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気動車


 広さが六畳ぐらいのホーム上の待合室に、建物の端から端まで、作り付けの木のイス(縁台のようなもの)があり、蛍光灯は一本しか点いていない。駅舎にも薄暗い蛍光灯が数本点いているが、今にも切れてしまいそうなのが二本点滅している。時々,烏のような鳴き声が「バカア」と聞こえてくる。

 九月末の山里の夕暮れは、少し肌寒く風が冷たい。待合室の木戸が長年の風雨に晒されて細く薄くなって、ガラスが枠からはずれてしまいそうなぐらいに、少しの風でガタガタと音をたてて揺れている。戸の揺れる音と時々聞こえてくる烏のような鳴き声以外には何も聞こえてこない。僕一人だけがそのイスに座り、次の列車が来るのを待っていた。

 突然ガラガラと木の戸が開いた。飛び上がるような驚きを、声を出さずに身体が感じた。身体の全体が鳥肌状態に陥ってしまった。
 なぜか、上半身が起立状態で、両方のこぶしを硬く強く握り締めて、それぞれひざの上にきちっと置いたまま。顔は、何も見えない窓の外の一点を見つめるように、真正面を向いて、目だけは入り口の方向へゆっくりと動いていった。

 横目つかいの視線に入ってきたのは、大きな荷物を担いで髭を伸ばし、薄汚れた服を着た大きな人が、入り口の木戸を前屈みになって入ってくるのが見えた。
 山からいま帰って来ました、といった風の大柄なその男の人は、木の戸を閉めながらチューリップハットを片手に持って頭から脱いだ。チューリップハットを被っている時はきづかなかったが、髪も不精に肩まで伸び放題だ。前髪も伸び放題でその隙間から顔がのぞいていた。黒ぶちのメガネをかけていた。
 ドキドキしながら声も出さず、座ったまま身体が動かない。目だけがその大きな身体の男の人をキョロキョロと見つめていた。



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2008.05.23 / Top↑
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