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 彼女も夏樹に対する気持ちが、まだ、はっきりとしたものではないにしろ、中学一年生の岩淵なりの淡い恋心のようなものを、伝えようとした一言なのか、それとも、ただなんとなく、別のクラスになるということへの、別れの言葉だったのだろうか。いずれにせよ、純粋な中学一年生の男子として、急に岩淵という女子を意識するには、充分すぎるほどの一言だったのだ。
 今までは朝の登校時に偶然に一緒になっても、普通に「おはよう」と挨拶を交わせていたのに、あの一言が夏樹の思考回路を狂わせてしまったために、たどたどしくなり、逆に岩淵に不信感を与えるようなった。
 二年生に進級して別のクラスになり、会うことが少なくなった。部活動も違うために帰宅時間も違う。夏樹が岩淵を意識しすぎるあまり、いつの間にか「おはよう」「おう」だけのただの知り合いという関係になっていった。もちろん会話もなくなった。
 中川を含めた三人のなんとなく仲の良い関係はどこかえ行ってしまった。

 そんなたどたどしい関係が続いていたが、夏樹の岩淵への気持ちはどんどん大きくなり、はっきりとした恋心に変わっていった。
 でも、そんな気持ちを伝えることはおろか、廊下で偶然会っても、まともに顔を見て会話を交わすこともできず、岩淵は夏樹のことをかなり不信に思っていたのではないだろうか。

 そんな初恋のようなものは、二年生の三学期になり、もう直ぐ三年生になるという頃に呆気なく終演を迎えたのだった。夏樹と同じ二年生のある男子と岩淵が、校舎のはずれの人目の少ないところで、親しく並んで会話をしているのを見てしまったのだ。
 後日、岩淵と同じように小学校からの四年のあいだクラスメイトだった中川に、二人が付き合っていることを聞かされた。
 あの一言は夏樹のただの勘違いだったのか、それとも岩淵からの最大限の気持ちのあらわれだったのに、夏樹がその思いを受け止めて答えることができず、たどたどしい態度をするようになったことで岩淵の心も離れていったのか、いまとなっては確かめるすべはない。

 石田が突然に思い出した中学生の頃の話により蘇った、淡くせつない思春期の思い出を頭の中のスクリーンに映し出し、車窓の海を見るともなく夏樹は大きく溜息をついた。



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2009.05.20 / Top↑
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