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 羽幌のキャンプ場の朝は、三時半ごろにテントの上にとまったカラスの鳴き声で目が覚めた。三時半だというのに空は明るく、どんよりとした雲が立ち込めていた。東の空が薄く赤に染まっていた。
「朝焼けは、雨降りやなあ・・・」

                  朝焼け

 簡単に朝飯を済ませ、テントを片付け、出発の準備をして六時に羽幌港へ向った。港へ着いたころには、ますます空模様が怪しく暗い雲が広がり、今にも雨が降って来そうである。
 バイクと大きい荷物は港に預け、七時半に連絡船が出港。途中、焼尻島に寄り天売島までは一時間三十五分の船旅だ。さほど揺れなかったが寒いので客室に入った。客室は五十人ほどで満席になるような小さな船で、その半分ほどの席に客が座り、夏樹も窓際の席に座って外を眺めていたが、グレー一色の船窓はつまらなかった。揺れ具合がちょうど良かったのか、うとうとと寝入ってしまった。
 定刻の九時三十五分に天売島に到着。十二キロほどの島内一周道路を歩くが、お目当てのオロロン鳥の姿を見ることはできなかった。代わりに数百、いや数千羽ものウミネコがあちらこちらに飛んでいた。道路には糞が散乱し、それを踏まないように避けながら前に進んだ。ちょうど産卵期なのか時々岩陰に雛の姿も見られた。それを狙うかのように、遠巻きにカラスが見ているようだった。
 夏樹の頭の上にも数羽のウミネコが旋回していた。餌をもらおうと思っているのか、それとも近くに雛がいるからと威嚇しているのだろうか。目の前を糞が落ちていった。もう少しで頭に落ちるところだった。しばらくすると一羽も旋回しなくなり、やはり威嚇のために近づいてきたようだった。
 港に近くなったころに小さな郵便局を見つけた。旅の間は多くの現金を持ち歩かないようにしていた。今ならコンビニでどこの銀行のキャッシュカードでも現金を手にすることができるが、当時は一部の大手銀行だけで、全国どこでも預金を引き降ろせるのは郵便局が一番便利だった。こんな小さな島にも郵便局があり、現金を手にすることができるのだから。それとある落語家が仕事で全国を回りながら、初めて訪れた地方の郵便局に寄り、一万円を入金して新しい通帳を作ると、その郵便局の名前の判を押してくれる。それをコレクションにしているという話しを聞き、これは面白いと夏樹も始めたのだ。夏樹は一万円を入金するのではなく、一万円を出金した。一冊の古い郵便貯金総合通帳には全国二十七ヶ所の郵便局の判が押されている。天売島郵便局の判もある。

        通帳2
          通帳      


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2014.09.07 / Top↑
                 焼尻島
                    《天売島から焼尻島を望む》

 天売島を徒歩で一周して港へ戻ってきた時には、雨が降り始めた。やはり朝焼けは雨降りの前兆だったようだ。
 帰りの船も客室の半分ほどの客が乗っていた。夏樹は往きと同じような場所に座り、往きと同じように居眠りをしていた。船窓から見える空はどこも濃い灰色で今日中に雨があがる気配はなく、雨ざらしになったバイクのことをふと思い出した。
「今日はキャンプができひんなあ」
 北海道に来る前も、来てからもキャンプの連泊をしていない。通帳の残高にあまり余裕がなくなってきている、できるだけキャンプをして節約していかないとならなかった。地図とユースホステルガイドを開くと、北海道に入って五日目に泊まった小平望洋台ユースホステルが近かった。港に着いたらすぐに予約の電話を入れた。
「夏樹君ですね、ほんとうにお帰りなさいだね」
「ただいまです。今日は泊まりの人が多いみたいですね」
 二回目の泊まりで顔を覚えていてくれるペアレントさんに迎えられ、なんとなく気持ちがほっこりとする。
「今日は君を入れて八人かな、みんな男だけどね。今日はちゃんとミーティングしようかな」
「楽しみにしています」
 雨の中を合羽を着てバイクを走らせて来たから、身体の芯まで冷えてしまった。まずは風呂に入り身体を温めることにした。風呂から上がり食堂へ行くと、他の四人と二人と一人が食事をしていた。夏樹を入れると四組なんだなと、なんとなくわかる雰囲気だった。
 夏樹もトレーにおかずと味噌汁、ご飯を載せとりあえず一人で来ているのだろうと思われる人のテーブルを挟んで立った。
「ここ、いいですか」
「どうぞ、僕もひとりなんで」
「大学生ですか」
「そうです、実家から札幌の大学に行っています」
「俺は京都から、北海道に来て三週間ぐらいかな。北海道って夏やのに寒いねぇ」
「札幌は普通に暑いですよ。まあ、本州よりは涼しいと思いますけど」
「そちら、京都からいらしたんですか」
 突然、四人組と思われる中の一人が話しかけてきた。
「はい、そうです」
「やっぱり関西弁はいいねえ。俺、関西弁好きなんだよなあ」
「そうか、お前は関西の大学に居たんだっけなあ」
 夏樹は、今夜も楽しい一夜を過ごせそうな予感がしてきた。


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2014.09.15 / Top↑
 関西の大学に居たと言う一人を含む四人組は札幌の土木会社の人たちで、仕事で来ているのだそうだ。四人ともお揃いの作業着を着ていた。
「関西ってどこの大学ですか」
「いや、名乗るには恥ずかしい三流大学ですよ」
「四年間も住んだはったら、関西弁に染まってしまったでしょ」
「少しね、初めは関西弁がよく分からなくてさ、なぜいつも喧嘩しているんだろうって思ったよ」
「地域によってはそう聞こえるかもしれへんねえ」
 そんな言葉の話は初対面同士でも、話が盛り上がることが多い。
「北海道の方言も分からないと思うよ。いろんな土地から開拓に来た人たちの集まりだから、様々な方言が混ざって独特の言葉ができたりしているしね」
 別の男の人が話し始めた。
 東京からバイクの旅をしている二人組と、ペアレントさんも混ざって北海道弁の話しで盛り上がってきた。
(残念ながら北海道弁の詳細については記録にも記憶にもなく、ただそんな話しをしながら、楽しい一晩が過ぎていったことだけは覚えている)
 お揃いの作業着を着ている四人組みは、みな既婚者で子供もいるそうだ。出張日を安くするためにユースホステルに泊まっているのではなく、ユースホステルに泊まれば多くの旅人と出会えるからだと言っていた。四人とも学生時代から全国を旅して廻ったようだ。 
 東京からバイクで旅をしている二人組みも、夏樹より十歳は年長の人たちで夏季休暇を利用して北海道を廻っているのだそうだ。ユースホステルに泊まって、夏樹より年長の人と出会うことはあまりない。夏樹よりも旅の経験も豊富で、今までの旅の話を多く聞くことができ、これからの旅の参考としても、とても興味深い話しを聞くことができた。
「もうこんな時間じゃないですか、残念ですがそろそろ寝ることにしましょう」
 ペアレントさんの一言で皆は席を立った。
「では、おやすみなさい」
 夏樹が一番に言った。
「ほな、お休みなさい」
 関西の大学に居た男の人が言った。それに続いて他の三人も真似をして言ったが、とてもへんなイントネーションだった。


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2014.09.23 / Top↑

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