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「俺はまだ十九才やし、人生がどうのこうのなんて言えるような歳やないけれど、北海道にいたその僅かな時間は、金田さんにとってはとても貴重な時間だったんだと思いますよ、これからの人生にとっての大きな、大切な時間になったんと、ちゃいますか」
 石田がいつもとは違う表情で、力説した。
「ありがとう、実は父親も同じようなことを大学に入ってから言ってくれたよ」
「なんか今日のおまえは、ごっつ格好ええやんか」
 隣にいた夏樹が、石田の肩を抱きかかえるように右手を回した。

「さっきはすんません、少し大きな声をだして」
 飛沢が申し訳ないと謝った。
「俺と石田は一応やけれど必死に受験に向けて頑張った。けど、結局のところ希望の大学には入ることが出来ずに、入れるところに行くことにしたんです。そやから今の話を聞くと、なんかとても複雑な想いで」
「いや、俺が正しいわけじゃないんだよ、だいたい高校三年の夏休みは受験勉強だろ、遊びに行っちゃいけないよ。生き方は人それぞれなのだから、俺みたいなのもいるってことさ」

 希望の大学だけを受験して、不合格となった金田は合格発表の次の日から、一年後の受験日を目指して勉強に打ち込んだ。そして、希望校だけに的を絞り、一年送れて希望の国立大学にみごと合格した。
 しかし、合格した次の日からさっそく旅に出て行ったのだと言う。入学の準備はすべて母親に任せて、北海道のあの牧場へ向かった。様々な思いを牧場の親父さんに聞いてほしかったのだという。帰って来たのは入学式の前日だった。

「そうすると、留年も旅をしていて単位を落としたんですか」
 夏樹が言った。
「その通り、旅好きは直らなかった。高校を卒業してからどこにも行かずに勉強をしたから、その反動なのか一年の夏休みに、また北海道に行ったんだよ、そして今度は別の牧場でアルバイトをしていたんだ、そのまま冬までいたのさ。一年の半分は北海道にいたことになるかな」
 金田は他人事のようにニコニコと笑いながら言った。そのときの彼の右手はボサボサ頭を何度もかき上げていた。白いものがポロポロと落ちてきていることなど、まったく気にもしていない様子だった。


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2009.04.08 / Top↑
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