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 翌朝は雨が降っていた。夏樹が目を覚ましとき、神田は牛舎に行ってしまっていた。
「おはようございます。すみません、寝坊してしまって」
「おはよう、まだ寝ていて良かったのに、早く起きても何もやることがないから」
 奥さんが微笑んで言った。
「でも、神田さんは仕事に行かはったんでしょ」
「乳しぼりに行ったよ、昨日来た人が直ぐに乳しぼりはできないから、それに今日は雨降りだから、干し草運びはできないしね」
 着替えて、布団をたたみ、顔を洗い、居間に座ってテレビを見ているお姉ちゃんの横に座り、体をもてあましていた。
「どうぞ、朝ご飯を食べて、食べないと仕事もできないからね」
 そう言ってテーブルの上にご飯とみそ汁、焼き魚が置かれた。
「はい、これもどうぞ」
「えっ、もしかして納豆ですか。ちょっとこれは苦手なんです」
「関西の人は納豆を食べないって本当だったんだ」
「はあ、売ってる店もあんまりないのとちゃうかなあ」
 今では健康食品として関西でも食べられているようだが、当時は食べている人を見たことがない・・・、おそらく。
 朝食を食べ終わる頃に神田が戻って来た。
「夏樹君おはよう、しっかりと眠れたかい、今日は雨降りだから干し草運びは中止だ。だから今日は牛舎の掃除を頼むよ」
 神田に新しい軍手とタオルを渡された。
「それと、ちょっとくたびれているけれど、この長靴を使って。じゃあ行こうか」
 牛は牧草地へ放たれていて牛舎にはいない。牛たちの糞はベルトコンベアーに乗って牛舎の外に出され、藁と混ぜて堆肥を作る。そのベルトから外れた糞をスコップでベルトに乗せ、コンベアーを動かして外へ出す作業をした。そのあとは藁と混ざった堆肥を一輪車に乗せて別の場所へ運び出す作業を頼まれた。
「一輪車なんか使ったことがないだろう、無理なくゆっくりと運んでくれればいいから」
 神田は乳搾り機械のメンテナンスをしていた。確かに一輪車など使ったことはなかった、それでも少しずつ要領を覚え、何往復かこなした。徐々になれてきて五時前には全ての堆肥を運び終えた。
「夏樹君、全部運んじゃったの、明日の昼頃までかかると思っていたのに。初めてなのにたいしたもんだ」
「いやあ、ありがとございます」
 後で聞かされたのだが、天気予報では明日も雨降りになりそうだから、半分は明日の仕事にするつもりだったというのだ。それをこの日だけで終わらせてしまっと言うのだ。
「明日には帰っちゃうんだよな、朝に乳搾りをしてみるかい」
「はい、やってみたいです」


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2015.06.06 / Top↑
 翌朝、五時三十分に起床。外はどんよりと曇っていた。一昨日から借りている長靴を履き牛舎へ向かう。牛舎の入り口には牛たちが群れを成して待っていた。入り口を開くと我さきに中へ入り、配合飼料などが入った餌箱へとゆっくりと向かう。それぞれに決まった餌箱があるのか、近くにあるところから埋まっていくわけでもなさそうだ。
 餌箱に首を突っ込むと、ロープをかけやすい位置に首輪が来るようになっていて、まずロープで牛たちを繋ぐことから始まる。わき目も振らずに餌をむさぼるように食べ始め、中には隣の牛の餌箱にまで首を突っ込む輩もいる。餌を食べつくし、腹も気持ちもゆっくりしたのか、あちらこちらで排便、排尿が始まった。しかしそんなことには構ってはいられない。入り口に近いところにいる牛から順に濡れた布で、必ず四本ある乳首を拭き、搾乳機へつながる吸引機を乳首につけると、二本ずつが交互に吸引するようにできている。吸引された生乳は透明のパイプを勢いよく流れ、牛舎の奥にあるタンクへ送られる。一頭の搾乳は五分ほどで終わり、首輪からロープを外すと牛は外へと歩き出す。二時間三十分ほどで全ての牛の搾乳が終わった。
 吸引機を取り付けるだけで搾乳できるから、乳搾りをしたという実感はないが、確実に生乳はタンクに溜まり、午前中には生乳専用のタンクローリーが取りに来るのだそうだ。
「夏樹君、お疲れ。今日は干し草刈りはやらないからね、朝飯食ったら、寝ていていいよ」
「お疲れさまです。今日はとてもいい経験をさせてもらえて、よかったです」
 朝飯の後は居間でテレビを見ながらごろごろしていた。そのうちに寝入ってしまったようだが、神田のいびきで目が覚めた時にはもう昼に近かった。このままここでゴロゴロしていても仕方がないので、昼飯をいただいたらユースホステルに向かうことにした。
「短い期間でしたが、お世話になりました。ほんま、ええ経験をさせてもらえて。ありがとうごじました」
「こちこっそ、助かったよ。もう帰っちゃうのか」
「はい、クッチャロ湖のお祭りが終わったら、本州へ向けて南下します」
「じゃあ、今度は冬に遊びにおいでよ。雪景色もなかなかいいよ」
「そうそう、寒いけど絶景だから、来てくださいな」
 奥さんも笑顔で見送ってくれた。


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2015.06.27 / Top↑

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