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 石田は一人旅に来ているかのように、夏樹と飛沢の方には顔を見せることなく、年上の美人さんとの会話を楽しんでいた。
「なんで石田があんな可愛い人と楽しそうに喋ってんのう」
 飛沢は悔しい気持ちを夏樹にぶちまけた。
 夏樹たちは二人の会話に入っていけず、悔しい思いと、長旅の疲れが体中に出てきたのか、車窓を楽しむこともなく、うたた寝をしてしまった。

 二人がうたた寝から目が覚めたのは、京都市内に入ってからだった。
「そろそろやなあ。飛沢、もうじき着くで」
 夏樹が見慣れた車窓ではあるが、夕暮れとなった風景が旅の終りを、いっそう寂しいものにしていた。
「帰ってきたかあ。あれ、雨が降ってんのとちゃうか」
 八日間の旅の途中には一回も降らなかったのに、まもなく終わろうと言う時に音もなく静かに、弱い雨が地面を濡らしていた。
 飛沢は夕暮れの見慣れた車窓に雨が降っていることを、通路を挟んでの隣に座っている石田に教えようと思ったその時、そのもう一人隣の年上の美人さんのことを思い出した。
「石田」
 右手側から左手側の石田に体を向けながら飛沢が石田を呼んだ。
「あれ、お前の隣にいた可愛い人はどないしたん」
「あの人は亀岡駅で降りはったで」
「何の話をしてたんや、随分と楽しそうやったけど」
「映画の話ばっかりしてた。あの人が好きな映画と、俺の好きなのとがだいたい一緒でな、特にマカロニウエスタンがお気に入りやそうや。ほんでな・・・」
 石田がそこまで言ったときに夏樹が石田の話しを止めた。
「京都駅に着いたで、降りるぞ」
 大きな荷物を担ぎ狭い通路を三人は出口に向かった。
「名前とか聞いたんか」
 石田の前を歩く飛沢が言った
「いいや、名前は聞かへんかったなあ、映画の話に夢中になってて、聞くのを忘れてたは」
「あほやなあ、なんで聞かへんねん」
 旅は道ずれ、いつかまたどこかで逢えるかも。

小説のような、旅のはじまり 六章の終り


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2009.08.10 / Top↑
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