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 張りぼて組も美大生を中心に順調に進んでいるようで、いつの間にか作り手が増えていた。祭りが目的の宿泊者たちが次々と手伝い始めたようだ。少しでも目立つようにと大きめの段ボール箱に新聞紙で肉付けをし、その上から模造紙を張り付け色を塗っていた。少しでも似た顔付を描くのは美大生の女の人だ。
 リング作りもほぼ完成したのだが、発泡スチロールの上にコンパネの板、四隅に棒を立てて紐をロープとして渡しただけではなんだかおもしろくないし、安っぽくみえた。
「上田ハーン、これだけではなんかおもろないと思いまへんかぁ。なんかないかなあ」
「そうやなあ」
「ここに乗るキャラクターの名前を大きく書いて、張ってみたらいいんじゃないですか」
 札幌の大学生が言った。
「それがええかも知れんなあ。たしか裏の小屋にベニア板が何枚かあったなあ、あれに紙を貼って名前を書こう」
 夏樹の言葉に三人は小屋へ向かった。
 リングに見立てた筏と、それに乗る漕ぎ手が被るキャラクター張りぼてが完成した。いつの間にか二十人以上の人たちが何らかの手伝いをしていたようだ。
「なかなか面白そうじゃない。明日がたのしみだね」
 ペアレントさんが奥の厨房から出てきて微笑んだ。森山が大きく手を上げて夏樹の前へ一歩出てきた。
「上田ハン、ところで誰が乗るんですか」
「あのなあ・・・、まあええか。浮くとは思うけど、少しでも軽い人の方がええのちゃうかなあ」
「体重が軽い人となると、女の人の方がいいのかなあ」
 札幌の大学生が言った。
「私、乗りたい」
 美大生が右手を上げ、大きな声で言った。
「はい、これで一人決まり。女子やからダンプかな」
「いいですよ、ダンプ美山で」
 美大生の名前が美山と知ったのは、この時だった。
「ほな、猪木は森山君ね。細いから軽そうやし」
「おれがのるんでっか、わし、泳げへんのです・・・」
「それは大丈夫、深いところでの大人の膝より少し上あたりまでしかないから」
「ペアレントさん、あの湖ってそんなに浅いんでっか。ほなまあ、泳げんでもだいじょうぶかなぁ・・・」
「ほな、決まりやな。残るはメインのキン肉マン」
「おれ、乗ってもいいですか」
 札幌の大学生が、遠慮がちに右手を上げて言った。

                  湖水祭り1


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2015.08.09 / Top↑
 札幌の大学生は自分の提案した発泡スチロールを付けた筏が、彼の計算通りに湖に浮くのか、身をもって体感したいから乗りたいと言った。
「体重は確実に森山さんより重いですが、計算上は大丈夫、浮くはずです」
「ほな、これで筏に乗る人は決まりということで、あしたはみんなでこれを湖まで運ぶのを手伝ってくださいね」
 ここでちょうど夕飯の時間になり、夕食はこのユースホステルに泊まって一番の宿泊人数だった。今日来て少しだけ手伝った人も、初めから準備に加わった人も、一緒に明日の本番に向けて思い思いに語り合った。

 クッチャロ湖水祭りの当日は曇り空で今にも雨が降ってきそうだった。筏に乗る三人はそれぞれが被る張りぼての仮面を持ち、他の宿泊者たちは筏を担いで湖に向かった。ほとんどが二十歳を過ぎた大人たちが、完全に童心に戻り筏レースが始まる前から楽しんでいた。
「美山さんと学生さん、この辺から被って行った方がええのとちゃうか、少しでも子供たちの視線をこっちに向けて、点数稼ぎしましょうや」
 森山がイノキの張りぼてを被りながら、他の二人に言った。すると湖の入り口付近で数人の子供たちがそれを見つけ、直ぐに寄ってきた。森山の言う通り子供たちには人気を博した。

             人気者
 
     イノキ キン肉マン

 湖に着くとますます子どもたちが集まって来た。他の参加者も集まって来た。十チームほどだった。湖畔から直ぐのところから一斉にスタートし、五十メートルほど沖に出て戻って来るだけのレースだ。
「ほな三人とも頑張って、結果はもう見えたようなもんや、あれだけ子供に人気があるんやから、ペアレントさんが言ったはったように美術点が重視されるんやったら、ぶっちぎりやろ・・・」
「そうだよね、他はまあ普通かな・・・」

           スタート

 美山も自信があるようだった。ところが一つだけ問題が出てきた。湖が予想以上に浅く、筏に三人が乗ると発泡スチロールが湖底に着いてしまったのだ。三人はそんなトラブルを解決する間などあるはずもなく、スタートの合図がなった。どんなに竿を湖底に付刺し前に進もうとしても全く動く気配はなく、仕方なくキン肉マンを被った大学生が筏から降りて押し始めた。少し前に出すと浮いているようだったが、大学生が乗るとまた湖底に着いてしまうようだった。男二人が筏から降りたり、乗ったりを繰り返し前に進み、ようやく折り返し地点に着いたころには、大半の筏はゴールしていた。

            折り返し地点

 筏に三人も乗ったのが一番の敗因のようだった。他は一人か二人、優勝チームは一人乗りだった。


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2015.08.16 / Top↑
 折り返し地点からは美大生の美山を筏の上に乗せ、札幌の大学生と森山が筏から降り、筏を引っ張ってゴールまで戻って来た。

            ゴールへ
         
「お疲れさん」
「疲れたあ、前には進まへんし、水は冷たいし、寒いし。けど、おもろかったあ」
「なんだか知らないけど、すごく面白かった。三人で寒いなあと言いながら、みんなで笑っていたもの」
「こんなにも水深がないなんて、計算外でしたが。ほんま、おもろかったあ」
 札幌の大学生は突然、関西弁で喜びを表した。森山の影響だろうか。
 結果はもちろん最下位、あれだけ子供たちに人気があったのに美術点もゼロだった。ユースホステルチーム全員の力が急に抜けてしまった。
 入賞者の表彰式が行われていることなど気にせず、参加者全員で筏を持ちユースホステルに向かった。その誰の顔にも笑顔が広がっていた。
「けど、美術点がゼロって、どう言うことやねん」
 夏樹が言ったが笑顔だった。
「そうだよねえ、一番早かったチームなんか、丸太みたいな木に少しバイクのような絵を貼ってヘルメット被って手で漕いだだけだったよねえ」
 少しだけ作ることを手伝った男が笑いながら言った。
「そうよねえ、あれって筏なのかなあ」
 少しだけ作ることを手伝った女が笑いながら言った。
 たまたま泊まった宿の近くで行われたお祭りに、たまたま泊まり合わせた初対面の人たちと筏を作り、レースに参加した。それだけのことなのだけれど、とても面白く、楽しく、感動をすることができた。これが一期一会と言うことなのだろうか。
 ユースホステルでは手作りケーキと、参加賞として貰った焼酎で作った特製ジュース(?)で乾杯した。筏づくりの中心的なメンバー五人が一番の笑顔を見せていた。
 その日の夜はクッチャロ湖畔で花火が打ち上げられた。夏樹は今までに何度か打ち上げ花火を見てきたが、こんなに目の前で見たのは初めてだった。頭の真上に上がり、光とほぼ同時に音がなる。それも地響きのように体中に響いてくる花火に感動した。少しの時間だったが、ユースホステルの宿泊者たちと、おおいに楽しんだ。


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2015.08.30 / Top↑

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