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 風呂ももちろん、もともとこの部屋にあった風呂で、一人用のバスタブとシャワーだけの家庭用のものと同じだ。ユースホステルや民宿には決して存在しないであろうタイプのものだ。
 風呂からあがるとオーナーが、なにやら透明の袋に入ったものを持ってきてくれた。
「これ夕食に食べて」
 山女、虹鱒、アスパラだと言って夏樹の前に出した。
「お金は要らないから、いずれ地元で取れる魚や野菜、肉なんかを泊り客に安く提供しようと思ってね、今日は君に試食をしてもらって、どんなものかね。部屋の外にバーベキューコンロを用意しているから」
「おぉきにぃ、ありがとうございます」
「これも、飲んで」
 そう言って缶ジュースを二本くれた。
「炭を熾してくるから、少し待っていて」
 すぐに部屋から飛び出して行った。部屋の洗面所に置いてあったドライヤーで、伸び放題になっている髪を乾かした。何日ぶりのドライヤーだろうか、何となく清々しい気分に浸れた。
 オーナーが部屋の外から夏樹を呼ぶ声がした。先ほどもらった食材を持って外へ向った。
「はい、おにぎりも食べて。そして、この網で魚を焼いて・・・」
 なんとも楽しそうである。その時近くを走るバイクの音が聞こえた。少なくとも二台の大型のバイクの音だった。そのバイクは近づいてきて元気村の受付辺りで止まった。大きな丸いライトが二個、こちらを向いていた。
「おっ、お客さんかな・・・」
 オーナーは飛んで走って行った。まもなく上下を黒皮のライダースーツを纏った男二人が、大きな荷物を持ってやって来た。その後ろにはオーナーがなにやら透明の袋を、また持って来た。先ほどより少し大きめの袋だった。
「これ、ラム肉。お客が増えたから、今日は大サービス、一緒に食べて。それと、夏樹君だっけ、彼らにお風呂を貸してあげてね。同じ部屋を使って良いよっていったんだけど、どうしてもテントにするって言うからさ。だから風呂だけ君の部屋のを貸してあげてね」
「はい、もちろん、いいですよ」
「それと、君達はこの『元気村』の初めてのお客だから、全部無料サービス。その代わりこのチラシをこの先で出会った人に渡して、宣伝してきてね」
 そう言って手作りのチラシを数枚渡された。

                      元気村

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2015.03.07 / Top↑
 黒皮のライダースーツを纏った二人は高知から来たと言っていた。仕事は二週間の休暇を取り、とにかく大急ぎで北海道を回ると色黒で鼻の下に立派なヒゲを蓄えた男が言った。夏樹よりは少し年下のように見える。
「明日の朝も、夜明けとともに出発して、出来るだけ距離を稼ぎたくて。テントの方が目覚めがいいんで」
 二人は口数が少なく、夏樹と三人の会話はあまり膨れることなく、オーナーにもらったおにぎりとラム肉を食べると早々にテントに戻って行った。
「じゃ、俺達、朝が早いんで。風呂、入りに行ってもいいすか」
「あっ、どうぞどうぞ。おれはもう少しビールが残ってるから、ここにいますから」

 翌朝は高知から来たライダーが部屋をノックする音で目が覚めた。自分で買ったソーセージとゆで卵一個、レタス少々を差し入れてくれた。
「俺らはもう出発しますんで」
「おぉきにい、今日は天気がエエ見たいやから、走りやすいみたいやね。気をつけて、また、どこかで会えるとエエねぇ」
「そうですね、じゃ・・・」 
 すでに上下を黒皮のライダースーツ纏い、片手にはヘルメットを持ち準備万端のようだ。軽く頭を下げ部屋を出て行った。

 今朝の朝食は高知のライダーから差し入れて貰ったものに、夏樹が買ったマカロニサラダとアンパンが加わり、キャンプをしての朝食としては少し豪華(?)なものになった。
 朝から天気がいいととても気持ちよく、いつもより早く出発したくなってくる。残すことの出来ない食材を優先に食べ、アンパンは少し残して朝食は終わりにし、荷物をまとめにかかった。受付の近くでオーナーがなにやら忙しそうに動いていた。オープンに向けての準備なのか長靴を履き、軍手をはめていた。
「おはようございます」
「おはよう。高知のライダーはもう出かけたよ」
「そうみたいですね。どっちの方へ行ったんやろね」
「北へ向うって言っていたなあ。夏樹君は・・・」
「浜頓別に。クッチャロ湖の祭りが近いんで、参加するって約束してるんですよ」
「おもしろそうだね。宣伝、しっかりと頼むよ」
「はい。いっぱいご馳走になってありがとうございます。チャンと宣伝してきますから」
「じゃ、気をつけてね。行ってらっしゃい」
「おぉきにぃ・・・」

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2015.03.15 / Top↑
 天気は快晴。オホーツク沿岸の町、湧別へ向い、海沿いを浜頓別目指して意気揚々とバイクに跨り駆け出したのだが、国道333号線の北見峠手前から急に雲が出て来た。峠付近からは十メートル先も見えないほどの濃い霧が一面を覆った。峠を降りると霧は少し晴れたが、この先浜頓別に着くまで、この霧との戦いは続いた。
 白滝からは勇網線を走る「特急オホーツク」と並走を楽しむことが出来た。
 国道238号線、紋別からは沿岸道路を走る。空にはどんよりとした雲が広がり、沿岸を走っているのに海を見ることはできないほどの濃霧があらわれ、時より数メートル先の視界を遮った。
 霧とは厄介なもので、ヘルメットのシールドが曇ったように纏わり付き、雨滴がつくより視界が悪くなる。ハンカチ代わりにバンダンを左手に持ち、纏わり付く霧の水滴を拭きながら前に進む。日差しもないから体感はとても寒い。雨が降っているわけではないから道路は乾いている。しかし、バイクを停めて休憩するまで気がつかなかったのだが、合皮シャンパー、穴の開いた皮パン、首に巻いている防寒用のマフラーまでがずぶ濡れになっていた。シールドをふき取るバンダナが絞れるほどにずぶ濡れなのだから、シールド以外の部分も濡れているのは当然である。
 浜頓別ユースホステルには四時過ぎに着いた。
「ただいまぁ」
「お帰りぃ・・・、あれ、ヒゲさんやんか」
 出迎えてくれたのは標津、岩尾別のユースホステルで一緒だった大阪から来ている土本だった。
「どないしたん。ここで三回目やね」
「どこのユースホステルやったかなあ、ここの湖水祭りは面白いって聞いたし、ちょうど一枚目の周遊券が終わったから、しばらくここに居ようかなって。一週間だけのヘルパーとして置いてもらえることになったんよ。ヒゲさんは」
「一週間前かな、たまたまここに来て、湖水祭りがあるからって聞いて、その前に小樽からフェリーで帰る人を見送りに行ったりして、ほんで帰ってきたんや」
「フェリーの見送りって、うちもやってみたかったなあぁ」
「バイクで大阪から来たはった二人の女の人でな・・・」
 大きな荷物を玄関に置き、泊まるための様々な手続きなどをする前に、二人で話しこんでしまった。そこへペアレントのお父さんが宿泊カードを持ってきた。
「夏樹君、お帰り。まずはこれ書いて、それとシーツはこれね。部屋は前のときと同じ部屋ね。森山君は牧場に行っていて、今日、帰ってくるかな」
「えっ、そうなんですか・・・」
 夏樹も牧場に行ってみたかったのだ。


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2015.03.22 / Top↑

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