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 夏樹はよく冷えた缶ビールを二本持って戻ってきた。一本を野田に渡し、もう一本の栓を抜いて軽く上に上げた。
「カンパイ」
 小さな声で夏樹が言った。乾杯って昼日なかからビールの栓を抜き、二人で何に乾杯をするというのか。野田も少し困った顔で「カンパイ。いただきます」と小声で言って缶を少し上に上げた。
 野田は夏樹より二歳年下だが、美術系の短大を卒業してきたので、会社では四年後輩になる。さすがに絵を描かせると上手だった。
「野田は、何でこの会社に入ってんや」
「ああ、芸術では飯が食えへんからねえ、それに美大って言うたかて、短大やからたいしたことはないからな」
 右手に持った缶のビールを大きく飲み込んだ。
「学校に求人は少なかったけど、美大やから看板屋とか印刷屋とかが、わりと多かったんですよ、でもそっちの方面はあんまり興味がなかったしなあ。京都やから染工場も結構ありましたよ」
「彫刻が専門やったんやろ。原木をノミと金槌で削っていくんやろ」
「彫刻科って言うてもいろいろあるんですよ。俺は版画をやってました。木版です」
「ほな、彫刻刀を使って彫っていって、専用のインクを付けて紙に写していくやつやな。小学校の美術の時間とかにやるのと同じようなもんか」
「まあ基本は一緒やね。もっと大きな板に彫って、それを何枚も並べて、もっと大きな紙に摺ることもあるんですよ。浮世絵も版画ですよ、あれは色別に色の種類分の版を彫って、多色摺りの絵が仕上がるんです」
「それって型紙を使って、きものの模様を付けていくのと同じやなあ」
「そうなんですよ、初めはあんまり興味がなかったんやけど、たまたま会社見学に来た時にそれを見て、面白そうやなあと思って直ぐに履歴書を送ったんですよ」






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2010.10.22 / Top↑
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