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まいどぉ おぉきにぃ、 
 二時半ごろだったろうか、カードゲームをしながら時折、欠伸が出てくるようになった。眠気が襲ってくるには最適な時間帯だ。
「夏樹君、眠いんだったら部屋で寝ていてもいいんだよ」
 トオルが含み笑いをして言った。
「なんですかその薄笑いは、なんか俺を寝かしてといて、その隙に見たいな笑いやねえ」
「君の分のおしるこを、いただこうとしているんだよ」
 智史が言った。トオルは酒が飲めない代わりに、甘いものには目がないのだ。
「眠とうなんかない、俺かて、おしるこを食べたいから。寝えへんでえ。ところでおしるこってなんやあ」
「おしるこを知らないの、小豆を甘く煮た汁にもちを入れたものだけど」
 タナカが驚いて言った。
「何や、ぜんざいのことやんか」
「いや、ぜんざいとは違うよ。ぜんざいは餅にやわらかい餡子を乗せて食べるんだよ」
 また、タナカが驚いた表情で言った。
「それは餡餅とちゃうの、小豆を煮た汁の中に粒の小豆があって、餅が入っているのが、ぜんざいやで」
「面白いね、同じ食べ物でも、土地によって名前が違うんだね」
 ケイコが言った。
「そうなんです、ケイコさん。カップに入った『たぬきうどん』が発売された時は、ほんまにびっくりしたは」
「お湯を入れて、三分待って食べる、あのたぬきうどんの何がそんなにびっくりしたんや」
 トオルが夏樹の言い方をまねて言った。
「だって、うどんと一緒に入れるのは『天カス』やなんて、カスを入れてどないすんねん。何でこれが『たぬきうどん』やねん、たぬきだけに騙されたと思った。だいたい『たぬきうどん』が三分待って出来ること自体がおかしいと、思ってたからね」
 夏樹を除いた十人が、夏樹の話に驚いていた。
「あれが紛れもない『たぬきうどん』だよ。強いて付け加えて言わせてもらえば、あのてんぷらの玉は『たぬきうどん』を作るためにわざわざ作るのだから『天カス』じゃなくて『揚げ玉』って言うのです」
 タナカが力説した。



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2009.11.09 Mon l 旅(小説のような)七章 l COM(0) TB(0) l top ▲
 参加者全員が、いや宿泊者全員が新年を迎えてからではあるが、年越しそばを食べた。夏樹やトオルたちの周りにいるほとんどの人たちは、今日が初対面なのに、いつの間にか旧知の友のように会話が交わされるようになっている。
 そんな人たちの中から一人の男が、誰かに問いかけるというわけではなく、話し始めた。
「明日の朝は天気がいいのかな、初日の出が綺麗に水平線から出てくれるといいね」
「明日は二日だよ、今日の天気じゃないの」
「そうだよ、もう年が明けたんだから、今日の朝だろ」
 和やかな笑いが夏樹たちの周りで湧き上がった。
「あれ、トオルは」
「智史さん、あそこ、またマッチ箱を出したはるは、凝りひんなあトオルさんも。分からんように後ろに廻って、こっそりと種明かしをしてこようか」
 夏樹たちとは別のグループにいるトオルを指差して言った。
「ほっとけよ、それよりこっちの女性たちと一緒にトランプでもしようぜ」

 タナカと岡本、その友達二人、智史とケイコ、そしてニュー、イヤー、イヴ、コンサートの時に隣にいた三人組みの女性も含めて、夏樹はトランプゲームを始めた。ここでもトランプといえば大貧民ゲームだった。それぞれにルールが少しずつ違うのだけれど、今回はケイコの意見を取り入れて、ジョーカーは入れずに「2」が一番強いカードと言うことで進めた。彼女が今回のメンバーの中で最年長と言うわけではないのだが、ケイコが自らのルールを説明すると、自分たちのやり方と少し違うけれど、今日はケイコのルールでやろうと、なぜか同調するのだった。
「十人もいると一人分のカードが五,六枚しかないんやなあ。はじめの配ったカードで勝つか負けるか決まってしうやんか。「2」が二枚も配られたけど、この二枚とも大富豪に渡さなあかんのやろ、貧民はいつまでたっても貧民やなあ、まるでこの世の縮図みたいやなあ」
 夏樹は大貧民を五回続けている。ついついぼやいてしまったようだ。
「ごちゃごちゃ言ってないで、早くその「2」を二枚、私によこしなはれ」
「ケイコさんまで変な関西弁を使わんといて下さいよ」




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2009.11.04 Wed l 旅(小説のような)七章 l COM(2) TB(0) l top ▲
 誰一人として部屋に戻った人はいないようだ、次から次へとリクエストの声が続き、大合唱が終わりそうになかった。始まってから何曲目だろうか、バンドの人たちがリクエストを受けたのだけれど、演奏が始まらなかった。突然ラジオかテレビのアナウンサーのような声が聞こえてきた。
「ゴーーン。今、新しい年を迎えました」
「ハッピー、ニュー、イヤー」
 バンドのリーダーがマイクを通じて大きな声で言った。その時はじめて新年を迎えたことに気が付いた。その言葉とほぼ同時にあらかじめ渡されていたクラッカーのヒモを参加者が次々と引いた。
「パン、パン、パンパン」
「おめでとう」
「あけまして、おめでとう」
「ハッピー、ニュー、イヤー」
 あちらこちらから新年を祝う言葉が飛び交った。

「じゃ、ひとまず次の曲で一旦、休憩に入ります」
 バンドのリーダーが言った。年が明ける前の最後のリクエストをみんなで歌い、休憩に入り、年が明けたけれど年越しそばをいただいた。
「みんなパワフルやなあ、誰も部屋に戻って寝てる人はいてへんみたいやなあ」
「夏樹君、だからさっき部屋で言っただろう、・・・」
「はあ、何を喋ってのんかよう分からんのやけど」
 トオルが口いっぱいにそばを頬張りながら話した。何を喋ったのか良く分からず、夏樹はトオルに何回も聞き直した。
「だから、寝床の準備なんかしなくて言いよって言っただろう」
「はあ、なんですか」
 トオルの口のなかにはもう、そばは入っていなかったが、夏樹が態とらしく聞き直した。
「てめえ、この野郎、何言うてまんねん」
 またトオルが夏樹を羽交い絞めにした。




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2009.11.02 Mon l 旅(小説のような)七章 l COM(0) TB(0) l top ▲