上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑






 田代先生はどんな数字も出来るだけ見ないように努めていた。乗る列車も何時に出発して、何時に到着するのか時間を見ないで、行き先ばかりを見ていたようだ。それを見てしますと、出発まであと何分とか、目的地までは何時間何分で着くとか、すぐに計算してしまう。そんな自分が、今はいやだったからだ。
 そのために列車に乗り遅れることもしばしばで、半日でいけるところも、一日かかったこともあった。腕時計も数字の書いていないもので、十二分割された線だけが時間を告げるものだった。

「函館から札幌行きの列車に乗り、列車の中で地図を広げて、いま自分はどこに居るのかを確認しながら、窓の外の景色を見ていた。函館から一時間ぐらいしてからかなあ、右手のすぐに海が見えて、ずっとその海沿いを走っていた。それだけで心が落ち着いている自分に気がついた」

 とりあえず札幌に降り立ち時計台を見てこの日は札幌に泊まった。次の日は松前の駅員さんに聞いた日高地方を目指して列車に乗った。札幌の駅員さんに行き方を聞いて、間違わずに日高方面へ向かった。

「苫小牧を過ぎたころだったかな、向かいの席に座った人がいたんや。ちょうど金子君のような風貌で、もっとむさ苦しかったかな」
「金子もけっこう、むさ苦しいですよ」
「何だって、トシ」
 相変わらず金子の声は超低音だった。

「歳はおれと同じぐらいかな、座るとすぐに『こんにちは、どちらかいらしたんですか』と話しかけてきはってな、全く面識のない人から、いきなりやったからビックリして、なんて言えばええのか分らなくてな、その人を見ながら何もしゃべれんかった、たぶん変な顔やったと思う」

 向かいの席に座った人は、自分がどこから来て、どこへ行くのかをニコニコと穏やかな口調で話した。田代先生も彼の人柄にすぐに打ち解けていった。
 彼は大学四年生だが、旅ばかりをしていて大学にいかないことが多く、留年が決まったことを、まるで他人事のように田代先生に教えた。
 田代先生も仲間と映画に行って、変なことを行ったために彼女にふられたこと、大学は卒業したけれど教員採用試験に失敗したことなどを話した。



  ランキングに参加しています
  下をポチッとクリックしてください。ご協力お願いします。
       ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

にほんブログ村 旅行ブログへ にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
スポンサーサイト
2008.09.03 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://suzukaze930.blog19.fc2.com/tb.php/58-7711e1b3

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。