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まいどぉ おぉきにぃ、 
「ゆきたいーーー」
 演奏も終わった。しかし参加者の半分ぐらいの歌がまだ終わっていなかった。
「・・・翼を広げ、飛んで行きたいよーー、悲しみのない自由な空へ翼はためかせーーー。この大空に翼を広げ、飛んで行きたいよーー、悲しみのない自由な空へ翼はためかせーーー」
 演奏が終わっているからアカペラ状態で歌われている。隣同士で肩を組み、右に左に大きく揺れながら歌が続き、すこしずつ歌う声が増えてきた。
「この大空に翼を広げ、飛んで行きたいよーー、悲しみのない自由な空へ翼はためかせーーー」
 いつの間にか参加者全員が歌っていた。アカペラ状態が十回も続いただろうか、バンドの演奏がキーボード、ベース、ギターの順に再開され、大合唱の声の音量もさらに大きくなった。
「この大空に翼を広げ、飛んで行きたいよーー、悲しみのない自由な空へ翼はためかせーーーーー」
「今度が本当にラストーー」
 大合唱が十回ほど続いただろうか、バンドリーダーとは違う大きな声が言った。
「ゆきたいーーー」
 演奏も終わった。
「・・・翼を広げ、飛んで行きたいよーー」
 十数人の声が聞こえてきたが、さすがにその声に賛同して歌い始める者はいなかった。十数人の声も尻すぼみとなり、聞こえなくなってしまった。

 ホールの時計は四時を少し過ぎていた。参加者全員が部屋へ戻り、防寒着を着て玄関に向かった。初日の出を見に行くのだ。
 東海地方というのは冬でも比較的温暖なところではあるが、今は元旦の午前四時、あたりはまだ真っ暗だ。顔に当たる風は冷たく、防寒着なしでは歩くことはできない。
 ユースホステルからぞろぞろと大勢の人が、少し遠慮した小さめの声で、にこにこ、わいわいと雑談しながら海岸へ向かった。十五分ほど歩くと海岸に着いた。ほんの少しだけ明るくなり、僅かに水平線を確認することができた。



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2009.11.16 Mon l 旅(小説のような)七章 l COM(1) TB(0) l top ▲
 キーボードだけで演奏されている『翼を下さい』のイントロをバックにバンドのリーダーがひとことだけ言った。
「いつも最後はこの曲ですよね」
 再び初めからイントロの演奏が、さきほどよりは大きな音で始まった。さらにベースの音も加わった。この選曲に誰も反対することなく、大合唱がゆっくりとはじまった。半数以上の参加者が二回目、三回目、またはそれ以上に毎年ここで新年を迎える常連客たちだ、いつも最後にこの曲で終わることを知っているし、コンサートの途中では歌うことのない一曲なのだ。これ以外の曲をリクエストしたのは今回が初めての参加者だということになる。中学校の合唱コンクールなどでも歌われる名曲だ、最後を飾るにはこの曲が最適のように思えてきた。

 一番の歌詞を歌い終わり、二番に入りいよいよサビのところにはいってきた。
「この大空に翼を広げ、飛んで行きたいよ、悲しみのない自由な空へ翼はためかせーーー」
 オリジナルのレコードなどを聞くと、この部分の歌詞が二回繰り返されて、三回目が始まるとフェード、アウトしていくようだ。また、赤い鳥解散コンサートのライブの模様をエアチェックしたものを聞くと、二回繰り返した後に「ゆきたいーー」で終わっている。

(余談になるが、今回のブログを書くにあたり、上記二つの音源を聞き比べ、浜名湖ニュー、イヤー、イヴ、コンサートの歌詞本とCDの歌詞本を見たのだが、ライブの音源だけが二番の詩が少し違うことに気がついた。二番の始まりが以下のような詩が加わっていた。
「今、富とか名誉ならば、いらないけれど、翼がほしい」
 何十年も前からこの曲を知っているが、今回初めてこのようなことに気がついた。全くの余談でした)

 しかし、今日のニュー、イヤー、イヴ、コンサートではこの部分を十回は繰り返しただろうか、バンドの演奏も止まらないから、みんなが歌い続ける。
「じゃあ、ラストー」
 バンドのリーダーが大きな声で言った。


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2009.11.13 Fri l 旅(小説のような)七章 l COM(0) TB(0) l top ▲
「カスやのうて『揚げ玉』って言うんや。カスやと思てた」
「じゃあ、京都の『たぬきうどん』ってどんなものなの」
 今度は岡本が言った。
「きつねうどんって分かりますか」
「油揚げが入っているうどんのことでしょ」
 ケイコも興味津々のようだ。
「きつねは関東でも同じみたいやなあ。あれは三角形の大きな油揚げが入ってるけど、その油揚げを細かく切ったものをおうどんに入れて、めんつゆと片栗粉で作ったアンを掛けて、下ろし生姜を入れて食べるのが『たぬき』。ちなみにうどんは名前に付けへんかな」
 夏樹を除いた十人が驚きの表情で、それぞれの顔を見合わせた。
「きつねうどんのあん掛けなんだ。話しを聞いただけですごくおいしそうやね」
 ケイコが言った。
「寒い冬に食べれば、体が暖まって、ほんまに美味しいでえ」
「所変われば、食べ物も様々、面白いねえ、楽しいねえ」
 智史が言った。
「そろそろ、おしるこ、京都で言うところのぜんざいの時間のようです。食堂に行きましょうか」
 タナカがみんなを食堂に誘った。

 おしるこを食べ終わり、初日の出までにはもう少し時間があるので、コンサートの再開となった。歌詞本には百の曲があるが、まだ半分も歌っていないようだ。大晦日(昨日だけど)と同じようにリクエストを聞いて、みんなで歌った。参加者のほとんどが昨日から全く睡眠をとらずに歌える元気はどこから来るのか。みんな、若かったのだろう。
 コンサートが再開して一時間ほど過ぎただろうか、バンドのリーダーが次の曲が最後になるといった。初日の出が登る時間が近づいてきたようだ。
 最後にふさわしい曲をと何人かの声があがったが、そのリクエストには全く耳を傾けず、伴奏が始まった。『翼を下さい』のイントロがキーボードだけで演奏された。


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2009.11.11 Wed l 旅(小説のような)七章 l COM(0) TB(0) l top ▲