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 腕にはめた時計を見ると午前二時を少し過ぎていた。相変わらず窓の外は何も見えない、真っ暗闇だ。夏樹と安達が座っている席の窓からは、駅の名前を確認できるものは何も見えない。まもなく、何の合図も無く『ガッタンゴッゴン』と大きく揺れるけれど、静かに発車した。
 大きく揺れて発車した列車だったが、その後は静かにゆっくりと、真っ暗なホームを進んで行くのが、わずかに確認できた。その時、不意に目の前に駅名表示板が左から右へ流れた。一瞬だったが『玄武洞』と書かれていたのが読み取れた。

 円山川沿いのこの駅の対岸に、天然記念物の洞窟がある。日中であれば、車窓からでも六角形の岩肌が見えるはずである。今はその駅舎の存在を確認するのも間々ならないほどに、あたりは真っ暗である。月も星も見えない曇り空のようだ。

「なあ、夏樹、眠たいかあ」
「今はあんまり眠とうはないで」
「列車が走り出したら、少しぐらい話しても回りに聞こえにくいやろうから、俺の話を聞いてくれるか」
 そう言うとジャンパーの下に着ているウエスタンシャツの胸ポケットから、タバコを取り出した。
「自分ってタバコを吸うのんか」
「うん、少しな」

 安達は銜えたタバコに火を付けて、吸い込んだ煙を大きく天井に向けて吐き出した。それを三回繰り返して、窓のすぐ下に備えられている灰皿で火を消して、その中に投げ捨てた。
「よう分からんけど、まだまだ吸えるだけの長さが残ってんのとちゃうの」
「いや、これだけでええねん。気持ちが落ち着いたわ」

 夏樹が親しくしている友達の中に、タバコを吸うやつは、今までいなかった。中学のときも、今も。いわゆる不良グループと言われるようなれ連中が吸っているのは、知っていたし、見たこともあった。そんな連中とは一線を画したところに居ると思っていたその安達が、いきなり目の前でタバコを吸出したから、少し、ほんの少し別の世界の人間だったのかと驚いた。
「夏樹は吸わへんか、俺は中二のときから吸ってる。意外やったみたいな顔してるなあ」
「う、うん。ちょっと意外やった。勉強もできる方やし、あのグループたちとはまったく関係の無い人間やと思ってた」
 あのグループとは夏樹たちが通っている高校で、有名な悪(わる)グループたちで、そのボス的存在が夏樹のクラスにいた。


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2008.11.04 / Top↑
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