「蒸気を見に、梅小路にいかへんか」
「行こかあ」
梅小路とは京都にある、『梅小路蒸気機関車館』のことである。京都駅の西方にある機関区(蒸気機関車などを駐機させるところ)に動態保存(実際に動かせる状態で保存)静態保存(動かすことはできない)の蒸気機関車十数台を展示しているSLのテーマパークである。
今で言うところの鉄道オタク「鉄チャン」の聖地のようなところだ。
関西周辺では山陰本線が最後のSL走行区間であったと思う。(たぶん)それも夏樹たちが小学校六年生の時に廃止されてしまった。梅小路に行かないとSLを見ることはできなくなってしまった。(北海道など、一部にはまだ走っていた)
赤川と夏樹はオヤジのカメラを持ち出し、近隣の国鉄に乗り、日帰り圏へミニ旅行をたびたび行っていた。どちらかというと、電車などの新しいものにはあまり興味がなく、SLを筆頭に古いものを追いかけていた。『ローカル線日帰り旅』といったところだろうか。
小さな駅に降り立ち、駅周辺で思い思いの撮影ポイントを探し、一時間に数本しか来ない列車を待ち続け、鉄道雑誌に載っているようなショットを狙って、カメラを構える。相手は動くものだから、一回に切れるシャッターはせいぜい三度ぐらい。
一本の列車が行ってしまえば、静寂の時がくるのだが、突然、けたたましい音とともに貨物列車が通り過ぎて行く。貨物列車は時刻表に載っていないので、不意をつかれてしまい、シャッターチャンスを逃してしまう。
「くっそう、貨物まで載ってる時刻表って売ってへんかなあ」
『ローカル線日帰り旅』と平行してカメラを持ち出しよく行ったのが、廃止される市電の撮影だった。当時、市内を市電があちらこちらに走っていたが、モータリーゼイションの波には勝てず、他の都市同様に路面電車は邪魔者扱いされ、廃止への方向が決定付けられていた。
平成の世の中では、エコ交通として、もてはやされたに違いない。時すでに遅し、残しておけばよかったのに、と思う。
市内の各地を回り、さまざまな角度から市電をカメラに収めていた。
さながら『鉄道研究会(鉄研)』の活動である。このときは会員二人だけれど。
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