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 ゆっくりとコーヒーを二杯飲み、いつまでも三人の会話は尽きることがなかったが、所沢ナンバーの男が「じゃぁ、そろそろ・・・」と口火を切った。森も夏樹も急ぐ旅ではないが、いつまでもこうして話しをしているわけにもいかず、テントをたたみ、荷物をまとめバイクに括り付けた。
「ほな、またどこかで、会いましょう」
「そうだね、またどこかで、会えるような気がするわ」
「それじゃ、みなさん、良い旅を」
 三人はそれぞれが、おもいの場所へバイクを走らせた。

 国道240号線を網走へ向う。釧北峠付近から厚い霧に被われてしまい、とても寒かった。スピードを出すとますます体感温度が下がる。比較的ゆっくりとしたスピードで北へ走った。
 オンネトーから100キロメートルほどで網走市に入った。まだ昼前だが霧雨の中を走り、寒さはもちろんだが霧がヘルメットのシールドに纏わり付きとても視界が悪くなった。シールドを上げれば視界は良くなると思い、しばらく上げて走ってみたが、こんどはメガネに霧が纏わり付いてしまった。こうなるととても厄介で、一旦バイクを停めティッシュを取り出、しメガネの水滴を拭った。シールドの水滴を何度も拭ったバイク用グローブは、中まで水が浸み込み、指がかじかんできた。体中が冷えきってしまった。ここから50キロメートルほどで今日の目的地「船長の家」に着いてしまう。とりあえず予約の電話を入れることにした。名前と交通手段だけ聞かれ、宿泊予約は完了した。
 網走に行ったら、少し入場料が高いが「網走監獄」は見たほうがいいと聞いていた。本当の刑務所ではなく、明治時代に建てられ実際に刑務所として使われていた建物を移築、保存公開されている博物館だ。入り口も当時の刑務所の門があり、「網走監獄」と書かれた看板が建てかけられていた。

         網走監獄

 平日の午前中には観光客は少なく、いや夏樹一人だけが見学者だった。五棟の舎房は放射状になっていて、少ない人数で看視しやすいのだそうだ。その一つの棟の天窓付近に等身大の人形が、今にも天窓を突き破り逃げようとしていた。昭和の脱獄王がこうやって脱獄したという様子を再現したのだそうだ。
(新たにネットでここのことを調べたが、当時とほとんど変っていないようだ。入場料も1,050円、消費税分だけが値上がりしたようだ)



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2014.03.02 / Top↑
 網走監獄の房舎は夏だと言うのにとても寒く、皮のライダーパンツに安物の合皮ジャンパーでは寒さを凌ぐことはできなかった。早々に引き上げることにした。意気地なしの夏樹は今日も早めに宿に入り、風呂に浸かってゆっくりとしようと考えているのだ。しかし、まだ昼を少し過ぎた時間だ、いくらなんでもこんな早い時間に宿へ入るわけにも行かず、どうしようかと地図と睨めっこをした。

             湧網線
         (湧別と網走間を結んでいた、湧網線。今は廃線となってしまった)

 岩尾別ユースホステルで常呂町の「しゃべりたい」と言う喫茶店はいいよと、進められたことを思い出した。もう、すぐそこである、湧網線の常呂駅に行き「しゃべりたい」と言う喫茶店の場所を聞き、さっそく向った。駅から近いところにその喫茶店はあった。ログキャビン風の建物で、店の雰囲気はとても良かった。客は夏樹の他には誰もいなかった。
「いらしゃい」
 その一言はとても良い感じのマスターだった。
「こんにちは、ええとこやから、寄るといいよって聞いて来たんですけど」
「なかなか、うちも有名になったものだねえ。ここへ来てくれた旅人には、写真を撮って、送っているんですよ。後で送り先の住所を教えてね」
「へえ、じゃあお願いします」
 夏樹は写真を撮ってもらうために少しポーズを取った」
「いやいや、先に何か注文してよ・・・」
「ですよね、昼飯はさっきすませたから、コーヒーだけでもかまいませんか」
「いいよ、お兄さんは、関西から来たライダーだね、昨日も大阪から来た女の人が、一人旅をしていたなあ」
 そう言えば岩尾別ユースホステルで一緒だった大阪の土本が、船長の家にはなんとしても行ってみたい、と言っていたことを思い出した。昨日、ここへ寄ったのは彼女かも知れない。
「その、女の人って列車で旅をしてる人でしたか」
「そうそう、周遊券を二枚も買って来たって言っていたなあ」
「写真も撮ってもらってました」
「もちろん、なかなか面白い人だたねえ」
「もしかして、土本って言うてませんでした・・・」



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2014.03.11 / Top↑
「ええと、そうそう、住所録にはそう書いていたなあ」
 喫茶「しゃべりたい」のマスターはノートを開き数ページめくり、昨日のページを見つけ土本が来たことを確認した。
「ここから、どこへ行くって言うてましたか。あっ、おととい、岩尾別のユースホステルで一緒だったんですよ」
「確か、船長の家に行く方法を聞いていたから、泊まったんじゃないかなあ」
「やっぱり、彼女とは標津のユースホステルでも同宿だったんですよ。俺はバイクやけど、彼女は周遊券での旅。それやのに二回も同じ宿で会えるやなんて・・・、おもしろいと思いませんか」
「まあ、気ままな旅の楽しみの一つだよね。ここにはそんな旅人が多く来てくれて、色々な話しを聞かせてくれるよ」
 マスターと夏樹はいろいろな旅の話をした。コーヒー一杯で一時間は話しをしただろうか。でも、とても短い一時間だった。
「コーヒー美味しかったです。久しぶりに、本格コーヒーを飲みました。ごちそうさまです」
「これからどこまで行くのか、気をつけて走ってね」
「はい、ありがとうございます。おぉきにぃ」
「ちょっと待って、写真を撮るのを忘れていたよ。必ず送るから、ここに送り先を書いて行ってね」
 写真を撮ってもらい、ノートに実家の住所を書き、店をあとにした。外は曇り空、せっかく暖まった体がいっきに冷えるほどに気温は低かった。
 
              しゃべりたい

(写真は年が変った二月に送られてきた。忘れたころに楽しかった思い出がよみがえってきたことを思い出した)

 バイクで切る風はとても冷たかった。だからゆっくりと走った。それでも常呂町の「しゃべりたい」から「船長の家」まではすぐである。
 「しゃべりたい」で聞いてきた場所の辺りに着いたのだが「船長の家」が見つからない。周辺をうろうろと走っていると、洋風のペンションのような建物に「ペンション・ハウス オブ キャプテン」の看板を見つけた。その下に小さく「船長の家」と書かれていた。
「ほんまに、ここなんやろか。民宿やのうて、ペンションて書いてあるやんか・・・」
 夏樹は恐る恐る建物の中へ入って行った。


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2014.03.21 / Top↑
「こんにちは」
 玄関で中を伺うように声をだした。しばらくして奥から少し年配のおじさんが出て来た。
「いらしゃい、予約の方かな」
「さっき電話した、夏樹です」
「一人でバイクの人だね、じゃあここに住所と名前を書いてね。部屋は相部屋だけど、問題ないよね。シーツは部屋に置いてあるから、それを使ってね」
 言われたとおりに住所と名前を書き、部屋番号を聞いて荷物を運んだ。部屋は和室にテレビが一台置かれていた。すでに二人の先客がくつろいでいた。
「こんちは」
「どうも、こんにちは」
 なんだかとても懐かしい響きの話し方だった。それもそのはず、兵庫県姫路から来た人だった。
「あれ、君も関西人なの」
 なんとなく、いやみな話し方だった。それも第一印象だけで、二人ともバイクで一人旅放浪中、東京から来たと言うこの男は、大沼キャンプ場に一週間いたと言うのだ。
「あれ、俺も一泊やけどテントを張ったで、いつやったかな、函館に着いたんが十三日やから、十四日やなあ」
「十四日なら俺も居たはずだけど、バイクで来ている奴が大勢いたからさ、全員の顔なんか覚えちゃいねえよなあ。少し遅くなってから来た大学生が、角瓶を持ってきて、みんなに振舞っていたのは覚えているなあ」
「その隣に座っていたのが、俺やがな」
「ええ、本当に。いやあ、あの時は楽しかったよなあ、しさしぶりに角瓶などという高い酒を飲むことができたからさあ」
「もしかして、おじいさんも東京生まれの江戸っ子って言うのと、ちゃいますか」
 姫路から来た男が言った。
「そうよ、五代続く江戸っ子よ」
「なんで、わかったん」
「さっき、しさしぶりって言うてはったからなあ」
「そう、江戸っ子は「し」と「ひ」が苦手で・・・」
 五代目の江戸っ子は頭をかきながら苦笑いをした。それからは三人で旅情報の交換話しに盛り上がり、そのまま夕食の時も三人で大いに盛り上がった。






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2014.03.30 / Top↑

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