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 夕食の時間が近づいてきた頃に大阪出身の森山が帰って来た。牧場で借りていたのだろうか大きな麦わら帽子を被り、両手には汚れた軍手を着けたままの姿で入って来た。
「あぁ・・・つかれた・・」
 少し左右にふらつく素振りをみせている。
「おかえりぃ。今日で仕事は終わりなんだろ」
「そうですねん、明日からは別の牧場で人がほしいらしいんですけど、俺は断りました。他に来てくれる人はいてないかって聞かれたけど、わからんって言うときました」
「ええ、俺も行ってみたかったのに・・・」
「髭さんが戻って来てるて知らんかったし、もしかしたら今夜か明日の朝にここに電話が来るかも知れませんで」
「あの、大学生は、高田君やったかいなあ」
「いま来ると思うよ、さっきまで一緒にいたんやから」
 森山の話が終わる前に高田が入ってきた。
「髭さん、戻っていらしたのですね。お帰りなさい」
 とても十九歳とは思えないほどに丁寧な言葉を使う好青年だ。
「高田君、明日もどこかの牧場に行くんのですか」
「髭さん、今のなに、思いっきり変やったで、慣れん言葉を使おうと思たって、あかんて」
 夏樹もつられて丁寧に話そうとするが、そこは根っからの関西人、急こしらえではうまくはいかない。変な標準語になってしまた。(この状況を文章で表現することはとても難しい、何とか読む方にはご理解いただきたい)
「わかりません。電話が来たら行きますが、今のところは何とも・・・」
 高田はそう言ってゆっくりと椅に座った。
「夏樹君、慌てなくても手伝いが必要だったら明日の朝には牧場から電話が来るよ。それよりもう少しで夕飯だから、今日の泊りは君たち三人だけ。明日からはお祭りに参加する人たちがもう少し来るかな」
 ペアレントさんがそう言って厨房の方へ入っていった。
 泊りは夏樹と森山と高田の三人だけ。ヘルパーは前からここにいる二人と大阪から来た土本の三人。夕食後はこの六人とペアレントさんと他愛のない会話で盛り上がり、少し夜更かしをしてしまった。と言っても十一時には部屋に戻り就寝となった。ユースホステルの消灯は一応、十時が決まりなのだ。

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2015.04.12 / Top↑
 翌朝、牧場からの電話はなかった。仕方がないので、今日もユースホステルに泊まることにして、浜頓別の街へフィルム、煙草などをもとめて買い物に出かけた。
 夏樹が吸っていた煙草は、柄にもなく輸入品だ。どこにでも売っているというものではなかったため、見つけた時には五個ほどをまとめ買いしていた。この時はすでに買い置きしていたものも無くなり、仕方なく別のものを吸っていた。浜頓別の街に出て見つけた文具屋さんにはフィルムや雑誌、煙草も置いていた。そこに夏樹が愛煙する輸入品の煙草を見つけ、心の中で満面の笑みを醸し出していた。
「よかった・・・、やっと見つけた」
 昼前にユースホステルに戻った。
「夏樹君、君が出かけて直ぐに牧場から電話があってさ、高田君一人で行っちゃったよ」
「えぇ、そうなんですか」
「昼からでもいいから、来てほしいって言っていたから。行くのだったら連絡するけど」
「はい、お願いします」
 電話をかけにペアレントさんが事務室へ向かった。そして、直ぐに戻って来た。
「OKだって、朝が早いから牧場の人の家に泊まってほしいって。昼ご飯を食べたら、荷物を持って行ってください」
「はい、ありがとうございます」
「湖水祭りには戻って来てね」
「はい、それは約束します。だから四日間、いや実質三日しか手伝えへんけど、それどもいいのかな」
「おそらく、それぐらいで,いちだんらくするんじゃないかなぁ」
 ペアレントさんに地図を書いてもらい、それを頼りにバイクで向かう。ユースホステルから二十分ほどで、神田牧場と書かれた手書きの看板を見つけた。ここが住み込みで厄介になる牧場だ。たった三日だけど。
 着いて直ぐに高田君が牛舎の横に積まれた乾草の塊に座り、夏樹に手を振ってくれた。その奥の方で大きなトラクターの周りで、牧場の人たち数人が作業をしていた。
「夏樹さん、やっぱり来ましたか。出かけられた直後に電話がきたのですが、連絡方がないので一人で先に来ました」
「それはいいんやけど、どうしたん。こんなとこに座っててええの」
「あのとおり、牧草を刈るトラクターの調子が悪くて、作業が中断しています。間もなく直ると思いますから、牧場主の神田さんに夏樹さんのことを紹介しますね」
 そう言って高田はトラクターの方へ向かって行った。


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2015.04.18 / Top↑
「いらっしゃい、ユースホステルから来てくれた人ね。いまトラクターの調子が悪いから、今のうちに荷物を家の玄関に置いて作業できる服に着替えてきて」
 名前も聞かずにすぐに荷物を家に置かせるなんて、夏樹を疑っていないのだろうか、それともユースホステルの紹介だから信じているのか。
「そうそう、名前だけでも聞いておかないとね」
「夏樹です、お願いします」
「いつまで手伝ってもらえるかなぁ」
「しあさってにはユースホステルに戻りたいんですが」
「いいよ、いいよ、二、三日でもいいから手伝ってもらえれば・・・」
 神田はそう言ってトラクターの方へ戻って行き、高田が夏樹を家に案内してくれた。
 玄関に荷物を置き作業ができる服に着替え高田の居るところへもどると、大きなトラクターがけたたましい音を出して牧草地の方へ走って行くのが見えた。
「夏樹さん、作業が再開です。あっちのサイロの方で待っていましょ。はい軍手」
 高田が新しい軍手を夏樹に手渡してくれた。しばらくするとトラクターのけたたましく大きな音がどんどん近づいてきた。刈った牧草を数日間乾燥させトラクターで集めてくる。コンベアーでサイロの上から落とし入れ、またけたたましく大きな音とともに牧草地へ戻って行った。
「さあ、やるぞぅ」
 神田のかけ声で三人はサイロの中に入った。サイロの中は気温と湿度が高く温めのサウナのような様子だ。サイロの上部からロープが三本たれ下がり、それを持ちながら乾燥した牧草を踏み固めていく作業だ。
「ゆっくりでいいから、転ばないように踏んでくれればいいんだ」
 乾いた草の匂いがとても強く漂っている。柔らかい草を踏み固めるだけと言っても、やはり足元はとても不安定だ。足を取られて何度も転びそうになった。気温が高いと言ってもそれほど暑いとは思わないが、湿度が相当高いようで汗が滴り落ちてくる。
「気持ちが悪くなって来たら、すぐに言ってね。草が完全乾燥していないから、少しだけどガスが出てくるんだ」
 過去にはガスを吸って倒れ、救急車で運ばれた人もいたと神田が言った。


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2015.04.26 / Top↑

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