石田の家の裏は以前、映画の撮影所だった。夏樹の家の近くにも撮影所があった。今は敷地が大幅に縮小されて団地や、学校になってしまったが、当事はテレビドラマなども撮影されていて、人気の時代劇もこの辺りの撮影所で撮られていた。
「要するに映画か、ドラマの撮影をしてはったんよ」
石田が話しを続けた。
「撮影のリハーサルをしてはったんやろな、本番では撮影用の鉄砲を持って本物みたいな音がするんやろけど、リハーサルやから手で鉄砲の格好だけして『パンパンパン』って言いながら出てきはたんやで」
「そうそう、『パンパンパン』って言いながら男の人が走って来たと思ったら、直ぐにニコニコと笑いながら布だけを巻いた女の人と二人で元のビルの中へ戻って行ったわ」
夏樹も負けずに話しはじめた。
「そしたら、そのジーパンを穿いた若い兄ちゃんが広げてた両手を下ろして『すんません、今のうちに通って下さい』って言うから、セットの店の間を通って家に帰った」
「その後の本番は見いひんかったんか」
「ああ、本番がいつ始まるかわからんさかいなあ」
「なんでや、撮影なんか見たことないで、見てみたかったなあ」
「飛沢は五年生の時にココへ引越して来たんやったかいなあ、それに撮影所のある所らへんとは反対の方に家があるから、撮影なんか見たことないか」
「ああ、見たことない」
「いま話した商店街や、近くのお寺や神社で、よく撮影をしてるところを見たことがあるから、あんまり珍しいことはないからなあ。それにリハーサルの後の本番て、なかなか始まらへんしなあ、石田は家から見えたんやから俺より珍しくはないやろ」
「いや、俺は撮影を見るのは好きやった。小学校の卒業文集に将来の夢は『映画監督』って書いたんや」
「ほんまかいなあ」
「いまは、それほどでもないけど、完全に諦めたわけやないで」
「知らんかったなあ」
「映画ダイジェストの番組や、毎日のようにテレビでやってる映画ばっかり見てるんや、いま流行のアイドルの出てくる番組なんか、弟が見てるのを見るともなく見てるぐらいで、ほとんど見ることないで」
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