあ」
 二人の会話は、面白くない漫才をしているような会話だった。
「きのうの朝陽は拝めんかったけど、今日の夕陽は拝めるみたいやから、すぐそこの海岸へ見に行かへんか。さっきペアレントさんが教えてくれはったんよ」
「行く。カメラを取ってくるは」
 ユースホステルに泊まっている多くのホステラーは、海岸へ向かってぞろぞろと歩いて行った。海岸へ着いた時には、水平線に少し雲が出ていたが、もう少しで太陽が沈んでしまいそうだった。
 まったく雲がない水平線に沈む夕陽を見てみたいと思うのだが、いまだにその思いは叶っていない。

                岩尾別海岸の夕陽


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2013.12.23 / Top↑
 岩尾別ユースホステルでの二泊目、夕食後のミーティングは昨日と同じ内容の周辺案内をペアレントさんが面白、可笑しく話してくれた。宿泊者の多くは今日はじめてここに泊まった人たちだ。夏樹たち連泊者も同じようにペアレントさんの話を楽しんだ。
「ヒゲさん、明日さあ、カムイワッカの温泉に行こうよ。今日みたいに長靴を借りてさあ」
 ミーティングが終わると直ぐに森が話しかけてきた。
「えっ、二人で、露天風呂に行くの・・・」
「だって、一人で行くと、何かあった時に困るじゃん、それになんとなく気が合う友達でしょ、わたし達」
「まあねえ、じゃあ、カムイワッカに付き合うから、俺のお願いも聞いてくれるか」
「もちろん、いいよ」
「おにぎりを持って、第三の秘境の昼寝岩で昼を食べて、ゆっくりとあそこで昼寝がしたい」
「いいよ、うんうん、それ、いいねえ。そうしよう」
 そう言いながら森はペアレントさんのところへ長靴とおにぎりの予約をしに行った。
 翌朝、お昼用のおにぎりとタオルをDバッグに積め、長靴を履いてバイクに跨り、カムイワッカの滝へ向かった。道路から直ぐの川の上流を目指し、ユースホステルで習ったように靴を脱ぎ、靴下一枚で岩肌を登って行く。見た目は川の左側の方がなだらかな斜面で登りやすそうだが、ペアレントさんが言うには左側はところどころから熱湯が岩肌を流れ出るところがあるのだそうだ。右側の方が急斜面で登りが難しいように見えるが、両手を付きゆっくりと登って行けば大丈夫だと教わってきた。熱湯が出てくることなど知らない数人の一般観光客が左側を登っていたが、途中で大量の熱湯流出地帯に足止めされていた。夏樹たちがいる右側へは川幅があり水量も多く渡ってはこられない。仕方なく引き返して行った。
 一時間近く登って来ただろうか、高さ五メートルほどの滝があり、その下の滝つぼが目指すカムイワッカ温泉だ。すばやく服を脱ぎタオル一枚を持って滝つぼへ入った。
「ちょっとぬるくないか」
「ヒゲさん、写真を撮ってあげるよ」
 そう言って写してもらい、その後で森も滝つぼへ入った。
             
                     カムイワッカ温泉



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2013.12.30 / Top↑

  あけまして おめでとうございます

    本年もよしくお願いします



 ブログを書くようになって6年目になりました。
 今の章が一番書きたかったころの話しです。
 本当に拙い文章ですが、なんとかお付き合い下さい。

 翼芭里鉄道建設記録の方は長い期間を工事が中断しておりますが
 当鉄道の社長の怠慢による作業員不足が原因であります。
 今年は社員が一丸となり、社長を改心させ工事を再開し
早期開通を目指したいと思います。


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2013.12.31 / Top↑

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