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 十人部屋の宿泊客は、二、三人ずつのグループが多いのか、四つの塊に分かれて思い思いに会話を交わしていた。そして、消灯の時間になり、ざわざわっと散らばり二十分後には皆が布団に入り、入り口に一番近いところに陣取った丸刈りの高校生風の男が「消しますよ」と言って、部屋の灯りを消した。

 翌朝も良い天気となり、まぶしいほどの朝陽が十人部屋の入り口の反対側の大きな窓から差し込んできた。大勢が一つの部屋に寝ていると、起床時間よりも早い時間に起き出すものが、必ず一人はいる。その物音に別のものが眼を覚ます、またその物音で誰かが起きる、連鎖的にざわざわとおき始めるものだ。
 しかし、早く起きてしまう奴とは対照的に、廻りのほとんどが布団を離れて、部屋全体が賑やかになって来ても、一人や二人はいつまでも寝ている奴がいるものだ。今朝は金田と飛沢の二人だけが、いまだにねむっているようだ。

「飛沢、朝やで起きる時間やで」
 隣にいた石田が飛沢の体をゆすりながら言った。その声に金田もゆっくりと眼を覚ました。
「おう、おはよう」
 飛沢の目は片目しか開いていない。
「おはようございます」
 金田はそう言って顔を隠すように布団を被った。

 金田の今日の旅程は山陰本線の下りに乗って下関に向かうと言う。夏樹たち三人は萩市内を観光して浜田まで向かう。有名な観光地はないのだけれど、石田の親戚が住んでいるということで、寄ることにした。たまたまユースホステルもあるし、出雲までは少し距離がある、浜田がちょうどよい中継点なのだ。

「金田さん、四月になったらちゃんと大学に行ってくださいよ。もう一年、留年なんてことにならんように」
 荷物をまとめ、出発の準備を整えて、ユースホステルの玄関で飛沢が言った。
「そうだね、来年は卒業できるように学校へ行くよ。君たちも良い旅を続けてね、昨日は楽しい夜だったよ」
「いえいえこちらこそ面白かったです、おぉきにぃ、ありがとうございました」
 夏樹が言った。
「ほな、さいなら」
 金田が大きく手を振りながら駅に向かった。
「あれあれ、移ったんですか。また、どこかで会えるといいですね」
 夏樹たちも金田と反対方向へ笑顔で手を振りながら向かった。


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2009.04.10 / Top↑
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