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「でっかいどう、北海道ですね」
逢坂が少しリズムをつけて、大きな声で言った。
「北海道かいいですねえ、おれもいつかはきっと行きたいです。緩やかな丘陵地帯に高い山はどこにも見えない、見えるのは地平線とその先まで続く牧草の畑。まっすぐに伸びた道路、そして線路」
 テレビのドラマで見た北海道の景色が、夏樹の頭の記憶の部分に、強烈に焼付けられている。『北海道』と聞くとテレビドラマで見た広大な風景が甦り、いつかは自分の目で見てみたいと思うのだった。

「私は北海道に七ヶ月居たんだ」
田代先生が突然、話しだした。
「もちろん二十年以上も前のことやけどね」
 田代先生の専門は数学。大学時代は数字との格闘を毎日のように続けていた。やり方を間違わなければ、どのような問題も必ず答えが出てくる。要するにそのやり方をいかに導くか、そのための計算と計算をするための公式をどこから、どのように引っ張りだしてくるかなのだと考えていた。昼夜を問わずに本とノートと計算機だけを見つめていた。

「あいつの頭はコンピューターみたいやなあ、と冷たい目線を感じていたよ」
「頭がコンピューターみたいやなあって、褒められてんのと、ちゃうんですか」
逢坂が不思議そうな顔をした。
「決して良い意味ではないんや、ものごとの全てにおいて数学的に、正しいか間違っているかを瞬時に言ってしまうところがあってなあ」
 田代先生はいつもの授業のときとは違う人のように、柔らかい口調で自分自身のことを話しはじめた。

「仲間数人で恋愛映画を見に行った時のことなんやけどな、映画を見終わって外へ出てきた時には、一緒に行った三人の女の子がみんな泣いてたんや」
「恋人が最後には病気で死んでしまうような、哀しい物語なんですね」
角刈りのタカさんが小声で言った。
「そうなんや。そこで私は感情など全くない人間のように、あの場面はおかしい、間違っているとか、あの台詞はこのように言うのが正しいとか言うてしまったんや」
「たしかに、恋愛映画を数学的に分析してしまうと、間違っていることが多すぎる。でも、それを見て哀しくて涙を流している女性の前で、分析結果を言ってしまえば、みんなが興ざめしてしまい、嫌がられるでしょうね」
髪の一番長い大学生が、自分も同じようなことを言って、彼女にふられたことを付け加えて話した。


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2008.08.11 / Top↑
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