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「放浪の旅は終わったんですね」
 夏樹が寂しそうに先生の顔を見た。
「けど、こうして旅は続けてる、ユースホステル部の顧問として、一人の旅人としてな。どこかの高校にユースホステル部があるって聞いたから、赴任先の高校ですぐに部を作って、生徒たちと各地をを廻ってる、そんなに遠くへは行かれへんけどな。これでおれの北海道の話はおしまいや、おれ一人で喋ってもうたがな、すまん」

「いえいえ、たいへん楽しく聞かせていただきました、今の先生を見ていると、話しの初めの頃のような、数学バカみたいなことが嘘のようです」
 トシが笑顔で言った。
「もちろん、今でも数学の教師やし、地理は苦手やけどな、旅をして人間的に丸くなったような気がするねん」

「そしたら次は、先生の恋の話を聞かせてもらいまひょかあ」
 岡村がおどけて言った。
「お前、そういうことは、よう覚えてんにゃな、勉強は全然あかんのに」
 またまた、安達が岡村を羽交い絞めにした。

「そしたらここまで話したんやから、ついでに少しのろけよか。採用試験が終わってひと息の頃かな、大学の頃に皆で見に行った恋愛ドラマの映画を上映している映画館を見つけてな、一人で見たんや。前とは違っておれは泣いた、あの時、彼女がおれの言ったことで憤慨した訳がよく分ったような気がした。そして、目を赤く腫らしていたから、少しうつむき加減で歩いて外へ出たら、突然、人にぶつかった、向こうもうつむきながら歩いていた、目を赤く腫らしていた。おれがふられた彼女やったんや、同じ映画を見ていて、出てきたところで偶然ぶつかったんや」

「エッ、もしかして」
「もしかしてって、もしかして」
「先生って結婚したはりましたよね、それも大学を卒業して間もないころに」
「そうなんや、今の奥さんなんや」
 田代先生は顔を真っ赤にしながら、頭をボリボリと掻いた。
 十人全員が大きな拍手を先生に送った。エリがひときわ大きかったようだ。


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2008.09.19 / Top↑
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