餘部の一つ手前の鎧駅はトンネルとトンネルの間にある、小さな漁村の駅で、目の前に漁港が広がる。この駅を出てからはのぼりが続き、列車の速度はあまりあがらない。四つ目のトンネルを抜けると、いきなり視界が開けて右手の眼下に日本海が広がり、鉄橋上を走行している。
鉄橋が終わるとすぐにホームが始まる、夏樹の親父が言っていたとおりに単線の線路の横にホームだけあり、五人も座ればいっぱいになるベンチに、屋根だけはついていた。
「これじゃあテントでもなかったら野宿はむりやなあ」
「山と、海、他にはほんまに何にもないなあ」
「まずは時刻表を見て、何時に何が来るか調べよか」
真夏の抜けるような空と、海の青が目に眩しい。
「なんか音せえへんか」
「上りの特急が来たで」
「カメラ、カメラ」
カメラを出す前に、この駅に止まらない特急『あさしお』がけたたましい音とともに風神のように通り過ぎていった。鉄橋にさしかかると、レールと車輪とのぶつかり合う金属音に鉄橋本体へ伝わった金属音も加わり、ますますけたたましく轟音となって村中に響き渡り、駅とは反対のトンネル側の山にこだました音までも響き渡った。
「残念、間に合わんかった」
「また、すぐに来る」
飛沢がにこっと笑顔で言った。
「あまいなあ」
夏樹と赤川が同時に口を開いた
「特急は一日に五往復ぐらい、鈍行は一時間に二往復かな」
「ここは京都みたいに、いっつも電車や列車が走るところとは違うのや」
本線とは言っても、単線の非電化路線。典型的なローカル線である。
「そろそろ上りの鈍行が来るで」
「三脚にカメラをセットして、どこから撮ろかな」
上り列車はまず、この駅に止まり、乗降を終えると鉄橋へと入っていく。三人の人が降りたが、乗る人はいなかった。
ランキングに参加しています
下をクリックしてください。ご協力お願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓




