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 佐藤と一緒に夏樹は係長たちのいる椅子席の方へ向かった。その輪の中にはコバヤシと女性の二人連れもいた。神奈川の会社に勤めるOLで、正月休みを利用して旅行をしているのだと言う。
「こんばんは、俺も仲間に入れてくださいよ、たのしそうやないですか」
「どうぞ、空いている所へお座りください」
 青学が言った。
「コバヤシさん聞きました、俺たちが恋人やと思われてたんやて」
「ええ、違うんですか。ものすごく仲よく話しをしていたから、てっきり。お似合いだしねえ」
 神奈川の背の大きい方のOL嬢が、背の低いOL嬢に同意を求めるように言った。
「そやから違うって」
 夏樹が少し強い調子で言った。
「あら、私では不満ですか」
 コバヤシが不服そうに言った。
「不満やなんて、俺にはもったいないぐらいや。そうやのうて、自分にはちゃんとした、エエ人がいたはるやないですか」
 夏樹がそこまで言うと、コバヤシは右手の人差し指を立てて口に当てた。
「しいぃ」
「別にかましませんやん、悪いことをしてるわけやないんやから」
「あのう、大体の話はわかりました。とりあえず、お二人は何の関係もないんですね」
 背の高い方のOL嬢が言った。
「はい」
 コバヤシと夏樹がほぼ同時に返事をした。
「ヒゲさんの話に少し分からないところがあるのですが」
 OL嬢が続けた。
「自分にはちゃんとした、エエ人がいたはるって言いませんでした」
「言いました」
「自分とは自分自身のことやから、ヒゲさんのことですよねえ」
「いいや。そうか関東の人には、これを説明しとかんと、ややこしいことになるんやったねえ。関西で言う自分は、お前とか君、あなたと言うことなんですよ。そやからさっきの自分はこちらのコバヤシさんのことです。そやからコバヤシさんにエエ人がいたはるっちゅう話です」
 背の高いOL嬢と他の六人は不思議そうな顔をした。





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2010.01.18 / Top↑
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