良い戦争なんかない、どんな戦争も悪いことなのだけれど、この頃のアメリカ製の第二次世界大戦、特にドイツ軍相手の戦いは、悪のドイツ軍に対して、勧善懲悪のアメリカ軍を中心にした連合国軍といった表現だった。子供の頃の夏樹にとっては怪獣相手のウルトラマンのような存在で、娯楽スペクタクル映画として、楽しんでいた。
のちのベトナムでの戦いを映画化されたものは、まったく別のものになっていた、日本軍の怖さとは違った怖さがあったように思う。
「何があっても上官の言うことが絶対で、突撃の一声と共に多くの兵士が死んでいった日本軍に対して、上官に逆らうかのように意見をする兵士に、耳を傾け、上官が先頭に立ち、敵に向かうアメリカ軍。大きな違いを感じたなあ。そやからアメリカの戦争映画は、戦争というかたちのスペクタクルなんやで」
夏樹は一人よがりのように頷いた。
「俺もそう思うわ、あんな国と戦争なんかしたかて、勝てるわけないと思った」
石田がとてもまじめな顔つきで言った。
「けど、映画って面白そうやなあ、俺はあんまり見ることないさかいに、お前らの話がすごく興味津々やねん」
飛沢はいろんなことにいつも興味津々である。
「そやから、ここの川なんかカメラカットの仕方では時代劇にも、昭和初期の街角にも変身すると思わへんか」
石田が両手の親指と人差し指を直角に伸ばして四角を作り、カメラマンが良いアングルを探すような手の動きを見せた。


「なるほどな、切り取り方が違うと江戸時代にも、大正ロマンにもなるちゅうことか」
「飛沢、大正ロマンてなんや」
「夏樹君、もっちょと歴史の勉強をしたまえ」
「あっっ、すんません、ぱーでんねん」
「やっぱり映画はおもしろいで。撮影所の近くにいる人間としての別の楽しみ方が俺にはあるねん」
石田が得意げに話しはじめた。
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